丸若裕俊 ボーダレス&タイムレスーー日本的なものたちの手触りについて 第6回 旅人の喫茶と、都市に見る〈幻〉 | PLANETS/第二次惑星開発委員会

宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2019.03.07
  • 丸若裕俊

丸若裕俊 ボーダレス&タイムレスーー日本的なものたちの手触りについて 第6回 旅人の喫茶と、都市に見る〈幻〉

工芸品や茶のプロデュースを通して、日本の伝統的な文化や技術を現代にアップデートする取り組みをしている丸若裕俊さんの連載『ボーダレス&タイムレスーー日本的なものたちの手触りについて』。今回のテーマは「ジャーニー」。茶を「伝える」というテーマのもと、新しいプロジェクトにアップデートされようとしているGENGENANについて。さらに、コーヒーと茶が交差する地点から見えるフォースウェーブの可能性について考えます。(構成:大内孝子)

GENGENANという実験装置

丸若 今日は、「ENTEA」と「GENGENAN」ついて考えたことをお話しできたらと思っています。もともと茶のマスターブランドとしてENTEAがあって、これは茶の製品開発と製造を手がけています。もうひとつ、GENGENANという店舗の経営を渋谷でやってきて、2年くらい経った今、なぜGENGENANを始めたのかを改めて考えていたんです。それでわかったのは、茶を「作る」ことに特化したのがENTEAで、茶を「伝える」ことに特化したのがGENGENANなんです。その中のひとつのプロジェクトとして店舗があった。店舗というのはひとつのアウトプットで、茶には本来こういう楽しみ方があるよね、こういう意味があるよね、みたいなことを伝えるプロジェクトの総称だったなと。だから、来年は店舗だけではないGENGENANをちゃんとしていかなくちゃなと思っています。

宇野 店舗だけではないGENGENANというと、具体的には?

丸若 二つ、キーワードがあります。ひとつは「ジャーニー」をテーマに、今年の春からGENGENANというプロジェクトで、パリ、ポートランド、コペンハーゲン、アムステルダムなどの諸国へ旅したいと考えています。それは、江戸時代にいろいろなところを旅して茶を広めた売茶翁が、最後に構えた庵が幻幻庵で、それを現代にアップデートしたのが渋谷のGENGENANである、というコンセプトに繋がるんですね。海外の人たちにこのGENGENANをどう伝えていくか。今回行ってみてどこが一番いいか探してこようと思っています。

今は冗談みたいなアイディアだしでしかないけれど、例えば、アムステルダムはコーヒーショップの隣にティーショップを作ってみたり。コペンハーゲンでは、クリスチャニアなんかでTEATIMEなんかしてみたい。お金儲けになるわけがないんですが、めちゃくちゃおもしろそうだなって。アンチテーゼを具体的な形にしたいと思っていて、どれが一番形になりやすいかも含めたジャーニーです。茶だからこそ旅するっていうのがいいなと思っています。

もうひとつは、もっとスペシャルな茶の体験ができる空間を作ろうと思っています。具体的な場所はもう決まっていて、ざっくりとしたイメージだとワインでいうテイスティングハウスのような空間を作りたいんです。

GENGENANの動きでいうとその二つなんですが、全部実験なんです。GENGENANをやってきて「こういう茶のスタイルありだよね」とか「こういう茶葉の淹れ方ありだよね」というのが、3年目になってようやく形になってきた。その一つとしてのアウトプットがENTEAHOUSEだったんです。

また、まだお話しできませんが、他の飲料との取り組みや、ライフスタイルを引率するブランドとのプロジェクトも。
分かる人には、分かるという概念を一つ一つ解放していきたいと思っています。
こんな風に、今まで僕たちも想像でしかない、新たな茶の楽しみ方を多くの人々と形にしていけているのは、たぶん幻幻庵があったからなんですよ。すごい小さい実験なんだけど、そのアウトプットがいきなり飛躍する感じがおもしろい。これは現代的だし、東京的だなと思うんです。

だから、今はジャーニーってハードコアなことに見えるかもしれないけど、数年後には、日本人が旅行するときは茶を持っていくことになるかもしれない。茶にまつわる場所に行くのが世界のお金持ちの一つのトレンドになるかもしれない。そういう人間の飽くなき探求のところに茶を差してくということをしたいんです。食とか、そういうところの実験装置としてのプロジェクトがGENGENANなんです。

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▲渋谷・「GENGENAN」

茶を通じて都市をアップデートする


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