宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

Serial

  • 2015.07.31
  • 井上敏樹

脚本家・井上敏樹書き下ろしエッセイ『男と×××』第11回「男と酒3」

今朝のメルマガは平成仮面ライダーシリーズでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』第11回です。今回も「男と酒」をテーマに語ります! 敏樹先生が人生で二度だけ出会った「この世のものとは思えない、とても美しい目」とは――?


井上敏樹エッセイ連載『男と×××』これまでの連載一覧はこちらから。
 

男 と 酒  3
                                                              井上敏樹

 私はその目に二度出会った事がある。
 こんな風に書くとなにやら大仰な出だしだが私にとってそれは大変印象的な出来事だった。誰でも人生においてハッとするような出会いを経験した事があるだろう。それも偶然の出会いである。たとえば電車に乗ったら隣にもの凄い美人が座った、或いは街角で擦れ違った男の顔が忘れられず後で手配中の殺人者に酷似していたと判明する、そんな出会いだ。それは進展する事のない刹那的な出会いだが、なぜかふとした瞬間に繰り返し心の底から浮かび上がる。浮かび上がったらそれで終わりだ。少々の感情の揺らぎはもたらすかもしれないが人生に影響を与えるわけでもない。
 それが私にとって目なのである。とても美しい目なのである。美しい目などというのは表現として恥ずかしい。だが、それを躊躇いなく書けるような美しい目なのだ。そしてその目を作ったのはまず間違いなく酒であった。なぜならその目の持ち主はふたりともアル中だったからだ。

 最初の出会いは私が釣りに凝っていた頃だったから学生時代だった。私は友達と釣りに行く事になり朝早く起きて駅に向かった。釣りと言えば早起きが常識である。それも本気の釣り人なら夜が明けるか明けないかの頃に行動を始める。友達との待ち合わせまでまだ時間があったので私は駅前の牛丼屋で朝飯を食べた。通勤の人影はまだまばらで街は静かである。客は私ひとりだった。

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