長谷川リョー 考えるを考える 第18回「世界最難関」のミネルバ大学にパスした初の日本人、片山晴菜が見据える新しい「教育」 | PLANETS/第二次惑星開発委員会

宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2019.08.26
  • 長谷川リョー

長谷川リョー 考えるを考える 第18回「世界最難関」のミネルバ大学にパスした初の日本人、片山晴菜が見据える新しい「教育」

編集者・ライターの長谷川リョーが、(ある情報を持っている)専門家ではなく深く思考をしている人々に話を伺っていくシリーズ『考えるを考える』。今回インタビューするのは、合格率わずか1.9%、世界最難関と言われているミネルバ大学に、日本人として初めて合格した片山晴菜さん。同大学の生徒は、4年間で世界7都市を移動し、オンラインで授業を受けながら、各地で地元の公共団体やNPO、企業と連携して社会課題の解決に取り組みます。
スタートアップライクに「教育を再定義」するミネルバ大学とは、一体どのような場所なのでしょうか。アメリカでも異例の手厚い選考プロセスを経て、ディスカッション重視の「反転学習」で学び、日常的に“生殖の未来”を議論する一方、都市探索で過去と対話するユニークなキャンパスライフ。片山さんが構想する、“超エリート”と地方を架橋し、「想像力の格差」を解消する新しい「高校」の全容から、正義が乱立するサンフランシスコで身につけた、「目の前にあるものを、目に見える形で見ない」思考法まで迫ります。(構成:小池真幸)

ディスカッション重視の教育を、属人性を排したかたちで。ミネルバ大学で実施される「反転学習」とは?

長谷川 まずは、ミネルバ大学について聞かせてください。世界7都市を移動しながら、オンラインで授業を受けているんですよね?キャンパスのない大学、ということでしょうか。

片山 はい。一応サンフランシスコに本拠地はありますが、ミーティングルームしかない、ただのオフィスです。

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片山 移動先の都市での、行動スケジュールも組まれています。今後グローバル化が進み、ますます世界が狭くなっていくなかで、さまざまな人たちと共同生活をしていかなければいけなくなるはず。そうした環境変化を背景に、「どうせキャンパスにいる必要がないのであれば、みんなで一緒に動いてください」と、他の文化に接する機会を持たせてくれているんです。

長谷川 オンラインの授業は、どういったスタイルで行われているのですか?MOOCのようなイメージでしょうか。

片山 「反転授業」という形式を取っています。事前に資料や課題を読み込んできたうえで、授業の最初に理解度を確認する記述式のテストを実施します。そのテストで一定の結果を残せなければ、出席とみなされないんです。

授業のメインはディスカッションです。成績評価のためのテストがないので、議論で良い発言をしないと、平常点がもらえません。授業が行われるオンラインプラットフォームには、先生たちのファシリテーションをアシストしてくれる機能もあります。時間を見て「ディスカッションを一回やめて次に行きましょう」とナビゲートしてくれたり、生徒の発言量などが表示されたりするんです。たとえば発言量が少ない生徒には赤い枠が、多い生徒には緑の枠が映ります。

長谷川 知識の習得は授業前に済ませ、授業ではディスカッションに集中しているんですね。ファシリテーションがシステム化されている点も面白い。

片山 全体的に「属人化した教えにしない」思想で運営されており、授業の流れも、あらかじめ定められています。もちろん個々の教師の経験則はシェアされるべきですが、だからといって、教育の質に差が出てしまうと困るので。

授業後は毎回、先生たちがそれぞれの生徒にフィードバックをコメントしなければいけないのですが、その評価も属人化しないように。個々のスキルに対する判断基準がしっかりと定められています。

長谷川 先生はどういった人たちなのでしょう?一般的な大学と同じように、博士課程を取っている方が多いのでしょうか。

片山 そうですね、多い印象はあります。先生方は、現在も教育に従事している方と、そうでない方がいらっしゃいます。前者はスタンフォード大学など他の学校でも教えている研究職または教授職の方、後者は現役の経営者やNGO運営者、または以前教育機関に従事していた方が多いです。どちらかといえば、前者の現役研究職または教授職の方が多い印象がありますね。

アメリカでも異例、3フェーズの手厚い選考プロセス。徹底した公平性の担保と、「全世界70〜80ヶ国」の多様性

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