宇野常寛 NewsX vol.16 ゲスト:黒井文太郎 「戦争と平和の再定義」【毎週月曜配信】 | PLANETS/第二次惑星開発委員会

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  • 2019.01.28
  • 加藤るみ

宇野常寛 NewsX vol.16 ゲスト:黒井文太郎 「戦争と平和の再定義」【毎週月曜配信】

宇野常寛が火曜日のキャスターを担当する番組「NewsX」(dTVチャンネル・ひかりTVチャンネル+にて放送中)の書き起こしをお届けします。12月18日に放送されたvol.16のテーマは「戦争と平和の再定義」。軍事ジャーナリストの黒井文太郎さんをゲストに迎えて、非人道的な事態が起きている中東シリアの実態と、超大国のパワーバランスの変化の中で、日本が取り組むべき国際貢献のあり方について議論しました。(構成:籔 和馬)

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宇野常寛 News X vol.16 「戦争と平和の再定義」
2018年12月18日放送
ゲスト:黒井文太郎(軍事ジャーナリスト)
アシスタント:加藤るみ(タレント)

宇野常寛の担当する「NewsX」火曜日は毎週22:00より、dTVチャンネルで生放送中です。
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黒井文太郎さんの過去記事はこちら
ソーシャルネット時代のリアリティと「イスラム国」――日本人は”ヤツら”とどう向きあうべきなのか(軍事評論家・黒井文太郎インタビュー)
東京オリンピックでテロは難しいのか?――イスラム系の人々をリストアップする警察の監視力(黒井文太郎)

シリアの軍事独裁政権と安保理常任理事国ロシアの関係性

加藤 NewsX火曜日、今日のゲストは軍事ジャーナリスト、黒井文太郎さんです。黒井さんは『PLANETS vol.10』で軍事安全保障の専門家の人たちと座談会に参加されたんですよね?

黒井 そうです。宇野さんが司会の座談会に参加しました。

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▲『PLANETS vol.10

宇野 ちょうど戦争特集の巻頭に載っている座談会です。戦争と平和について考えるときに、どうしても日本国内の自衛隊や憲法どうするんだという話に終始しちゃう傾向にありますよね。それは端的によくないと思うんですよ。もともと戦争は外国とするものなので、世界の中での戦争と平和について語らないといけない。なので、今回の特集は安倍晋三も憲法9条もほぼ出てこない戦争特集と銘打っていたので、最初に黒井さんのような外国のテロや紛争を取材してきた人をお呼びして、そもそもの問題設定を今回はワールドワイドでいきますよということをやりたかったんですよ。そこに参加していただいたご縁で、今日はちょっとそこの続きの話をお願いしたいなと思っています。

加藤 今日黒井さんに語ってもらうテーマは「戦争と平和の再定義」です。宇野さん、こちらのテーマに設定した理由は?

宇野 これはまさに『PLANETS vol.10』のテーマでもあったんです。あと戦争というテーマを聞いたときに、どうしても日本人は第二次世界大戦を思い出しちゃうんですね。みんな徴兵されて、空襲で全土が焼け野原になってみたいなね。でも、あれは総力戦と言われている20世紀前半独特の戦争の形態で、あの基準で安全保障や平和活動の話をしてもほとんど通用しない。そこをしっかりアップデートしたい思いがあって、今回黒井さんにそのアップデート作業を手伝ってもらおうと思います。

加藤 では、今日も三つのキーワードでトークをしていきます。一つ目は『シリア情勢の「いま」』です。

宇野 黒井さんをテレビや雑誌などでご存知の方は、シリア情勢の専門家と思っている人が多いと思うんですよ。実際に黒井さんは、シリアについて精力的な取材と啓蒙に努められています。それは単に黒井さんがシリアに縁があって、シリアにくわしいこと以上の意味がある。やはり黒井さんの発言を追っていると、今のシリア情勢に21世紀の安全保障の課題が全部つまっている。その象徴的な場所なんだという意図がすごくあると思うんですね。なので、シリア情勢のアップデートから議論を始めていきたいと思っています。

黒井 今、宇野さんがおっしゃったような問題意識でいうと、シリア情勢は人道危機がひどいんですね。ポルポト派の時代などとあまり変わらないことがあります。ただそれを冷戦が終わってから、安保理を中心にして抑える動きがあったんですけれども、それがやはりこの時代にきて機能しなくなっています。そういった人道的なものが誰も止められないという象徴的な事件ですね。

宇野 シリアの内戦は8年間近く続いていますよね。そのなかで、日本人の感覚からするとISが巨大勢力をのしてきて、それをどのプレイヤーも抑えられなくなってきた。そのときが一番報道されていたと思うんですよ。ただ、この半年から1年の情勢はだいぶ違いますよね。

黒井 ISはひとつの時代の流行だったんです。今はほとんどもう力がなくなっていますけどもね。シリアで起こっていることは、基本的には独裁者がいて、それに対する「アラブの春」が2011年にあったんですけども、その流れの延長です。ただ、それを抑えることができていないんですね。2018年の春に、化学兵器などを使っている大変に悲惨な映像がいっぱい出てきたんです。夏にかけて、政府軍対反政府軍の戦闘で、政府軍がロシア軍の支援を受けてだいぶレジスタンス側を凌駕してきた流れがあったんですね。ただ、そのあと反体制派の人たちがトルコの近くにあるイドリブ県という小さな県に逃げて行って、そこに集結しているんですね。2018年の夏から、次はそこに攻勢をかけるだろうと言われていました。10万人ぐらいの、どこにも行く場所がなくなったゲリラが立てこもっています。なので、悲惨な大殺戮が起こるだろうとみんなが思っていたところ、トルコがそのすぐ上にいますから、トルコとロシアが2018年の9月に会談をして、10月から停戦はできています。だけれども、ここ最近の流れとして、停戦違反が起こってきて、また殺戮が起こるんじゃないのかと危惧されている状況ですね。

宇野 つまりISを中心としたムーブメントはもう完全にひと段落ついていて、今ロシアの中央アジア戦略を中心としたパワーポリティクスに局面が移ってきているということですよね。

黒井 しかも、イラク戦争の後の米軍、今のトランプさんの前のオバマさんのときからですけども、やはり海外ではあまり動こうとしないというのがあります。実はシリアも2013年に化学兵器を使ったときに、オバマさんは「レッドラインを超えたからやるぞ」と宣言したんです。けれども、やはり国内やヨーロッパの支持がなくてできなかった。ISの問題はもちろん大きいんですけれども、もっと大きな問題は、ロシアを率いるプーチンさんがイケイケの人ですから、シリア問題の表舞台に出てきている。アメリカが引いていくなかで、そういった人道危機を抑えることができなくなっているのが、今の状況ですよね。

宇野 ここ半年から一年の状況を象徴するような、映像資料や画像資料も黒井さんから用意していただいているので、ちょっとそれを見ながらもう少し解説していただきたいと思うんですけども、出せますか?

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黒井 今の戦争は当局がいくら抑えてもみんなスマホを持っていますから、映像を撮って出していくんですよね。これは二日前の16日なんですけども、最後に残ったイドリブ県がいわゆる民主化運動の最後の砦ということで、こういったものがまだ最後やっているんですけども、これがいつまで続くのかなというと、なかなか収拾がつかないんです。おそらく近い将来、また政府軍の大攻勢があったら、この人たちはかなりきびしい状況になりますね。

宇野 きびしい状況とは具体的には?

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