宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2021.07.13

『少年の君』── 事件的傑作、優等生とストリートチルドレンのボーイミーツガール|加藤るみ

今朝のメルマガは、加藤るみさんの「映画館(シアター)の女神 3rd Stage」、第18回をお届けします。
今回ご紹介するのは中国映画『少年の君』。受験戦争やいじめ、ストリートチルドレンなど現代の社会問題に切り込みながら、高校生男女のボーイミーツガールが描かれます。
すでに「2021年No.1」と言えるほど本作にハマってしまったというるみさんに、その魅力をたっぷりと語っていただきました。

加藤るみの映画館(シアター)の女神 3rd Stage
第18回 『少年の君』── 事件的傑作、優等生とストリートチルドレンのボーイミーツガール

おはようございます。加藤るみです。

私はレモンパイが好きです。

上にはふわふわのメレンゲが乗っていて、下にはレモン風味のカスタードがぎっしり敷かれている二層のあのケーキは、私が産まれる前からやっている地元の小さな喫茶店に名物的な感じで置かれていて、小さい頃からよく食べていました。

この前岐阜に帰ったときに、よく行っていたその喫茶店で母が買ってきてくれたみたいで、久しぶりにそのレモンパイと再会することができました。

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小さい頃は、おばあちゃんや母とよく行っていた喫茶店だったけど、大きくなればなるほど地元の店に行くことが減って、あまり行かなくなったんですね。
私自身が岐阜から名古屋〜東京〜大阪と離れていったという理由もあるけれど、ホントに町の人しか来ないような喫茶店だからこそ、ちゃんとしてなきゃいけないみたいな小っ恥ずかしさがあって、地元に帰ってもほとんど出歩けなくて。それ以前に、お店自体が営業しているかどうかもわからないくらいの静けさで、「もう閉めちゃったのかな」とも思っていたので、おそらく15年はそのレモンパイの味を忘れていたと思います。
母がたまたま、「あそこのレモンパイ買ってきたわよ」と、お店の名前を聞いたときは、強烈な懐かしさに加えて、埃をかぶっていた宝物を見つけた時のような嬉しさもあり、なんだかじーんとしてしまいました。

どうやらそのお店はまだやっているみたいで、昔みたいにショーケースにケーキは並んでいないけど、注文したら1ホールから作ってくれるとのこと。
子供の頃だったら、マリオがスーパーキノコを手に入れた時のように興奮が止まらず完全無敵状態になってしまうであろう、レモンパイの1ホール食い。
母と姉と私で、それも深夜に、むしゃむしゃ食べるレモンパイの味は、とってもとても美味しくて。
子供の頃のように、おばあちゃんと母とあの喫茶店に行くことはもう二度とないんだろうなあと思うと、なんともいえない気持ちで胸がいっぱいになり、涙がこぼれそうでした。
さすがに泣いてる姿を見られるのは、恥ずかしいし病んでるのかと思われそうだからぐっと堪えましたが……。
涙を堪える力がついたあたり、私も大人になったなと思いました。

ちなみに、そのレモンパイを超えるレモンパイには未だ出会えていないですが、京都にあるイノダコーヒーのレモンパイもお気に入りです。
京都へ行ったら、レモンパイ目当てに必ず行きます。

さて。

今日紹介するのは、中国映画『少年の君』です。

この作品は、気が早いですが2021年No.1といってもいいほどでした。
ちょっとこれは事件レベルの傑作で、最近観たなかで群を抜いて良かったです……。
心から観てほしいと思える、中国映画の力強さを見せつけられた一本でした。

この作品、中国では250億円近い興行収入を叩き出す大ヒットをおさめ、青春映画のジャンルとしてみれば歴代1位の記録を樹立したそうです。
しかも、ほとんど宣伝が行われないまま公開されたのにも関わらず。
第93回アカデミー賞では、国際長編映画賞にノミネートされ、世界的にも称賛されています。
ちなみに本作について、『ベイビー・ドライバー』(’17)など、ヒットメーカーであるエドガー・ライト監督に「ノミネートが心から嬉しい」と言わしめたそうです。
(エドガー・ライト監督は『カメラを止めるな!』(’17)公開時にTwitterで褒めていたり、10代の時に『HANABI』(’97)や『ソナチネ』(’93)、『その男、狂暴につき』(’89)など北野武の作品を観ていたとインタビューで語っていたりとアジア映画のチェックがぬかりない……。)

進学校に通う成績優秀な高校3年生のチェン・ニェン。
全国統一大学入試(=高考)を控え殺伐とする校内で、ひたすら参考書に向かい息を潜め卒業までの日々をやり過ごしていた。
そんな中、同級生の女子生徒がクラスメイトのいじめを苦に、校舎から飛び降り自らの命を絶ってしまう。
そのことをきっかけに、次のいじめの矛先は、チェン・ニェンへと向かうことに。
同級生たちの悪意が日増しに激しくなる中、下校途中の彼女は集団暴行を受けている少年を目撃し、とっさの判断で少年シャオベイを窮地から救う。
辛く孤独な日々を送る優等生の少女と、ストリートに生きるしかなかった不良少年。
孤独な二人はいつしか互いに引き合ってゆくのだが……。

もう、心痛が止まらない……。

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