宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2016.12.20
  • 吉崎航

invitation to MAKERS 第3回 V-Sido――ロボットの〈居場所〉をつくる アスラテック株式会社 吉崎航【不定期連載】

今朝のメルマガは「invitation to MAKERS」をお届けします。第3回は、アスラテック株式会社でチーフロボットクリエイターを務める吉崎航さんのインタビューです。
多彩なロボットを制御するソフトウェア「V-Sido」が開発された背景には、「ロボットが普通に存在する社会を作りたい」という吉崎さんのヴィジョンがあります。ロボティクスの最前線から考える、ロボット社会の未来像についてお話を伺いました。


『invitation to MAKERS 』、過去記事一覧はこちらのリンクから。
前回:invitation to MAKERS 第2回 Pyrenee Drive――ネットワークが運転を支援する 株式会社Pyrenee 三野龍太
 
▼プロフィール
吉崎航(よしざき・わたる)
ロボット制御システム「V-Sido」開発者。2009年、経産省所管のIPA(独立行政法人情報処理推進機構)が実施した「未踏IT人材発掘・育成事業」において「V-Sido」を発表。その成果により、特に優れた人材として経産省から「スーパークリエータ」に認定される。その後、水道橋重工の「クラタス」など数多くのロボット制御に携わり、2013年にアスラテック立ち上げに参画。2014年に安倍晋三首相主宰の有識者会議「ロボット革命実現会議」の委員として任命され、翌2015年からは「ロボット革命イニシアティブ協議会」の参与に選任される。
 
◎構成:長谷川リョー
 
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◼︎アイデアとロボットの間を仲介する技術「V-Sido」
 
――吉崎さんが開発された「V-Sido」についてですが、これはロボットを操作するためのOSという理解でよいのでしょうか?
 
吉崎 簡単にいえば、ロボットの制御部分についての技術と理解していただくとわかりやすいと思います。アイデアをロボットで実現するための仲介機能としてのソフトウェアを提供するのが「V-Sido」です。
私たちは基本的に、自社のロボットは持ちませんし、ロボット本体の製造もしていません。ロボットというと、災害救助や老人介護や家事といった、人間がやりたくないことを何でもやってくれる存在を夢想しがちですが、研究所で何億円もかけて人型ロボットの開発を進める方法では、そういった現場で使えるような実用的なロボットはつくりにくいところもあります。そこで、災害救助なら救助用の器具、介護なら介護用の器具を作られている企業さんがロボットの企画を立てて、それを私たちがお手伝いするという形であれば、お互いのよいところを引き出せるのではないかと考えています。たとえば、車椅子を作っているメーカーでは、ロボットの腕や指の機能だけが必要になるかもしれない。そういったニーズをいかにソフトウェア的な面からサポートできるか、ということをやっています。そのために開発されたのが「V-Sido」なので、具体的にどの技術という話ではなく、さまざまなアイデアをロボットで実現するための仲介機能、もうちょっと狭い意味で言うとロボットの制御部分に関するソフトウェアを提供しています。
 
――「V-Sido」の従来のロボット制御とは違う、新しい部分はどのあたりになるのでしょう。
 
吉崎 従来のロボット、特にホビー系のロボットの操作は、あらかじめ動きをプログラミングしておいて、それをボタンで呼び出す方式が一般的です。しかし、このやり方ではリアルタイム性に欠けます。私たちの技術であれば、直感的な操作によって、その場でロボットを好きな姿勢に動かすことができます。操作方法はさまざまで、ジョイスティック、ゲームパッド、Kinectなど、あらゆるインタフェースで動かすことが可能です。
 
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▲V-Sido x Songle
 

https://www.youtube.com/watch?v=sw8qGIvjPXQ
 
これは、国立研究開発法人産業技術総合研究所の「Songle」という音楽解析技術と「V-Sido」を連携させて、音楽に合わせてロボットがダンスするようにしたものです。動画を見てもらえれば分かりますが、大きさもデザインも異なる三種類のロボットが同時に踊っています。それぞれ違うメーカーの別々のロボットであるにもかかわらず、仲介機能に互換性を持たせることで、まったく同じように動かすことができます。イメージとしては、人間の小脳や脊髄にあたる部分を我々が制作し、そこにメーカーさんのサーボモーターや油圧・空圧といったアクチュエーターを動かすためのノウハウを加える。そのシステム全体を総称して「V-Sido」と呼んでいます。
 
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J-deite Quarter
 
これは、「J-deite Quarter」という、歩行したり車に変形したりして走行できるロボットで、全長は1.3メートルあります。これと同じような歩行や変形ができるロボットで、これよりもはるかに小さい全長20センチの小型ロボットも、商品化に向けてタカラトミーさんと試作を行っていますし、3.5メートルの2人乗りのロボットを作るという話も進んでいます。
「V-Sido」の大きな特徴として、サイズがまったく異なるロボットを、同じソフトウェアで動かすことができる点が挙げられます。本来、小さいロボットと大きなロボットで完全な互換性を実現するのは非常に難しい。サイズによって駆動に使われる部品が違うので、それに合わせた調整が必要になるのですが、そのためのノウハウはかなり蓄積されています。私はこれを「ロボット同士の架け橋」という言い方をしていますが、その最適解を見つけるための施策のお手伝いを、さまざまなメーカーさんとやらせてもらっています。
 
◼︎現実世界のロボットが「人型」であるべき理由
 
――吉崎さんがロボットの製作に興味を持ったのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか?
 
吉崎 ロボットアニメの影響が大きいですね。私は1985年生まれなのですが、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988年)や『機動戦士ガンダムF91』(1991年)のあたりからガンダムにハマって、最初に作ったプラモデルもF91でした。同時期の『機動警察パトレイバー』(1989年)も大好きでしたね。
中学生の頃から、ノートにロボットの絵を描いていて、「全長4メートルなら実現できるか?」「エンジンの出力で可能か?」「歩いていると仮定したときの無次元速度はどれくらいか?」とか、そんなことばかり考えていました。現在V-Sidoで使われている技術や考え方も、このときのアイデアから来ているものが少なくありません。

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