前田裕二 仮想ライブ文化創造試論 ー“n”中心の体験設計ー 第3回 パブリックとプライベートの“中間”にある欲望 | PLANETS/第二次惑星開発委員会

宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2019.03.28
  • 前田裕二

前田裕二 仮想ライブ文化創造試論 ー“n”中心の体験設計ー 第3回 パブリックとプライベートの“中間”にある欲望

SHOWROOMを率いる前田裕二さんの連載「仮想ライブ文化創造試論 ―“n”中心の体験設計―」。第3回では、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)にはないアジア的発想から生まれたSHOWROOMを、パブリックとプライベートの中間に位置するメディアであるとし、その具体的戦略として「半匿名性」と「半UGC」を挙げながら、アジア的プラットフォームの先にある新しい文化の可能性を探ります。(構成:長谷川リョー)

2つの形態で発現する“自分の物語”時代の欲望

宇野  インターネット以降、すべての動的なコンテンツは他人が作ったものを受信するよりも、自らが発信者の一部となって自分の物語にする方が快楽が大きいのは間違いない。とはいえ、そうした自分の物語時代の形態が、本来分散的であるはずのインターネットに擬似的な中心を与える、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)的なプラットフォームを経由し続けるかどうかには疑問がある。

WWW(World Wide Web)的なものとP2P(Peer to Peer)的なものの形態を考えると、ブロックチェーン技術の可能性も含めて、後者の存在感が大きくなっていく気がします。iモードからLINEに至る流れを振り返っても、中心を経由せずにローカルな仲間だけで数珠的につながっていく快楽が相対的に大きくなっているのは揺るがない。つまり、21世紀初頭の巨大なプラットフォームの形から〈自分の物語〉の行く末を議論すると、射程が狭くなってしまう可能性がある。

前田 その通りだと思います。今までは〈他人の物語〉をベースとしたコンテンツを人々が一方通行的に享受する社会観のなかで、その完成された他者の物語を提供する何らかの「中心」を経由することを前提に、文化が形成されてきた。その世界においては、当然、オーディエンスはオーディエンスであるから、「受信すること」が所与になっていた。でも、その人たちが、「発信側に回る」快楽にひとたび気づけば、もはや中心を経由したり、中心から他人の物語を発信してもらってそれを単に受信することだけでは、満足しなくなる可能性がある。そうやって、もっとP2P的なコミュニケーションが広がっていく未来は、確かに見えてきますね。

宇野 今後、〈自分の物語〉の快楽がどう拡大していくかを考える上で、二つの流れを分けておきたい。まずは21世紀初頭のGAFA的なプラットフォームの思想。擬似的な中心を経由させることで、重要な情報を峻別させ、本来は分散的であるインターネットを集権的に使うようにした。

もう一つは、ショートメールから現在のインスタントメッセンジャーにつながっていく、P2P的な文化。これは、スマホが登場するまでは、日本でiモードが優位に立っていたジャンルだと思う。つまり、我々が必要としているのは友達との簡単な連絡方法と仲間内でのグループチャットだけで、パブリックな場所なんて別に期待していない。

二つの潮流はともに「〈自分の物語〉時代の欲望」ではあっても、パブリックな場所に自分を表現したい欲望と、より仲間内のプライベートにこもっていく欲望は異なる。前田裕二という起業家が、こうした現状をどう捉えているか。ここから議論を始めたい。

 

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