『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』第2回 オーガナイズドゲームと消極性デザイン(簗瀨洋平・消極性研究会 SIGSHY) | PLANETS/第二次惑星開発委員会

宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2018.05.23
  • 簗瀨洋平

『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』第2回 オーガナイズドゲームと消極性デザイン(簗瀨洋平・消極性研究会 SIGSHY)

消極性研究会(SIGSHY)の連載『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』、今回は研究者・ゲームデザイナの簗瀨洋平さんの登場です。ゲーム開発を始めとした様々な分野で使用されているソフトウェア「Unity」に、エヴァンジェリストとして関わる簗瀨さんは、シンポジウムで参加者全員が遊ぶオーガナイズドゲームを実施しています。コミュニケーションの活性化に成功しつつありますが、「消極性デザイン」の観点からは、まだ課題も残っていると言います。

エヴァンジェリストという仕事

第一回で「モチベーション・やる気に関する消極性デザイン」として紹介されました簗瀨です。研究者、そしてゲームデザイナという肩書きで活動しています。

私は子供の頃からコンピューターゲームが大好きだったのですが、ファミコンを買ってもらえない家庭に育ちました。しかしパソコンを触る事は許されていたので、中高は部活でゲーム作りに励み、大学時代からゲーム会社でアルバイトをし、そのままゲーム開発会社に就職して17年間ゲーム開発に携わってきました。
代表的なプロジェクトは「ワンダと巨象」「魔人と失われた王国」などです。

https://www.youtube.com/watch?v=iizuEKdBvAw
▲『魔人と失われた王国』

私のゲーム開発のキャリアは大学で学んだ情報工学や人間工学の知見によって成り立っています。ゲームは多くの要素が詰め込まれた総合芸術とも言える分野だと思っていますが、それをプレイするのはほとんどの場合人間なので、人間を深く知る事はゲーム開発をしていくうえで有利な事がたくさんあります。そうやって長年学術の恩恵を受けてきた私は、ゲーム開発者として現役の研究者の方々と交流を深めていくうちに、ゲーム開発の現場から学術の世界に知見を届ける事もできるのだということを知りました。
そこで長年ゲームデザイナとして培ってきた知見を元に研究発表を行う様になったのが2012年です。
現在はユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社に所属し、大学で教えたり様々な講演会、学会などで講演したり、論文を発表したりという学術系の活動をしています。

私の会社が世に送り出しているUnityとはもともとゲーム開発に使われるソフトウェアでした。2018年5月現在、スマートフォンのゲームの50%はUnity、Nintendo Switchのゲームの30%がUnityで作られていると言われています。他にもPlaystation 4、XBOX Oneなどのハイエンド機やPlaystation VitaやNintendo 3DSなどの携帯機など多くのゲーム開発に利用されています。

しかし、Unityの用途はゲーム開発だけではありません。先ほど書いた様にゲームとは多くの要素が詰め込まれた総合芸術のようなコンテンツとなっています。言い換えれば、ゲームを作れるツールはゲーム以外の様々な分野でも活躍出来るわけです。
いま世界的に普及しつつあるバーチャルリアリティの世界では非常に多くの方がUnityを使っており、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)のOcurus Riftでは69%、HTC Viveでは74%、Gear VRでは87%、Microsoft HoloLensの91%のアプリケーションでUnityが使われています。
他にも例えば現実感の高い映像をリアルタイムに描画する技術を使えば、映像作品を効率的に制作する事ができます。UnityでもAdamという一連のショートフィルムをリリースしていますが、ただのデモ映像という事には留まらず、様々なフィルムフェスティバルで賞を取ったり、「第9地区」「チャッピー」などで知られるニール・ブロムカンプ監督が続編の監督をすることになったりと大きな反響を呼んでいます。

 Adam
https://unity3d.com/jp/pages/adam

国内でも「魔法使いプリキュア」のエンディング映像や「正解するカド」に出て来るカドと呼ばれるフラクタル(シンプルな数式から生成される繰り返しパターンの図形)立体を描画するなど映像用途での利用も広がっています。

アートの世界ではデジタルアートで多くの作品を生み出すテクノロジスト集団チームラボが「Story of the Forest」などを始めとした様々な作品にUnityを利用していますし、「デザインあ」などで知られる映像作家の中村勇吾さんもUnityを使って「GUNTAI」などの作品をスマートフォン向けにリリースし、現在は「HUMANITY」という作品を手がけられています。

https://www.youtube.com/watch?v=OMv92DpcgfI
▲『Story of the Forest』

https://www.youtube.com/watch?v=5punGM36VFo
▲『GUNTAI』

https://vimeo.com/245474974
▲『HUMANITY』

また、こうした表現という世界だけでなく建築や自動車、家電など工業の世界でも製品を動かすインタフェースや製品を開発するためのシミュレーション、プレゼンテーションのための映像作りや教育のためのアプリケーション作成など広い用途で様々な企業がUnityを使って社内外にあらゆるソフトやサービスを送り出しているのです。

医療の世界では東京大学医学部脳神経外科で実際にメスを握って脳神経手術の執刀をされている金太一先生が自らUnityや3Dグラフィック制作のためのソフトウェアを修得し、実際に手術に使っている様子を講演で話されたのが話題になっています。

多くの用途、様々なジャンル、個人から大きな企業までと社会の広い範囲で使われる開発環境、それがUnityです。

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