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  • 2020.09.04
  • 三宅陽一郎

三宅陽一郎 オートマトン・フィロソフィア──人工知能が「生命」になるとき〈リニューアル配信〉 第六章 人工知能とオートメーション(自動化)

(ほぼ)毎週金曜日は、ゲームAI開発者の三宅陽一郎さんが日本的想像力に基づく新しい人工知能のあり方を展望した人気連載『オートマトン・フィロソフィア──人工知能が「生命」になるとき』を改訂・リニューアル配信しています。今朝は第六章「人工知能とオートメーション(自動化)」をお届けします。
急速に人間を理解し始めた人工知能ですが、その思考様式は人間とは大きく異なります。これからの人工知能の分岐点にもなりうる現代の「第三次AIブーム」までの流れを三宅さんが分析します。

本章では、人工知能によってもたらされる「自動化」(オートメーション)について扱います。コンピュータ技術の登場で、それまで人間が行ってきたことが次第に自動化されてきました。まずデータ集計や複雑な数値計算が自動化され、かつては人工知能の重要な技術課題だった漢字変換も、いまや誰も気に留めないほど自然な技術として実現しています。メールの自動分類やエクセルの自動計算なども、広義にとらえる場合の人工知能の機能と言えるでしょう。
このように、人工知能は長い時間をかけて人間の知的作業をオートメーション化してきたわけです。そしていったんオートメーション化されると、それが人工知能だという意識は不思議となくなってしまいます。そのことは、1980年代の第二次ブームから現在までの人工知能の歴史を追っていくと感じることができます。

かつてのファミコンゲームのソフトには、マップ作成(ステージエディット)機能が付いたものがありました。古くは『ピンボール』のコンストラクション・キット、さらに『ロードランナー』(ブローダーバンド)や『レッキングクルー』(任天堂)、さらに『エキサイトバイク』(任天堂)などです。
これらは、ひとつひとつのステージ構成要素をユーザーが置いていく必要がありました。デジタルゲームの人工知能には、ゲーム中のキャラクターの自律的な挙動を担う「キャラクターAI」のような、ユーザーのゲームプレイの中で使う技術と、ゲーム作成に使う技術の2つに分けられますが、その双方で使われているのが「プロシージャル(自動生成)技術」です。

ゲームにおけるプロシージャル技術は、『Rogue』(1980年)のダンジョン自動生成に始まり、『Elite』(Acornsoft、1984年)の星系・宇宙船生成、「不思議のダンジョン」(チュンソフト)シリーズ、『FarCry 2』(Ubisoft Montreal、2008年)の森の自動生成などに応用されてきました(表6.1)。さらに『Age of Empire』(Ensemble Studios)シリーズ、『The Witcher 3』(CD Projekt RED、2015年)では地形が自動生成され、「バトルフィールド」(DICE)シリーズはテクスチャリングが自動的に地表表面を彩ります。
中でも『Spore』(MAXIS、2008年) はフル・プロシージャルのゲームで、クリーチャーの形状自体と動作が自動生成されます。現代では、RPGの物語生成を自動的に行う開発が盛んになりつつあります。

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▲表6.1 ダンジョン自動生成の歴史

要するにプロシージャル技術とは、本来人間が作るべきであったものを人工知能が代行して自動的に作っていくるという意味で、オートメーション技術なのです。
また、1980年代の人工知能画家「アーロン」のように、人工知能が芸術を作る、という方向があります。それ以外にも、人工知能がヒット曲の作詞をしたり、小説やイラストを自動生成したりと、人工知能による知的機能のオートメーション化は、より幅広い創造的分野に浸透しつつあります。

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