吉田尚記×宇野常寛『新しい地図の見つけ方』第4回 新時代の衣食住(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」)
普段からアウトドアウェアを身に付けることが多いという2人。スーツとネクタイや、満員電車での通勤に象徴される「20世紀までの男性中心企業の中で育ってきた文化」に対して、新しいホワイトカラー層に支持されている衣食住のスタイルとは? (初出:「ダ・ヴィンチ」2016年4月号(KADOKAWA/メディアファクトリー))
▼対談者プロフィール
吉田尚記(よしだ・ひさのり)
1975年12月12日東京・銀座生まれ。ニッポン放送アナウンサー。2012年、『ミュ〜コミ+プラス』(毎週月〜木曜24時00分〜24時53分)のパーソナリティとして、第49回ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞受賞。「マンガ大賞」発起人。著書『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』(太田出版)が累計12万部を超えるベストセラーに。マンガ、アニメ、アイドル、落語やSNSに関してのオーソリティとして各方面で幅広く活動し、年間100本近くのアニメイベントの司会を担当している。自身がアイコンとなったカルチャー情報サイト「yoppy」も展開中(http://www.yoppy.tokyo/)。
◎取材・文:臺代裕夢
吉田 いま、面白いことがあったんですよ。ここ(KADOKAWA)の受付に行ったら、なにも聞かれずに『メール室へどうぞ』って言われて。なんのことかと思ったんですけど、多分メッセンジャーの人と間違えられたんでしょうね。そりゃあアウトドアジャケット着て、メッセンジャーバッグみたいな形のバッグ肩にかけて、おまけに自転車で乗りつけたら、誰も対談のゲストとして呼ばれている人だとは思わない(笑)。僕は人をにやにやさせるのが大好きなので、ちょっと痛快でした。
宇野 僕も普段はスポーツウエアとかアウトドアウエアを着ていることが多い。単純にかっこいいし、それにあの無駄に高いスペックが好きなわけ。オタクってけっこうスペック厨だったり、ゲームとしてのライフハックが好きだったりするじゃない。そういう感覚と親和性が高いんだよね。
吉田 確かに。スーツ着てネクタイ締めてる人とか、コスプレかと思いますもんね。
宇野 あれって要するに「暗黙のルールをしっかり学んで、一定の様式の服装を揃えて着こなせる」ということが「ちゃんとした人」の証明になっていた時代の遺物なわけ。けれど、これだけ身元照会や仕事実績の確認がかんたんな時代に、その意味はほとんどなくなっていると思うよ。
吉田 わざわざ非効率的な服を着るのって、極端に言えばステージ衣装みたいに「人に見られるためのもの」か、単純に「スーツ萌え」みたいな場合にしか意味を持たないと思うんですよ。いまスーツを着ている人たちは前者の意味合いが強いんでしょうけど、ビジネスシーンでも半袖こそがフォーマルとされる国だってあるわけじゃないですか。いちばん効率的な服がいちばんフォーマルなものでなにが悪いのかと。それが共通認識になれば、衣装的にスーツを着る必要はなくなると思うんですけどね。