手品とナンパと新聞購読|高佐一慈 | PLANETS/第二次惑星開発委員会

宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

Serial

  • 2021.12.02

手品とナンパと新聞購読|高佐一慈

お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載「誰にでもできる簡単なエッセイ」。
今回は、じつは高佐さんの特技でもある「手品」について。手品には、人の気持ちをあっさり変えてしまう魔力が潜んでいるんだとか……。

高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ
第24回 手品とナンパと新聞購読

子供の頃から手品が好きだった。
最初に手品に触れたのは、小学生の時だったと思う。クラスメートの男子が輪ゴムを親指と小指に引っ掛け、一度拳を握り、パッと開くと人差し指・中指・薬指へと移動しているというものだった。タネを聞くと、なーんだそんなことかと思うようなものだったが、最初に見せられた時は本当にびっくりした。
それを家に帰って、妹に見せる。妹も僕と同じように「えぇーなんでー!?」とびっくりした。
人を驚かせることが面白くて、そこからどんどんのめり込むようになり、図書館で手品の本を借りてきては、新しい知識を仕入れ、親戚の集まりなんかがあると、いとこ相手に見せたりもしていた。
人を驚かせたり、喜ばせたり、怖がらせたりすることに楽しさを感じる僕のルーツは、もしかすると手品にあるのかもしれない。
一人で黙々と練習するのが好きな性分も相まって、大人になった今でも、ふと思い立った時に部屋で一人、誰に見せるわけでもなく、コインを消したりしている。気づいたら時間が過ぎ去っていて、一体俺は何をやっていたんだろうと不安になったりすることもしばしばだ。
最近ではコント中に披露することもある。
ある日、舞台でちょっとしたトランプマジックをした。それは、お客さんの言ったカードを当てるといったものだ。
トランプがケースに入ったままの状態で、お客さんに好きな数字とマークを言ってもらう。例えば「スペードの3」とお客さんが言ったとしたら、そこでケースからトランプを取り出し、扇型に広げる。すると一枚だけカードが裏返しになっている。それを引いてもらうと、なんとそのカードこそが「スペードの3」という手品だ。ちなみに「ダイヤのQ」と言われればダイヤのQ、「ハートの7」と言われればハートの7が裏返しになって出てくる。お客さんからも「えーーーっ!」と声が上がった。
舞台終了後、見に来ていた知り合いの男性が、「あれ凄かったですねー!」と目を輝かせながら話しかけてきた。そしてタネを教えてくれ、タネを教えてくれと執拗にせがんだ。あまりにもしつこかったのと、訴えかける彼の目の真剣さに、僕はついに教えてしまった。彼は目をキラキラさせながら、「ありがとうございます! 早速トランプ買ってきます!」と言い、その足で百貨店に向かっていった。
後日、その男性から「高佐さん、マジであの手品すごいですね! 本当にありがとうございました!」と感謝された。
聞くと、ナンパした女性にその手品を披露したことで、見事ワンナイトラブに持ち込めたというのである。
僕は複雑な気持ちになった。

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