『カモン カモン』── 中距離の家族関係|加藤るみ | PLANETS/第二次惑星開発委員会

宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2022.03.04

『カモン カモン』── 中距離の家族関係|加藤るみ

今朝のメルマガは、加藤るみさんの「映画館(シアター)の女神 3rd Stage」、第26回をお届けします。
今回紹介するのはホアキン・フェニックス主演の『カモン カモン』。叔父と甥っ子の絆を描いた本作に、るみさんなりの家族への思いが重なります。

加藤るみの映画館(シアター)の女神 3rd Stage
第26回 『カモン カモン』── 中距離の家族関係|加藤るみ

おはようございます、加藤るみです。

さぁ、アカデミー賞の季節がやってきました。
日本映画は濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』がノミネートされ、カンヌ受賞の流れから2019年のポン・ジュノ旋風を彷彿させるような勢いですね。

毎年、アカデミー賞は日本未公開の作品もあるので、なんとも言えないところはありますが、今年のノミネートをズラ〜っとチェックしてみた感想としては、

・『ナイトメア・アリー』が作品賞ノミネートは疑問。
・長編アニメは『ミッチェル家とマシンの反乱』が獲ったら面白い。
・主演男優賞はアンドリュー・ガーフィールドが獲ったら個人的に号泣。
・Netflix作品が作品賞を獲るという革命は起きるのか?

など、注目したいポイントがたくさんあります。
賞レースはあまり好きではないわたしですが、やはり一年に一度の祭典。
なんだかんだ気になってしまいますね。

発表は3月27日。(現地時間)
リアルタイムで発表を待ちたいと思います。

さて、今回紹介する作品は、9歳の少年と伯父の交流を描いたヒューマンドラマ『カモン カモン』です。

創立からたった10年で映画史に残る数々の名作を世に送り出している気鋭の映画スタジオA24と、グラフィックデザイナーとして90年代から常に時代のカルチャーを牽引し、映画監督としても『人生はビギナーズ』(’10)、『20センチュリーウーマン』(’16)など、エモーショナルな家族の物語を描いてきたマイク・ミルズ監督の最新作です。

あの『ジョーカー』(’19)でアカデミー主演男優賞を受賞したホアキン・フェニックスと、ホアキンと監督がオーディションで衝撃を受けたという新星ウディ・ノーマンの微笑ましい掛け合いにも注目です。

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アメリカでは既に公開されていて、タイム誌ほか有名誌がこぞって年間トップ10の映画に選出しているほど話題になっている本作ですが、毎年お気に入り映画を発表しているアメリカ元大統領バラク・オバマ氏の2021年のお気に入りにも入っています。
毎年、オバマさんは映画選びのセンスがガチというか、めちゃくちゃ映画観てるんだなぁというか、色んなジャンルにアンテナ張ってる人のラインナップで信頼できます。
昨年で言うと、同じリドリー・スコット監督作でも『ハウス・オブ・グッチ』(’21)ではなく『最後の決闘裁判』(’21)を選んだところに本物感を感じましたね(笑)。

それにしても、マイク・ミルズとA24の相性が良いことは前作の『20センチュリーウーマン』を観てわかりきっていたことなんですが……、『カモン カモン』、期待の上を超えていく傑作でした。
マイク・ミルズもA24も着実に確実に本当に良い仕事をするなぁと。
ますますファンになっちゃいました。
この作品、全編モノクロで撮影されていて、目に映る世界がとにかく優しいんです。
色のない寂しさなんて1ミリも感じられなくて、あったかい。

NYを拠点にアメリカを飛び回るラジオジャーナリストのジョニーは、LAに住む妹が精神病の夫の看病で家を留守にする数日間、9歳の甥っ子ジェシーの面倒を見ることに。
突如始まった、叔父と甥の共同生活。
仕事でNYに戻ることになったジョニーはジェシーを連れていくことを決めるが、それは彼にとって、子育ての厳しさを味わうと同時に驚きに満ちたかけがえのない経験となる……。

さて、『カモン カモン』の良さをどこから伝えたらいいのでしょうか……。
まず率直に、観終わった後涙がぽたぽた溢れ落ちてしまいました。

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