『サイレントマジョリティー』――ポンコツ少女たちが演じきった硬派な世界観と、秋元康詞の巧みさ(藤川大祐×宇野常寛)(PLANETSアーカイブス) | PLANETS/第二次惑星開発委員会

宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2019.12.06
  • 藤川大祐

『サイレントマジョリティー』――ポンコツ少女たちが演じきった硬派な世界観と、秋元康詞の巧みさ(藤川大祐×宇野常寛)(PLANETSアーカイブス)

今朝のPLANETSアーカイブスは、欅坂46のデビューシングル『サイレントマジョリティー』をめぐる藤川大祐さんと宇野常寛の対談をお届けします。YouTubeでMVの再生回数1000万回を超えた同曲と欅坂46のすごさはどこにあるのかを語りました。(構成:増田 優 初出:サイゾー2016年6月号)
※本記事は2016年6月22日に配信された記事の再配信です

藤川 最初に欅坂46(以下、欅坂)の文脈的な位置づけを簡単に整理しておくと、まずAKB48の公式ライバルとして2011年に乃木坂46(以下、乃木坂)が誕生して、その流れを汲む新しいプロジェクトとして15年に生まれたのが欅坂です。オーディションの結果発表が乃木坂と同じ8月21日で(乃木坂は11年8月21日)、『乃木坂ってどこ?』と同様に『欅って、書けない?』【1】という冠番組がテレビ東京系の深夜で始まり、オーディション発表の翌春にCDデビューをし──と、乃木坂の足跡を追うように進んできている。そしてグループとしての基本的なフォーマットも乃木坂のそれに従っている。だから欅坂の話をする前に、乃木坂の話をしておきましょう。
 48グループと46グループのコンセプトの最大の違いは、構造なのか個人なのか、というところだと思います。48グループは私から見ると、構造、つまり仕組みが面白いんですね。一人ひとりのメンバーの能力というよりは、仕組みの中で各自ががんばる姿を見せている。乃木坂も最初はそうだったんですが、一方で「乃木坂らしさ」というのがずっとキーワードとしてあった。生駒(里奈)さんのAKB兼任【2】が終わった15年夏のライブの課題がまさに「乃木坂らしさとは何か?」で、そのあたりから明らかに48グループとは違う路線を探し始めた。そこで出てきたのが、一人ひとりのメンバーがもともと持っているものを活かす方向だった。仕掛けて面白くするのではなく、個性を活かすために楽曲をつくったりファッションモデルをやったり、という方向に転換したわけです。それが言ってみれば乃木坂フォーマットで、これを欅坂は引き継いでいる。
【1】『欅って、書けない?』放送/テレビ東京にて、15年10月~:MCに土田晃之・澤部佑(ハライチ)を迎え、欅坂メンバーがトークや企画に挑戦する冠番組。
【2】生駒さんのAKB兼任:乃木坂の1期生でありセンターの生駒は、14年の「AKB48グループ大組閣祭り」以降AKB48チームBと兼任で活動していた。15年5月で終了。
宇野 これを言うのは非常に勇気がいるけど、グループ単位で考えた時に、今乃木坂は女子アイドルの中で一番強いですよね。実質的な訴求力という点において、もちろん絶対量はAKBなんですけど、10周年を越えて今難しい時期にいるのに対して、乃木坂は量こそ劣るけれど勢いがすごい。1期生の中心メンバーは非常に脂が乗っていて、背後には逸材だらけの2期生が控えている。09~10年頃のAKBと同等か、それ以上の戦闘力があるんじゃないか。
 その理由のひとつが、程よい遠さだと思う。AKB以降のライブアイドルは基本的にファンとの近さと、エンゲージメントの巧みさを競うようになっていった。乃木坂はその中で、ユーザーとの距離を直接的に近づけてくれる握手会だけを残して、戦略的にメディアアイドルへの回帰を果たした。これだけライブアイドルがあふれている中で、真逆の打ち出し方をすることで非常に輝いて見えるようになった。しかもメディアといってもいわゆるテレビバラエティ的なものとも距離が離れていて、モデル的な、言ってしまうと“お嬢さん”的な距離感でやっている。その結果出てきたある種のコンサバ感もいい方向に作用していて、音楽や映像などの各種表現もコンセプチュアルにコントロールできていると思う。
 そしてその乃木坂の流れを受けた欅坂がどんな路線で出てくるのか、固唾を呑んで見守っていたら、デビュー曲「サイレントマジョリティー」で「こう来たか!」とかなり驚かされました。
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