京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録 第21回 テレビ文化へのカウンターとしての角川三人娘 | PLANETS/第二次惑星開発委員会

宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2017.06.08
  • 宇野常寛

京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録 第21回 テレビ文化へのカウンターとしての角川三人娘

本誌編集長・宇野常寛による連載『京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録』。今回は、80年代アイドルブームのもうひとつの側面を語ります。テレビではなく映画を主戦場とした「角川三人娘」が日本アイドル史に与えたインパクトとは?(この原稿は、京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部 2016年7月8日の講義を再構成したものです)

斉藤由貴、南野陽子、浅香唯を輩出した『スケバン刑事』

 アイドルブームと80年代の空気感をもう少し味わってみてほしいので、この映像を観てみましょう。
 
(『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』映像上映開始)
 
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▲スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説 VOL.1 [DVD] 南野陽子 (出演), 相楽ハル子 (出演)
 
 これは1985年から3年間やっていた『スケバン刑事』というドラマシリーズですね。原作は和田慎二による少女漫画で、主人公はスケバンだけど実は政府の密命を受けて刑事として活動している、というお話です。
 
 ドラマでは初代が斉藤由貴、二代目が南野陽子、三代目が浅香唯が主演でした。これは二代目ですね。主人公は五歳の頃から悪の組織に鉄仮面を被せられてしまっていて、やがて自分の両親を殺した悪の組織に立ち向かっていくというストーリーです。「重合金ヨーヨー」っていう特殊な合金で作られたヨーヨーを使って敵を倒していくんですね。当時のトップアイドルが主役を演じて、アクションシーンはだいたい吹き替えでやっています。
 
 で、このドラマが子どもに大受けして、僕が小学生の頃はクラスでヨーヨーが流行ってました。このドラマのせいで当時の小学生はヨーヨーは人に投げつけるものだと誤解してましたね(笑)。あと、南野陽子演じる主人公は高知出身という設定で「おまんら、許さんぜよ!」って土佐弁っぽい、坂本龍馬っぽい喋り方をするので、みんな間違った土佐弁を喋ったりしてましたね。
 
 このドラマはフジテレビと共同で東映が制作して、大野剣友会も関わっていて、つまり昔の『仮面ライダー』のスタッフと近い人たちが作っていたんです。だからアクションは全部吹き替えです。「馬鹿馬鹿しいことを全力でやることが一番かっこいい」という、当時のフジテレビを代表格とする80年代の文化を、ここにも見て取ることができると思います。
 
 主人公側は南野陽子を含めた三人組で敵と戦うんですが、主題歌(「なぜ?の嵐」)はそのうちの一人で当時おニャン子クラブに在籍していた吉沢秋絵が歌っていて、作詞は秋元康です。
 
 三作目(『スケバン刑事III 少女忍法帖伝奇』)はなぜか忍者ものになっていて、忍者の末裔の三人が敵と戦うという話です。なんで忍者なのかというと、要するに東映が作っていたからです。アイドルという言い訳を駆使して、忍者ものというすでに終わったジャンルを再生しているという側面もあるわけです。
 
(風間三姉妹「Remember」映像上映開始)
 
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画像出典
 
 この『スケバン刑事』の頃はアイドルブームが終わる頃で、そのひとつのクライマックスとして社会現象化したのが「おニャン子クラブ」と「角川三人娘」でした。アイドルブームが続いていくなかで変わり種が出てくるんです。今まで見てきたアイドルは全員基本的には最初歌手としてデビューして、人気が出たら女優もやっていくというルートでした。だから基本的に最初は、歌番組が主戦場だったんです。

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