長谷川リョー『考えるを考える』 第6回 インナーテクノロジー探究家・三好大助が語る、“自らの全体性を祝福する技術”の可能性 | PLANETS/第二次惑星開発委員会

宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2018.04.18
  • 三好大助,長谷川リョー

長谷川リョー『考えるを考える』 第6回 インナーテクノロジー探究家・三好大助が語る、“自らの全体性を祝福する技術”の可能性

編集者・ライターの僕・長谷川リョーが(ある情報を持っている)専門家ではなく深く思考をしている人々に話を伺っていくシリーズ『考えるを考える』。前回は東工大の美学者・伊藤亜紗さんの身体論から、「分かる/分からない」の境界に迫りました。今回はグラミン銀行やGoogleを経て、「インナーテクノロジー(人間の内的変容に関する理論)」を探求する三好大助さんにお話を伺います。近年、日本でも耳にすることが増えた「瞑想」や「マインドフルネス」、はたまた「U理論」や「メンタルモデル」。内面を扱うこれらの技法は総称としてインナーテクノロジーと呼ばれ、各々の関連性や体系化が近年進んできています。自らの職務経験を通じて感じた”課題解決パラダイム”の限界や、組織力学から発生する負の連鎖。それら普遍性の高い問題に対して、再現性をもって扱える時代になったと説く三好さん。“自らの全体性を祝福する技術”の可能性を語っていただきました。

自己統合を促すインナーテクノロジーの「汎用性」と「再現性」

長谷川 日本ではまだあまり聞き慣れない「インナーテクノロジー」。まずはその概要からお伺いしてもよろしいでしょうか?

三好 インナーテクノロジーとは、人間の内面を扱う方法論全般に対する呼び名の一つです。ヨガやマインドフルネス、NLP、最近流行りの「NVC(Non-violent Communication=非暴力コミュニケーション)」や「U理論」など、世界には内面を扱う様々な理論がありますよね。

現在ではインナーテクノロジーという包括的な捉え方のもと、横断的な研究が進んでいて。これらの理論にどんな相互関連性があり、人間の内的変容をどのようなプロセスでサポートできるのか。以前にもまして立体的に理解できるようになってきている面白い時代です。

僕自身は、どうしたら人間がその人本来のエネルギーで生きられるようになるのかに興味があって。有益なテクノロジーをキュレーションして体系化しながら、企業や個人に分かち合っています。

長谷川 あえて「テクノロジー」と銘打っているということは、ある種スピリチュアルに対するアンチテーゼも込められているのでしょうか。万人が汎用的に用いることのできる技術体系を目指す意味合いも込められているというか。

三好 アンチテーゼかは分かりませんが。おっしゃる通り意図はそこにあると思います。「汎用性」と「再現性」。人間が自分自身を抑圧したり自己分離していくプロセスには共通性があります。それぞれのフェーズでどんな方法論を使えば安全かつ効果的に、日常の中で自己統合できるのか。それがかなりの解像度で分かってきてるのがこの時代の面白いところなんです。

長谷川 解明されてきているその自己分離のプロセスとは、一体どのようなものなのでしょうか?

三好 子どもは誰しも家庭や学校といった既にある世界に適合しようとします。親や友達から分離しないよう無意識に頑張るわけですね。でも生きている以上、体験として分離は必ずやってきます。そして痛みを味わうことになる。僕であれば、悪いことをすると親からいつも地下室に閉じ込められていて。幼い時は自分が親から切り離されてるようで、その時間がとても辛かったのを覚えています。

その状況で子どもは何をするかというと、無意識下でその痛みが起きた理由付けをするんです。僕の例であれば「自分は家にいなくてもいい存在だから、こんなことされるんだ」というように。そうやってドラマに浸ることで、地下室の暗闇にいる間でもその痛みに直面するのを回避できるわけですね。

長谷川 なるほど。そうした幼児期の行動は科学的にも解明されてきているんですね。

三好 幼少期に強まるシータ波という脳波によるものと言われています。このプロセスを繰り返すことで、でっち上げられた理由は真実ではないにも関わらず、どんどん潜在意識へ刻まれ、人生を支配する無自覚な信念になっていきます。僕であれば「自分はこの世界にいなくてもいい存在なんだ。だから親や人はこんなことをするんだ」といった感じですね。

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