宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2020.09.09

アイドルプロデューサーは何をしているのか?|伊藤公法

NPO法人ZESDAによる、様々な分野のカタリスト(媒介者)たちが活躍する事例を元に、日本経済に新時代型のイノベーションを起こすための「プロデューサーシップ®」を提唱するシリーズ連載。第8回目は、アイドルプロデューサーの伊藤公法さんです。

プロデューサーシップのススメ
# 08 アイドルプロデューサーは何をしているのか?

 本連載では、イノベーションを引き起こす諸分野のカタリスト(媒介者)のタイプを、価値の流通経路のマネジメント手法に応じて、「inspire型」「introduce型」「produce型」の3類型に分けて解説しています。(詳しくは第1回「序論:プロデューサーシップを発揮するカタリストの3類型」をご参照ください。)
今回はカタリストの第3類型、すなわち、イノベーターに「コネ」や「チエ」を注ぐ座組を整える「produce型カタリスト」の事例の第2弾として、伊藤公法氏をご紹介します。

 プロデューサーという職能の起源は、アメリカの音楽業界に求められます。歌手や作曲家などの才能を見つけ出して、他のミュージシャンと組み合わせて、バンドにしたり、レーベルと交渉したり、ラジオで流してもらえるようにDJに営業したり。自らの持つコネ(人脈)やチエ(マーケットセンス等)を、才能に注いで、カネを稼げる形に整えていきます。企画ごと、プロジェクトごとに、オーダーメイドで、様々な自営業者たちを組み上げ、組み換えていくわけです。この業態・職能は、映画などの他のエンタメにも広がっていきました。NPO法人ZESDAは、このような柔軟性に富み、あらゆる垣根をまたいで多様性と創造性を操るビジネスパーソンが、より保守的で縦割りな組織や業界にも、どんどん増えていくよう様々な活動を行っています。

 日本でも、プロデューサーという単語は、やっぱりテレビ業界、芸能界を最初に連想しますよね。そこで、今回は、日本のアイドルのプロデューサーは何をしているのか、若手実力派アイドルプロデューサーの伊藤公法氏に、ズバリ、聞いてみました。

 伊藤プロデューサーは、自分の役割は「素材」となるアイドルを中心に組まれるスーパーチームを組み上げること、そして、チームメンバーがまとまる核となる「コンセプト」を創ることである、と規定します。

 座組みを組むという点では、伊藤プロデューサーは、東京のエンタメ業界内の必要な人材にかなりの程度アクセスできるチカラがある点で、地方において人材をかき集めることから始めなくてはならなかった桐山登士樹プロデューサー田辺孝二プロデューサーの事例よりは恵まれているかもしれません。しかし、優秀な人材を奪い合う競争が厳しい分、より魅力的なコンセプトを0→1で創る必要があります。伊藤プロデューサーは、自身の競争力の要となるコンセプトの創り方を、驚くほど気前よく、しかも非常に具体的に語ってくれました。

 表現するとはどういうことか、表現されるべきことは何か、時代の空気の捉え方、などなど、エンタメに限らず、あらゆるビジネスの企画職が明日から使える、珠玉のノウハウを一緒に学びたいと思います。(ZESDA)

アイドルプロデューサーという職能

伊藤公法と申します。職業はプロデューサーです。去年まで「夢みるアドレセンス」というソニーミュージックからデビューしていた女性アイドルグループをプロデュースしていました。今年からは、趣向を変えて「VOYZ BOY」という大人数の男性アイドルグループのプロデュースをやろうかなと思っています。今アイドルは男の子が面白いんですよ。これまではテレビが主戦場だった男性アイドルグループシーンに地殻変動が起きています。来年以降、カルチャーとしてますますおもしろくなる予感がしています。その地熱にのせて「VOYZ BOY」も、きっと皆さんの耳目に触れるような子たちになっていくんじゃないのかなと思いますので、ぜひ引き続き情報発信させてください。

さて、プロデュ―サーって何してるんだっけ?という話ですが、一言にプロデュースと言っても色々なレイヤーの話があると思っています。料理で例えれば、皿の上に乗っかる食べ物はコンテンツですよね。そのコンテンツを入れる器っていうのはメディアとか、イベント、ライブみたいなものだと思うんですよね。料理だけのレイヤーをプロデュースすることもあるだろうし、皿まで含めた料理、あるいはコース料理全体のレイヤーをプロデュースすることもあれば、さらにコース料理を提供する店舗のレイヤー、さらには店舗の運営、店舗チェーンの経営のレイヤーのプロデュースもあると思います。もっと視点を広げるならば、そもそも店をどこに開店するのかっていうことも大事です。さきほど述べたように、来年このカルチャーが熱くなるだろうから、ここにコンテンツを陣取っておこうというのは、「お店の立地」の話だったりすると思うんですね。プロデューサーという職能の正体が一見してよくわからないのは、一言にプロデューサーと言っても、それぞれのプロデューサーによって異なるレイヤーで、異なる職能を発揮しているせいかもしれません。

プロデューサーによって、得意なレイヤーは異なります。例えば、アイドルプロデューサーと言えば、皆さんがまず思い浮かべるのは秋元康さんだと思います。秋元康さんの名前を聞いて、皆さんが多分パッと思い浮かべるのは作詞家、つまり歌詞というお皿の上の料理そのものを作っているイメージがきっと強いんじゃないのかなと思います。でも実際には、レコード会社、メディア、広告代理店と向き合ってビジネス全体の指揮と設計をしている。それは料理だけではなく「お店の経営」とかそういうレイヤーの話だと思っています。

他にプロデューサーというと皆さんが思い浮かぶところで言うと、小室哲哉さんですよね。小室哲哉さんは絶対的に「料理」の人なんですよね。彼の作る料理の味に日本中が熱狂して、その味であればもうなんでもおいしい、そんな価値観で日本中の味覚を席巻した。今思えば、めちゃくちゃすごいことですよね……。小室さんには小室さんのレイヤーで、秋元さんには秋元さんのレイヤーでそれぞれ凄みがある。職能も違うけれど、それぞれプロデューサーと呼ばれています。

いろいろなレイヤーのプロデュース論がある中でも、今日は、お皿の上の料理=コンテンツの作り方の話をしようと思います。

食べログレビュアーには行列のできるつけ麺屋は作れない。

いろんな人に例え話で言っている話なんですけど、食べログで評価をつけて、つけ麺をレポしている人とか行列に並んでいる人とか、いっぱいいると思うんですけど、この人たちって、じゃあ明日、行列のできるつけ麺屋のつけ麺を作ってくださいって言われたら作れないと思うんですよ。どんなに美味しいつけ麺を食べたことがあっても、作れるようになるには、プロセスってものがありますよね。今日は、そのプロセスを因数分解して、お話しできればなと思っています。

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