『ラブ・ハード』──マッチングアプリと偽装の自分|加藤るみ | PLANETS/第二次惑星開発委員会

宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2021.12.08

『ラブ・ハード』──マッチングアプリと偽装の自分|加藤るみ

今朝のメルマガは、加藤るみさんの「映画館(シアター)の女神 3rd Stage」、第23回をお届けします。
今回ご紹介するのは『ラブ・ハード』です。マッチングアプリから物語が始まる現代的なラブストーリー。友人から恋愛相談を受けているというるみさんが、王道のラブコメを観て思うことは……?

加藤るみの映画館(シアター)の女神 3rd Stage
第23回 『ラブ・ハード』──マッチングアプリと偽装の自分

おはようございます、加藤るみです。

現在公開中のMCU最新作『エターナルズ』が大好きすぎます……。
どうしたら良いんでしょうか、この想い……。

正直、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(’19)を観終えてから、ファンとして燃え尽き症候群のような……もうこれ以上の興奮と感動を味わうことはないだろうと思っていたんです。
(おそらく、推しの卒業を見送った感覚と似ていると思う。)

フェーズ4が始まり、『ワンダヴィジョン』(’21)などドラマからの流れで、映画『ブラック・ウィドウ』(’21)と『シャン・チー』(’21)が公開されて、『ブラック・ウィドウ』に関しては、MCUのなかでかなり上位に食い込むほどお気に入りで、すごく良かったんですけど……、良かったんですけど、やはりアレ(『アベンジャーズ/エンドゲーム』)をくらったあとでは、心をざわつかせてくれる何かが足りない……。と、感じていたんですね。

ですが……、来てしまいました。『エターナルズ』。
めちゃくちゃに、めちゃくちゃに好きだ……。

いきなり新しい登場人物が10人も追加されるのは多いと感じたものの、キャラクターのそれぞれの特徴や精神面を細かく描いていることに感動しました。
観終わったあと、推しが選べない状態。
エターナルズ、みんな愛しくてしょうがない(笑)。
でも一番を選ぶなら、わたしはマインドを操るドルイグ(バリー・コーガン)が一番好きでした。
ミステリアスで少し影がある男に惹かれるパターンは、小さい頃ベジータを好きになった時から変わっていないんだろうなと(女は皆、なんだかんだベジータが好き。私調べ。異論は認めない)。
画も美しく、さすがのクロエ・ジャオ。
『ノマドランド』(’20)で感じた、登場人物の息遣いや鼓動が伝わってくる感覚がここでも。
自然の雄大さや、地球の息吹を感じさせる優美な画には、包み込むような魅力があります。

『エターナルズ』が現れたことによって、これからのMCUに対する期待値が爆上がりしました。
『アベンジャーズ』とはまた違った、”チーム”の素晴らしさを教えてくれた『エターナルズ』。
大好きです。

さて、もうすぐクリスマス……ですね。

最近は、知り合いの40代バツイチ男性の恋愛相談を受けています。
今までの失敗の経験から、恋をすることに臆病になっているらしいです。
でも、やっぱり恋がしたいみたいでどうにか頑張っているようで、話を聞いていると、3日連続で『エターナル・サンシャイン』(’04)を観ていたりとか(もはや、ジム・キャリーになれるのでは?)、毎晩酒を飲まないとやってらんないとか。
大人になればなるほどいろいろこじらせてしまって、まさに沼から抜け出せない状態。結構しんどいです(笑)。
これは、”女は上書き保存、男はフォルダ保存”という言葉があるように、女性と男性の切り替えのスピードの違いかもしれませんが、シンプルに過去の恋愛をダラダラ引きずって、思い出しても、何も良いことなくないですか? って、思います。
わたしは最近、2回目の『花束みたいな恋をした』(’21)を観て目が覚めたんですよ。
「いや、花束にするつもりはない」と。
花束じゃなく、仏花でいいんですよ。
成仏させなくちゃ、次に進めない。
たぶん、『花束みたいな恋をした』を観て過去にうっとり浸れるのは、次に進んだヤツのみなんですよ。
どうやら、わたしも最初観たときは菅田将暉さんのかっこよさに脳がやられていたようです。
いま、次に進めない恋に迷える大人たちへ。
「つべこべ言わず、ラブコメを観なさい!」と、言いたいです。
ただ、チョイスを間違ってはいけない(例:『花束みたいな恋をした』『エターナル・サンシャイン』)。
陰気臭く2時間うだうだと酒を飲み感傷的になるくらいなら、一本ハッピーで上質なラブコメを観なさい。前を向きなさい。

今回は、そんな迷える大人がラフに観れる、恋愛の”道標”となる作品を紹介したいと思います。

どうか、寂しいクリスマスになりませんように……。

今回紹介するのは、Netflixオリジナル作品の『ラブ・ハード』です。

この映画、ナメてはいけません。

私もポスタービジュアルからして、箸休め程度の軽ーい気持ちで観るかーと思って観たんですよ。
なんなの、すっごくほっこり、ハッピーなラブコメじゃない。
観終わったあとの気分が良い。

往年の王道ラブコメストーリーを今風にブラッシュアップしたような。
いやー。Netflixオリジナル作品って、こういう良い意味で予想を裏切られる作品が隠れてるから楽しいんですよね。
ちなみに、Netflixには『ラブバード』という一文字違いのコメディ映画があるので、くれぐれも間違えないように。
『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』(’17)のマイケル・ショウォルター監督と、『エターナルズ』ではあのインドの映画スター・キンゴ役を演じた、クメイル・ナンジアニのWタッグの新作でとても期待していたんですが、こちらはちょっとガッカリ……。
サスペンスにしてはぬるく、コメディとしてはキレが悪く、わたしはあまり楽しめませんでした。

本作の主人公・LAに暮らすナタリーは”悲惨なデート体験”が読者に人気のライター。
今まで男運に恵まれなかったが、マッチングアプリでついに理想のイケメンジョシュを見つけた。
おまけにメッセージのやりとりもスムーズで、ユーモアもある。
ナタリーは最高のクリスマスにするため、アポ無しで彼のいるNYへ会いに行くが、そこには写真で見たジョシュとはまったく違う男性がいた……。

物語のはじまりで、ナタリーはジョシュがなりすましをしていたことに激怒し帰ろうとするんですが、たまたま訪れたBARでなりすましに使われていた写真と同じ人物に遭遇してしまうのです。
そのなりすましの写真に使われていたのは、なんとジョシュのイケメンの親友ダグということが発覚してしまいます。

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