近藤那央 『ネオアニマ』 第2回 都市生活における「ネオアニマ」 | PLANETS/第二次惑星開発委員会

宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2019.05.22
  • 近藤那央

近藤那央 『ネオアニマ』 第2回 都市生活における「ネオアニマ」

ロボットクリエイター・近藤那央さんの連載「ネオアニマ」。第2回目の今回は、近藤さんが手がけるコミュニケーションロボット「ネオアニマ」が目指す、未来の生物のかたちについて、都市生活における人間と生き物の関係から考察します。

未来都市に「ネオアニマ」が必要な理由

今回は私が手がけているコミュニケーションロボット「ネオアニマ」と、私たちのこれからの都市生活について考えてみたいと思います。

この連載を読んでいるひとのほとんどが都市と呼ばれる空間に住んでいると思います。 現代の都市生活においては、たとえば野良猫とか野良リスといった動物を見かけることもあります。都市の野生動物は基本的にはコミュニケーション取れる相手ではありません。最悪の場合は感染症を媒介する存在ですらあります。

一方で、人間はこうした動物の存在を求めているとも言えます。例えば都市での日常生活の中では、人懐っこい野良猫たちがアパートの駐車場に居着き、住民の癒しの存在になることもあります。あるいは、小鳥が巣を作りやすいように巣箱を置いたり、ツバメの巣が攻撃されないように保護したり……といった話は春先によく聞きます。

こうした行為から読み取れることは、人間は自らの生活環境に、自分たちとまったく違う多様な存在が自立して生活し、固有の社会を形成していることに深い興味を抱き、かつそれらとポジティブなコミュニケーションを取れることを期待しているのではないか、ということです。このような関係は、人間の所有物として人間に頼りきった生活を送ることで“人間ナイズ”された動物になっているペットとの関係とは、根本的に違うものなのです。

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さらに、人間がペットではない動物を古くから求めていたことは、寓話や絵本、小説、映画、アニメなどから読み解くことができます。例えばグリム童話では狼や羊、豚などが擬人化されて主人公として登場したり、人間と対等な存在として描かれています。さらに、妖精や小人といった現実には存在しない生物が、物語の中でキーとなる場合も少なくありません。日本の昔話でも同様で、鶴や猫、亀といった動物と対等にコミュニケーションを取っていたり、カッパや座敷わらしなどの空想の生物である妖怪が人々の生活の中に入り込んでいる様子が数多く描かれています。

また、一見ペットのような存在として描かれながらも、現実のペットと比べるとむしろ野生に近い生活が描かれている現代の作品もあります。例えばポケモンの場合は、現実世界の動物のように野生に生息している個体を捕まえてきて、個人の所有するペットのように扱います。しかし、その生活をよく見てみると、人間と対等にコミュニケーションを取っていたり、都市の中でポケモンが高度な仕事をしていたり、はたまた種類の違うポケモン同士が組織を構築していたりします。アニメ『とっとこハム太郎』や映画『ペット』で描かれているペットたちの場合は、人間の前では従順なペットを演じつつ、実は仲間のペットと高度な社会を形成しているという設定で描かれています。

こうしたところから、私たち人間はペットのような存在には飽き足らず、野生的で時には高度な社会を形成し、それでいて自分たちの脅威にはならないような、好意的で意思疎通のできる存在を求めているのではないかと思うのです。実際、私は小さい頃からこういった物語にたくさん接してきた結果、物語の中の人間たちが様々な動物や空想の生物たちと関わり合って生きている社会に強く憧れを抱いたことが、現在の活動に繋がっています。

ペットでも、野生動物でもない生き物

さて、20世紀以降、人とロボットがコミュニケーションを取り合い共生する世界が、さまざまなフィクションで描かれてきました。中でも、家庭内で人間とコミュニケーションを取ることができるロボットは、「ペットロボット」「コンパニオンロボット」などという名前で、すでに市場に出ているものもあります。しかし、私たちの生活の中にコミュニケーションロボットが浸透する未来はまだ描かれていません。

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