宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2020.06.30
  • 井上敏樹

男と食 27 | 井上敏樹

平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。今回は、子供の頃に憧れた高級品・マスクメロンについての話題から、中学生の頃の思い出が蘇ります。友人たちと遊びに行った群馬県の親戚の家に滞在中、地元の女の子たちに目をつけられた敏樹先生。彼女たちとの微笑ましいエピソードとは?

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脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第56回
男 と 食  27                          井上敏樹

以前、鮨屋のカウンターで思い切り食べるのが子供の頃の夢だった、と書いた。実は鮨の他にもうひとつ、同じような思いを抱いていた食材がある。メロンである。子供の頃、メロンと言えばプリンスメロンで、マスクメロンは滅多にお目にかかれない高級品であった。子供の舌にも、両者の味の差は歴然としていた。プリンスメロンはなにやら青臭くて苦みがある。マスクメロンに比べて格が低い。外見的にもプリンスの方はつるんとしていて愛想がないが、マスクメロンは複雑な筋が入っていて見飽きない。味にしても見てくれにしても、両者の差は明らかである。あ〜、マスクメロンを腹一杯食いたい、子供の頃の私は何度そう思ったか分からない。そこで、大学生になり、原稿料を貰うようになって実行した。店で売っていた一番高いマスクメロンを買い、夜ひそかにひとりで食ったのである。この、『ひとりひそかに』というのはとても重要なポイントで、間違っても家族や友人にふるまってはならない。ひとりでこそこそやるからうまいのだ。エロ本と同じだ。メロンを真っ二つに切る。種を掻き出す。そうしてスプーンで貪り食った。一気である。果汁がぼとぼとと胸に滴る。食べ終わった瞬間、ベッドに横になり『あ〜、食った〜』と叫んだ。とは言え、この頃の私は概ね甘味は卒業しており、メロンに執着があったわけではない。ただ、子供の頃のささやかな夢を叶えたかっただけだ。さて、メロンと言えば例によって私には忘れられない思い出がある。以前、群馬県は大滝村の親戚の家でサンショウウオを飲んだ話を書いたが、私にはもう一軒、大滝村の手前、万場町というところに親戚がある。

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