長谷川リョー『考えるを考える』 第8回 研究的実践者・安斎勇樹「問いのデザイン」が照射する思考法
編集者・ライターの僕・長谷川リョーが(ある情報を持っている)専門家ではなく深く思考をしている人々に話を伺っていくシリーズ『考えるを考える』。前回はTakramのデザインエンジニア・緒方壽人さんに“越境性×専門性”の仕事論を聞きました。今回は東大の情報学環特任助教で、株式会社ミミクリデザインの代表を務める安斎勇樹さんにお話を伺います。二足の草鞋を履いて活動する自らを“研究的実践者”と表現する安斎さん。ワークショップデザイン、ファシリテーション、メタ思考などを幅広く辿りつつ、「問いのデザイン」が照射する思考法や可能性に迫っていきます。
“研究的実践者”として、東大助教とミミクリデザイン代表の二つの顔を持つ
長谷川 安斎さんは東大の助教を務めつつ、会社経営もなされていますよね。簡単に現在の活動の全体像をお伺いしてもよろしいでしょうか?
安斎 大きく二つの顔があります。一つは東京大学の助教として研究を行う顔で、もう一つは株式会社ミミクリデザインという会社の経営を行う顔。研究も大学の業務があるというよりも、企業との産学連携プロジェクトの推進が主になっています。基本的には企業が抱えているリソースや課題に対し、研究者として共同研究を行うか、ミミクリデザインとして課題解決のお手伝いをするか、いずれかの形ですね。
長谷川 生活のなかで自分個人のリソースの振り分けといいますか、二つの顔は具体的にどうやって分けているのですか?
安斎 実際のところ、僕の内部では入り混じっています。企業の課題解決、商品開発、人材育成をミミクリデザインでお手伝いする過程で、研究の種が見つかることが少なくありません。研究者モードのときには、その種を論文化するにはどうすればいいか、どんな理論と結びつけて現象を読み解くか、いかにデータを取れば良いかを考えます。
一方、社会の大きなフィールドのなかで実践者として課題解決するモードでは、いかに社会価値を生み出し、売上に繋げるかを考える。こうしたモードの変化、課題解決と論文化を往復しながら過ごしているので、両者がパッキリと分かれることはありませんね。
長谷川 改めて、アカデミズムにポジションを置いておくことの意味や意義はどんなところにあるとお考えですか?
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