withコロナの時代に教育はどう変わるのか|藤川大祐 | PLANETS/第二次惑星開発委員会

宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

Serial

  • 2020.10.12

withコロナの時代に教育はどう変わるのか|藤川大祐

今朝のメルマガは、イベント「遅いインターネット会議」の冒頭60分間の書き起こしをお届けします。
千葉大学教育学部教授の藤川大祐さんをゲストにお迎えした「withコロナの時代に教育はどう変わるのか」の前編です。大学教育に携わるだけではなく、附属中学校の校長もつとめる藤川先生。コロナ禍での休校期間中、オンライン授業を導入することができた学校、プリントを渡すだけに留まった学校など、地域や学校によって対応は大きく異なりました。その中で、教育現場から見えてきたこととは何だったのでしょうか。(放送日:2020年9月1日)
※本イベントのアーカイブ動画はこちらから。

【明日開催!】
10/13(火)19:30〜宮田裕章「データサイエンスで共創するニューノーマルの世界」
ゲストは、LINEでの「新型コロナ対策のための全国調査」を手がけた宮田裕章さん。
宮田さんが9月に刊行した著書『共鳴する未来』は、ビッグデータで変わりゆく自由、プライバシー、貨幣といった「価値」を問い直し、個人の生き方を原点に共に生きる社会を提言しています。データとはそもそもなにか? 私たちはデータの活用を通じて、どのような新しい社会を築いていくことができるのか?
宮田さんの考える未来のかたちをうかがいます。

イベント詳細・お申し込みはこちらから!

遅いインターネット会議 2020.9.1
withコロナの時代に教育はどう変わるのか|藤川大祐

たかまつ こんばんは。本日ファシリテーターを務めます、お笑いジャーナリストのたかまつななです。よろしくお願いします。

宇野 こんばんは。PLANETSの宇野常寛です。

たかまつ 「遅いインターネット会議」、この企画では政治からサブカルチャーまで、そしてビジネスからアートまで様々な分野の講師をお招きしてお届けしてまいります。本日は有楽町にある三菱地所さんのコワーキングスペース、SAAIからお送りしております。本来であればトークイベントとして皆様とこの場を共有したかったんですけども、当面の間は新型コロナウイルスの感染防止のため、動画配信と形式を変更しております。本日もよろしくお願いいたします。

それではゲストの方をご紹介いたします。本日のゲストは千葉大学教育学部教授・副学部長、附属中学校長の藤川大祐さんです。よろしくお願いします。

藤川 はい、藤川です。よろしくお願いします。

宇野 よろしくお願いします。

たかまつ いつも来ていただいていますけども。

藤川 いつもは違う種類の番組でもご一緒させていただいたり、宇野さんの番組にも何度も出させていただいているんですけれども、この会場は初めてですね。

宇野 ちょっとシュールな感じしますよね?

藤川 はい、こういうコワーキングスペースで放送してたのかと(笑)。

たかまつ どこ見ればいいかわからないですよね(笑)。

宇野 むしろこの閑散とした感じに慣れてきてる。

たかまつ さて、本日のテーマは「withコロナ時代に教育はどう変わるのか」です。オンライン授業の導入や9月入学の是非についてなど、コロナ禍においては教育に関するいくつもの課題が議論されてきました。今夜は藤川先生とそれらの議論を振り返るとともに、今後に向けた課題の整理をしていきたいと思います。ということで宇野さん、なぜ、今回のテーマを今議論しようと思ったのでしょうか?

宇野 今日は9月1日で、本来だったら「もう夏休みが終わってしまった」、「宿題マジでやってねえぜ」とか、「絵日記に空白こんなにあるのにどうしよう」とか、そういう小中学生の魂の叫びがこだまする日だったわけです。小幡和輝くんが投稿していたけれど、9月1日ってそれと同時に、夏休みが明けて「嫌いな学校に、いじめっ子のいる学校にもう行きたくないな」って思って中高生が自殺してしまう、そういうタイミングでもあるんだけれど、今年は各学校がちょっと変則的な9月1日を迎えている。だからこのタイミングで、今の公教育のあり方ってどうなんだろうということを振り返りたいんだよね。もちろんコロナでリモートになって変わったところはあるし、議論もそこから始めていきたいんだけど、学校という箱庭にみんなで足を運んで、それこそ三密な、「三」かどうかは校舎にもよるだろうけれど、学舎で肩を寄せ合って勉強することの意味までも問い直していけたらいいなと思っているんです。なので今日は藤川先生、改めてよろしくお願いします。

藤川 はい、よろしくお願いします。

withコロナの時代に教育はどう変わるのか──休校期間中の現場から見えてきたこと

たかまつ それではさっそく議論に入っていきたいと思います。今日は大きく二部構成でお届けいたします。まず前半では今年の春に話題となりました、「オンライン授業の導入」と「9月入学」についての議論を振り返ります。後半ではwithコロナ時代における今後の課題として、「学校以外のコミュニティの必要性」や「学校という制度そのものをどう変えていくことが求められているのか」ということを考えたいと思います。ではさっそく、藤川先生からお話をお願いしてもよろしいでしょうか?

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藤川 はい、お話をさせていただきます。よろしくお願いします。私は教育研究者であり、たまたま、3年目になるんですけども、附属中学校の校長という立場で現場にいます。今、大学はオンライン授業で中学校は対面なので、ほぼ中学校に出勤する日々です。さらに学校設置者の立場でもありまして、国立大学法人千葉大学において附属学校を担当する副学部長という立場にもあります。なので、いろんな立場があって分けきれないとは思いますが、お話をさせていただきたいと思います。

たかまつ お願いします。

宇野 お願いします。ちなみに、そもそもなぜ大学はオンラインで、中学は対面でやっているんですか?

藤川 これは学長が医学部出身ではっきり言ってますけれども、大学生は感染リスクが高い。全国各地から来ますし、アルバイトもしますし、もしかしたら飲み会とかも勝手にやってしまっているかもしれない。対して中学生は基本的に地域の中にいますし、当然飲み会もないし、旅行はしないし、親が管理している。感染リスクが全然違うということです。

宇野 なるほど。中学生と大学生では社会的身体が全然違うということなんですね。

藤川 そうです。今回はそれをすごく痛感しましたね。今まで私は中学生に教育するのも大学生に教育するのも、あんまり本質は変わらないんじゃないかなと思っていたんですけれども、このような状況下では身の置き場が全然違ってきます。大学では学生とほとんど顔を合わせないでネット越しに指導していますけれども、中学生とは毎日顔を合わせていて、大学教員としてのアイデンティティがよくわからなくなることが多いですね。
一応「オンライン教育」と「9月入学」を入口としていますが、半年を振り返るとこうなります。

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たかまつ そうですね。新聞もすごくにぎわしていましたもんね。

藤川 大学はもうオンライン教育しかないという状況になっています。一方、小中高などではオンライン教育が話題にはなりますが、とにかく遅れている授業を取り戻すことを一生懸命やっていて、あまりオンライン教育って感じでもありません。9月入学に関しては完全に議論が消えているので過去の話になっていて。みなさんわかっている方が多いと思いますが、振り返っていきたいと思います。

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