宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2021.03.23

銀座の街から、茶と菓子を再考する|丸若裕俊

工芸品や茶のプロデュースを通して、日本の伝統的な文化や技術を現代にアップデートする取り組みをしている丸若裕俊さんの連載『ボーダレス&タイムレス──日本的なものたちの手触りについて』。今回は2020年11月に銀座ソニーパークにオープンしたばかりの「GEN GEN AN幻」についてお話を伺いました。近年インバウンド需要に応えるかたちで変化してきた銀座。この街で「茶と菓子」を提供することの意味を考察します。(構成:石堂実花)

丸若裕俊 ボーダレス&タイムレス──日本的なものたちの手触りについて
第13回 銀座の街から、茶と菓子を再考する

銀座のソニーパークで、茶の新たな魅力を伝える

宇野 今日は、昨年11月に銀座のソニーパークにオープンした「GEN GEN AN幻」を中心に、丸若さんがどういうことを考えてプロデュースしていたか、実際に2ヶ月やってみてどういった手ごたえがあるかについて聞いてみたいと思っています。

丸若 はい。「GEN GEN AN幻」では茶をメインにした喫茶をやっています。まず、日本人で日本茶を知らない人はいないと思います。とはいえ、じゃあ日本茶がいま、日常のなかにどんな形で受け入れられているかと聞くと、みんな「うーん」と考え込んでしまうと思うんですね。そこで、「GEN GEN AN」では改めて茶の魅力を伝えていくことをコンセプトにしています。なので、いわゆるみなさんの頭の中にあるイメージとはだいぶ異なっているかと思います。たとえば、この看板ひとつをとっても、みなさんが抱く茶のイメージとちょっと違うかなと思います。

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こちらは店舗の景色の一部です。いわゆる「お茶屋さん」のイメージとは離れているかとは思うのですが、茶が持っている可能性を、いろんなものに形を変えて表現をする場所っていう形で、この空間があります。一見どう映るかわからないんですけど、すごく伝統的な、職人さんによる技術のものがあったりとか、ラジカセのような電子家電があったりとか。いろいろなものをミックスさせてこの空間を表現しています。

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銀座のソニーパークは、もともとソニーがビルの建て替えを行う際にその土地を有効活用して、銀座という街に対してどういうメッセ―ジを送れるか、という発想のもと建てられたものなんです。今回はそういった歴史も踏まえたうえで、建築家の荒木信雄さんと一緒にこの空間を作りました。

こういうご時世なのでなかなか発揮しづらい点ではあるのですが、ここが東京メトロと直結でアクセスしやすい場所にあることは、とても面白いポイントだと思っています。こういう場所にあえてコーヒーやファストフードではなくて茶を出すという試みを、ソニーさんと一緒にやっています。この写真はまさに地下鉄のメトロの通路ですが、うちの世界観がここから少しずつ浸食しているような感じです。

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うちは「GEN GEN AN」というプロジェクトだけではなく、もともと「EN TEA」という茶のメーカーもやっています。なので、茶を作る側だからこそ提案できる、日常を作っていくようなプロダクト作りをしたいということで、見た目的にも手に取りたくなるような、良い意味での違和感を作り上げています。

僕たちのお店のある階は地下鉄のフロアと地上階の間に存在していて、いわゆる半地下にあるんですが、より都市とコミュニケーションを図っていこうということで、一日限定で、地上階にもいろんな取り組みを施設と協力して行っています。

僕は、茶はその時代や、その時々の鏡のような存在になってほしいなと思っています。たとえばコロナ禍で出足が悪いとか、人を呼べないだとか、営業時間も短縮せざるを得ない……などなど、お店のことを考え出すといろいろあるんですが、この事象に合わせていろんなコンテンツを伝えていきたい。そう考えて、たとえば年末にはパリのレストラン「MAISON」とコラボレーションでイベントを開催したりもしました。そういった、こういうときだからこそ華やかで楽しめるような試みもしています。

昨年末には「Taki/Dashi」と題して、地上スペースにキッチンカーを出してイベントを行いました。衛生面や検査など、できることはすべてしたうえで望んだのですが、来ていただいた方たちも、ちゃんとマナーを守ってくれて、とてもありがたかったです。実はこの行列が数時間絶えずあるほどに大きな反響をいただきました。

場所がとても気持ちのよい場所なので、晴天の日なんかは、気持ち的にもリラックスするかなということで。これからも時期を見ながらやっていこうかなと思っています。

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「GEN GEN AN幻」では基本のメニューも、茶の魅力を感じられるものを用意しています。茶は、茶だけで完結しません。その茶があるということは、どういう空間がいいのかとか、どういう食べ合わせがいいのかとか。もっと言うと、どういう生活リズムがいいかな、といったように、生活を考え直す起点にもなる存在でもあると思っています。なので、茶以外のものが持つ可能性も、茶そのものと同時並行で探求していきたいと考えています。

「あり得たかもしれない街の風景」を空間で演出したい

宇野 銀座は日本の中心地のうちの一つで、それゆえの難しさがあると思うんです。丸若さんは、最初銀座のソニーパークでやらないかという話を聞いたとき、この街についてどう思ったんでしょうか。「GEN GEN AN」の一号店は渋谷にあると思うんですが、そこと比べてどう考えたのかについてもお伺いしたいです。

丸若 茶が伝統的なカルチャーでありながらこれからも残っていくとしたら、現在進行形である必要があると思っています。だからこそ、渋谷や銀座という、日本を代表する土地でお茶屋をやることは、すごく意味のあることだと思っています。

ただ、渋谷ではじめて店舗を出したときは相当苦労しました。理想は、新しい価値を提案して、新しいムーヴメントを起こす……と言うのは簡単ですが、その場所にはお客さんがそもそも存在してないわけです。こういう洗礼は渋谷でさんざん受けているので、正直、銀座ではさらに洗礼を受けるだろうと思って、最初はあまりポジティブじゃなかった。でも、渋谷の店舗の経験から、できること、できることできないことがわかってきていたということと、ソニーパークさんからコンセプトを聞くうちに、こうした大きい企業さんと一緒に何かやっていくっていうのは、何か新たに挑戦ができるんじゃないかと思うようになりました。

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