草野絵美 ニューレトロフューチャー  第5回 サンゴの共生から未来の人間を考える | PLANETS/第二次惑星開発委員会

宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2020.05.14

草野絵美 ニューレトロフューチャー  第5回 サンゴの共生から未来の人間を考える

今日のメルマガは、アーティスト・草野絵美さんによる連載「ニューレトロフューチャー」の第5回をお届けします。コロナウイルスの感染拡大を受けて、近年の地球の環境変化と、自らの作品へのアプローチについて改めて考えた草野さん。サンゴ礁と生物の共生関係から着想を得て、環境変化に適応する新たな人間の形を模索します。

過酷な時こそ地球に思いを馳せる。

みなさん、お元気にしていますでしょうか。この2ヶ月間で、世界中は新型コロナウィルス(COVID-19)で一色、未だに収束の目処も立っておらず、不安になっている方も多いかと思います。言うまでもなく私もそのうちの一人です。ニュースを見ていても、まるでありきたりなSF映画を見ているような気分です。そんな非日常が日常と化していることに恐れ慄きつつ、もしかすると、これは地球が私達に与えた試練なのでは? という気持ちさえ浮かんできました。

今回のアウトブレイクによって、世界の工場である中国の経済は停滞、更には世界中の外出禁止および国境封鎖処置によって、航空燃料の消費は減少し、交通量も激減しています。これは近年まれに見るほどの、CO2排出減につながっています。なんとも皮肉な話ですが、地球にとって一番優しい状態は、経済停滞であるということが証明されてしまったのです。もちろん、そのような単純な話ではありません、長期的に見れば、不景気によって政府や企業機関が、気候変動に取り組むための予算を工面できなくなるという恐れがあるとも専門家の間では警告されているそうです。

私からの提案は、このような大変なときこそ、美しい地球へ思いを馳せ、人類史上主義から脱却することを考える時期なのではということです。

正直に申し上げますと、私の価値観はここ数年で大きく変化しています。この連載を始めたちょうど1年前は、ソーシャルメディアを通して見えるテクノロジーへの違和感を取り上げ、大掛かりなアート作品を作ることによって、アイロニーを提示したいと考えていました。しかし、いくつかのアート作品を手掛けていくうちに、批判するだけではなく人類の築き上げた文化やテクノロジーのもうすこしポジティブな面に目を向けながら、社会実装できる作品は作れないものかと考えるようになりました。もちろん、これからも個人的な思いが発端で作品化するというプロセスは自体は変わりませんが、一表現者として、なにかできることはないかと使命感が芽生え始めたのです。

環境に適応する人間エンハンスメント

思えば、このたった数年間を振り返っただけでも地球は多くの自然災害に見舞われて来ました。暑すぎる夏に加えて、季節外れの牡丹雪、大雨や嵐、オーストラリア全土での大規模火災も記憶に新しいことでしょう。これらの災いは、人類が自分たちだけのために地球を住みやすく形を変えてしまった代償とも言えます。さて、その人類でさえも地球が住みづらくなってしまったら、どうすればよいのでしょうか? 現時点で、私たちがとるべき行動に関するアイデアは、いくつか議論されています。火星など他の惑星に移り住む計画や、地底や海底都市の建設、また人類があらゆる環境に適応するための遺伝子組み換えなども多くの専門家、またはアーティストの間でも題材にされています。

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