宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2016.11.07
  • HANGOUTPLUS書き起こし,宇野常寛

HANGOUT PLUS 宇野常寛ソロトークSPECIAL(10月31日放送分書き起こし)【毎週月曜日配信】

毎週月曜日22時よりニコ生で放送中の宇野常寛がナビゲーターを務める「HANGOUT PLUS」。今回は2016年10月31日に放送された、宇野常寛ソロトーク回の一部書き起こしをお届けします。今回は宇野常寛の「思い出の一作」として、押井守脚本・演出で2009年に上演された舞台版『鉄人28号』。宇野常寛が最近読んだ本について語るコーナーでは、川村元気プロデュースによる映画が話題の、朝井リョウ『何者』について語ります。


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▲先週の放送はこちらからご覧いただけます
 
PLANETSチャンネルで、J-WAVE 「THE HANGOUT」月曜日の後継となる宇野常寛のニコ生番組を放送中!
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「HANGOUT PLUS書き起こし」これまでの記事はこちらのリンクから。

前回:根津孝太 × 宇野常寛 プロダクトデザインはいかに更新されるべきか

(HANGOUT PLUS 10月24日放送分書き起こし)

 
※このテキストは2016年10月31日放送の「HANGOUT PLUS」の内容の一部を書き起こしたものです。
 
■ 押井守の戦後史作品の原点となる舞台版『鉄人28号』
 
宇野 今日は試験的に2つコーナーをやってみたいと思います。ひとつめは僕が「思い出の一作」について語るというコーナーで、僕にとっての思い出深い過去の名作を、5分くらいの枠で、ひたすら皆さんに布教していこうと思います。今回のお題はこれです。
 
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▲「舞台『鉄人28号』」

 
これ知ってますか? 正解を書いている人がニコ生にいますね。これは2009年に初公演された『鉄人28号』の舞台版です。
 
OKP 舞台といっても、そもそも鉄人28号は舞台に収まらないでしょ。
 
宇野 鉄人が膝をついている10メートルくらいのセットを、中央にドカーンと置いて舞台をやっているんですよ。舞台の脚本・演出は、我らが押井守先生です。どうですか皆さん、なんか良さげな匂いがしません? この時期に押井さんが作っていた作品は『真・女立喰師列伝』(2007年)、『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』(2008年)、『ASSAULT GIRLS』(2009年)、この辺りですね。
それではさっそく5分間、語ってみたいと思います。
 
OKP じゃあ行きますか。よーいスタート。
 
宇野 この舞台『鉄人28号』なんですが、実は僕は傑作だと思ってるんです。なぜこの作品を観たのかというと、そもそもの発端がこれですね。『PLANETS Vol.9』。
 
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▲『PLANETS Vol.9』(Amazon)
 
この最終章が『オリンピック破壊計画』なんですね。仮にオリンピックをテロで破壊するとしたらどうなるのかというシミュレーションをやったわけです。東京でテロと言ったら、やはり押井守の『機動警察パトレイバー the Movie』と『機動警察パトレイバー 2 the Movie』ですよね。そこで押井作品をざっと調べていたときに、実は押井守がオリンピックをテーマにした作品を作っていたという事実にブチ当たったんですね。それで『PLANETS』を作った後、DVDを取り寄せてみたんですよ。それが舞台『鉄人28号』なんですよね。
ただし、この作品に出てくるオリンピックは2020年じゃなくて1964年です。もともと『鉄人28号』は戦後初期が舞台で、戦時中に日本軍が作った決戦兵器である鉄人28号が、戦後に平和利用されるストーリーですよね。この舞台『鉄人28号』も、そこまでは原作に則っています。
主人公の金田正太郎くんは、戦後民主主義の理想を託された存在なので、戦後生まれの非常に無垢な存在なわけです。かつての日本は工業力を間違った方向に使って侵略戦争をしてしまったけど、これからはあえて純真無垢な少年にその力を託すことによって、正義のために使っていこう。そういう戦後民主主義の理想を実現するために、正太郎くんの保護者である敷島博士が、半ば正太郎くんを洗脳して熱烈に訴えているわけですよ。ところが、それに反抗する奴がいるんです。そんな戦後民主主義なんていうものは欺瞞であると。それが犬走一直というテロリストなんですね。
 
OKP 名前がすごいですね。
 
宇野 名前がもう完全に押井守ですよね。この犬走一直は「人狼党」というテロリスト集団のリーダーです。1964年当時は、オリンピックに向けて東京がどんどんと再開発されていた時期です。それまでの東京は戦後の混沌を残したジャンクな街で、それが結果的に多様性を生み出していたけれど、来るべき高度成長と消費社会に向かって、クリーンでデオドランドな街にする大都市改造があった。そのときにマイノリティがいっぱい排除されたわけですが、それを許しがたいと言って、犬走一直は東京オリンピックに対してテロを行おうとするわけです。
そして、正太郎くんはその犬走一直に出会うことによって悩むんです。敷島博士の言う戦後民主主義の理想を実現すべきなのか、それとも犬走一直の言うように東京に真の自由を確保する方がいいのか。その間で引き裂かれるように悩むわけです。悩んだ挙句に、じゃあどうするかというのがクライマックスで、犬走一直は東京オリンピックに対して巨大なテロを企てるんですが、それに対して正太郎くんが犬走側につくのか、敷島博士側につくのか。それとも第3の選択肢を取るのかというところ。
 
OKP 少年に選択させるのが押井っぽいですよね。
 
宇野 押井っぽいというか、正太郎くんは戦後民主主義の象徴だから、彼が選ぶしかないんですよ。これは『立食師列伝』につながっていく押井守の戦後史の記述なんですよね。

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