トランスフォーマー(7)自動車の挫折と動物の台頭|池田明季哉 | PLANETS/第二次惑星開発委員会

宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2022.01.17

トランスフォーマー(7)自動車の挫折と動物の台頭|池田明季哉

デザイナー/ライター/小説家の池田明季哉さんによる連載『“kakkoii”の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝』。玩具としての「トランスフォーマー」シリーズのプロダクト展開から、引きつづき時代の意志の変遷を読み解きます。
自動車などの工業製品がヒーローロボットに変形する点が特徴だった「トランスフォーマー」の歴史を塗り替える存在として、1990年代後半に登場した「ビーストウォーズ」。ゴリラなどの動物から変形するというコンセプトの裏には、どんな精神性が読み取れるのか?

池田明季哉 “kakkoii”の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝
トランスフォーマー(7) 自動車の挫折と動物の台頭

前回は合体戦士からヘッドマスターズまでの流れを分析したが、その後のトランスフォーマーの展開もまた、多様である。
ヘッドマスターと同様のミニフィギュアがエンジン(状のデバイス)に変形して本体に合体する「パワーマスター」、人間や動物を模した外装の中にロボットを収めた奇抜なコンセプトの「プリテンダー」、非変形のフィギュアが武装したりビークルに乗り込む遊びを提案した「アクションマスター」、小型のトランスフォーマーによる基地遊びを前面に押し出した「マイクロマスター」──他にもさまざまなカテゴリがあるが、ここでは多くの試みによって、遊びの幅が実に野心的に開拓されていったことを理解しておくに留めたい。
平行して、日本独自の展開としてアニメーション作品『トランスフォーマー 超神マスターフォース』(1988)『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマーV』(1989)が制作されており、これは後に『勇者エクスカイザー』(1990年)をはじめとする「勇者」シリーズに繋がっていくのだが、こちらの流れについては、「勇者」シリーズの流れと関連して後述しよう。
アメリカにおいては1990年でいったんトランスフォーマーの展開は終了しており、1985年の展開スタートからここまでを便宜上「ジェネレーション1(G1)」と呼ぶことが多い。そしてこのG1に続いて1993年から1995年にかけて展開したのが「ジェネレーション2(G2)」と呼ばれるラインだった。G2は、「フリーポーザブル」と呼ばれるロボット形態の関節稼働や、さまざまな新しいギミックが搭載された傑作シリーズとして人気を博した。

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▲G2最後期の傑作「バトルコンボイ」。ライト点灯やミサイルの発射などさまざまなギミックを搭載しつつ、優れたプロポーションと関節可動を持つ。
『トランスフォーマージェネレーション デラックス ザ・リバース:35周年記念バージョン』 (メディアボーイMOOK、2019) p85

フリーポーザブル仕様を投入した変形ロボットであるG2のトランスフォーマーたちは、おもちゃの進歩の歴史としてはたいへん重要な存在である。自由に関節が動くということが遊びの想像力にどのような影響を与えたかも興味深いところではあるが、モチーフのレベルではむしろマシン―ロボットというトランスフォーマー初期のコンセプトに立ち返ったと考えることもできる。そのためここではその存在に触れるに留め、次の展開に論を進めていきたい。
その展開とは、1996年よりスタートした『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』だ。

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▲「ビーストウォーズ」wave1として発売されたコンボイ(Optimus Primal)。ゴリラからロボットへ変形する。丸みを帯びたシルエットと毛並みのディティールが、それまでのトランスフォーマーとはまったく異なる。写真は2021年発売の復刻版。(出典

フロンティアのG1、冷戦のG2

このシリーズは、ふたつの点で画期的である。ひとつは、これまでのようなマシンではなく、生の動物がロボットに変形すること。もうひとつは、フル3DCGで制作されたアニメーションで物語が展開されたことだ。

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