宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2021.01.27

「マヂカルラブリーno寄席」で感じた苦悩|高佐一慈

お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載「誰にでもできる簡単なエッセイ」。今回は、元旦に開催されたお笑いライブ「マヂカルラブリーno寄席」について。コロナ禍でお笑い界でもオンライン配信が一般化するなか、17483枚という驚異的な売り上げを記録したイベントで高佐さんが陥ったジレンマとは……?

高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ
第13回 「マヂカルラブリーno寄席」で感じた苦悩

1月1日。元日。お笑い芸人の配信ライブにとって、超異例のモンスターコンテンツが誕生した。それがタイトルにある、マヂカルラブリーno寄席である。
PLANETSの読者の何割くらいがお笑いに興味があるのかわからないが、マヂカルラブリーの名前は聞いたことがあるのではないだろうか。そう、昨年のM-1グランプリ2020のチャンピオンだ。吉本興業所属。
吉本では毎年1月初旬に「○○no寄席」というタイトルで各芸人が自分たちの名前を冠に、好きな芸人を呼んでネタライブをするというのが通例になっている。僕たちザ・ギースもASH&Dという別事務所ではあるが、毎年誰かの寄席ライブに呼んでもらっていて、そのうちの一つであるマヂカルラブリーno寄席にはなぜか毎年呼んでもらっている。主催のマヂカルラブリーの野田クリスタルくんとは、15年以上も前、僕らがまだフリーの(事務所に所属していない)頃にインディーズのライブでたまに一緒になっていたからだ。その時の野田くんはまだピン芸人で、ガリガリの体に白いタンクトップ、長髪という今とは全く異なる出で立ちで奇想天外なネタをやっていた。
17483枚。このライブ配信のチケット売上枚数である。聞くと、吉本さんの配信ライブでは歴代1位とのこと。平均どのくらい売れるとペイできるのかはそのライブによって異なるが、このライブを行なった会場のキャパは300席弱。2ヶ月間毎日満席にしたのと同じくらいの動員数である。昨年から続くコロナ禍によって、お笑いライブの形式も配信スタイルが普遍的になり、この状況にもう飽き飽きしてきている中での目が覚めるような爆発的売れ行き。まだまだ配信ライブにも可能性があるんだと思わされたライブ。なぜここまでチケットが伸びたのかは様々な要因がある。一つは主催のマヂカルラブリーがM-1で優勝したこと。また一つは、無観客配信をいいことに、出演する芸人も客席に座りながら、ネタをやってる芸人に対して言いたい放題ヤジを入れるスタイルになったこと。普通、無観客生配信だと、客席にスタッフさんや芸人が座ったとて、配信画面の向こう側でネタを楽しみに見ている視聴者の邪魔をしないように、笑い声こそあげれどおとなしく見ているのがマナーというもの。そのタブーを破り、ネタをしている芸人にヤジを飛ばし、そのヤジを聞いたネタ中の芸人が笑ってしまい、もっと言ってやれの空気になるという相乗効果。他にも、出ているメンバーだとか、ヤジのクオリティの高さだとか、細かい要因を挙げればキリがないのだが、もともと700枚ほど売れていたチケットが、さらに口コミに口コミを呼び、結果17483枚販売というお化け配信になった。ちなみにそのうちの2枚は僕と僕の奥さんだ。
今回僕が言いたいのは、何もこんな歴史的快挙の配信に僕らも携わっていましたよ!と声高に自慢したいわけではない。その時の僕自身の振る舞い方、身の置き方について、これがなかなかどうして難しいなあと思ったのだ。

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