御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記 第10回 ブラック・バウヒニア行動と初めての逮捕拘束 | PLANETS/第二次惑星開発委員会

宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2017.07.25
  • 周庭

御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記 第10回 ブラック・バウヒニア行動と初めての逮捕拘束

香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。7月1日の返還記念日を前にデモに参加した周庭さんは、初めての逮捕拘束を経験しました。公民的不服従を主張しデモに参加する上での覚悟、逮捕後の様子を語ります。(翻訳:伯川星矢)

▲7月1日の返還記念日デモに参加する周庭さん

先月の連載を見返してみると、京都や台湾への旅、そして六四燭光晩会など、すべてが遠い昔に起きたことのような気がします。ここ一ヶ月であまりにたくさんの出来事がありました。香港の情勢は激しく変化していて、毎月さまざまなことが起きているものですが、それでもこの一ヶ月、わたしは人生で初めての体験をいくつもしました。それはわたし自身の視野を広げ、更なる覚悟を決める機会でもありました。

▲返還記念日前のデモ、1回目のブラック・バウヒニア行動 (撮影:jimmy lam)

▲2回目のブラック・バウヒニア行動 (撮影:jimmy lam)

前回、台湾に向かい林飛帆氏の結婚式に参加し、翌日香港に戻り、更にその翌日に東京へ行ったというお話をしました。それとはまた別に、今回はジョシュアと二人で東京に向かいました。とても厳しいスケジュールをこなしながら、わたしたちは初めて海外で記者会見を行いました。日本記者クラブで会見を行う機会をいただいたのですが、約40〜50人もの記者の方たちが参加されました。これほど多くのメディアの方が参加されたことに、本当にびっくりしました。たとえ香港で記者会見を行っても、雨傘運動のような大事件でもない限り、40〜50人もの記者が参加するということはほとんどありません。かつて、ジョシュアとネイサン・ローが台湾の政党・民間団体と一緒に記者会見を行ったり、アメリカも国会の公聴会に出席したりする機会がありましたが、単独での海外記者会見はこれで初めてでした。「主権移行20年」と題した海外会見がこれほどの成功を収めたことは、本当に想定外でした。

記者会見以外にも、わたしたちは東京大学の阿古先生のご招待により、東京大学駒場キャンパスで行われた講演会に出席しました。その日、わたしとジョシュアは雨傘運動後の香港についての講演を行いました。たとえば中国共産党体制を批判する書籍を出版・販売していた香港の銅鑼湾(どらわん)書店の関係者5人が連続して失踪した事件や、親中派のビジネスマンが香港から中国大陸に誘拐された事件、そしてジョシュアがマレーシアとタイに入国拒否されたことなどについてお話をしました。また、わたしたち香港衆志の理念についても紹介しました。講演に来てくれたみなさんにわたしたちが民主的な制度を求めていると同時に、香港の民主主義と民主自決を求めていることを知ってもらいたかったのです。そしてとても驚いたことに、当日の参加者がとても多く、150人分の席がいっぱいになり、隣の教室から椅子を運び込んで座っている人もいましたがそれも入らなくなり、最後には廊下に椅子を並べてドア越しに講演を聞いている人も大勢いるほどの大盛況でした。正直、「すごすぎる」としかことばが出ません。当日参加された方たちに本当に感謝しています。

▲東京大学での講演の様子

東京から香港に戻ると、わたしたちは7月1日の返還日記念日前後のデモ活動について考えを巡らせていました。今年の7月1日は香港の主権移行20周年でもあり、習近平が初めて国家主席として香港に来訪する日でもありました。毎年この日に、わたしたちはデモに参加していますが、公民的不服従を主張する組織として、デモ以外にも更に積極的な行動も行いたいと思っていました。7月1日よりも前に直接的な行動を起こすことによって、民衆が習近平の来訪を意識する空気を作り出し、返還記念日デモにももっと参加してもらえるのではないかと考えていたのです。

最終的に、わたしたちは「“ブラック”・バウヒニア行動」を決行しました。20年前、中央政府は香港に、香港の「永遠の繁栄」を象徴としてゴールデン・バウヒニア(編注:ハカマカズラ科の植物)像を贈りました。土台と柱は「中国が香港をやさしく包み込む」ことを表しています。わたしたちはこの“贈り物”を行動地点とし、香港の「偽りの繁栄を破り捨てる」ことを表そうとしました。もしも繁栄と強さが人権弾圧によってもたらされるものなのだとしたら、わたしたちはそんなものは必要としていません。あの日、朝6時、わたしを含む約10人の香港衆志メンバーが湾仔(ワンチャイ)にあるゴールデン・バウヒニア像に黒い布を被せました。警察側は事前にこの行動の情報をつかんでいなかっため、わたしたちは布を被せることに成功し、目標の行動を達成しました。

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