宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2016.05.20
  • 石岡良治

「ノイタミナ的なもの」の発生源(『石岡良治の現代アニメ史講義』10年代、深夜アニメ表現の広がり(1))【毎月第3水曜配信】

今朝のメルマガは『石岡良治の現代アニメ史講義』をお届けします。今回からは「深夜アニメ」がテーマ。『あの花』をはじめとする2010年代深夜アニメの一大潮流「ノイタミナ的なもの」がどのようにして形成されたのかを考察します。


 
▼プロフィール
石岡良治(いしおか・よしはる)
1972年東京生まれ。批評家・表象文化論(芸術理論・視覚文化)・ポピュラー文化研究。東京大学大学院総合文化研究科(表象文化論)博士後期課程単位取得満期退学。青山学院大学ほかで非常勤講師。PLANETSチャンネルにて「石岡良治の最強☆自宅警備塾」を放送中。著書に『視覚文化「超」講義』(フィルムアート社)、『「超」批評 視覚文化×マンガ』(青土社)など。
『石岡良治の現代アニメ史講義』これまでの連載はこちらのリンクから。
前回:キッズアニメは「闘争性」を脱臼させる(『石岡良治の現代アニメ史講義』キッズアニメーー「意味を試す」〈4〉)
 
■深夜アニメ表現の象徴としての『あの花』とノイタミナ枠
 
 今回は「10年代、深夜アニメ表現の広がり」というやや漠然としたタイトルになりますが、現在のアニメのほとんどが放映時間的に「深夜アニメ」になった状況について、いくつかの角度から考えていきます。私は、2010年代の深夜アニメで最もメジャー化したタイトルは『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(2011、以下『あの花』)だと思っています。現状が流動的なこともあり、若干曖昧な言い方になることをご容赦いただきたいのですが、「ポストジブリ」というほどの規模ではないものの、細田守や新海誠の監督作品とほぼ同じカテゴリーに、長井龍雪監督、岡田麿里脚本、田中将賀キャラデザの『あの花』、そして同じく秩父近辺が舞台になっている『心が叫びたがっているんだ。』(2015、以下『ここさけ』)が含まれるのではないかという見立てです。
 もちろん、売上や影響力などのマーケット的には、深夜アニメ発のタイトルでは『魔法少女まどか☆マギカ』(2011)、『ラブライブ!』(2013-2014)、『ガールズ&パンツァー』(2012-2013)もかなりヒットした作品ですが、これらと『あの花』の違いを挙げるなら、普段アニメをあまり見ない人が各シーズンごとに見る数本のうちに入る点だと思います。現在ではアニメをまったく見ない人は減っているものの、それでも深夜アニメに対してある種の「濃い」世界を感じる人たちにとって、『あの花』が他のヒットアニメとは違う感触をもって受け止められているのでしょう。御存知の通り、この漠然とした雰囲気を作り上げたアニメ枠こそが、2005年に始まった「ノイタミナ」なのだろうと思います。
 この枠をエンタメ小説に例えるならば、狭義のライトノベルやWEB小説(時に「なろう系」とまとめられることもあります)よりは、雑誌「ダ・ヴィンチ」(KADOKAWA/メディアファクトリー)がプッシュするタイプの原作を擁したシリーズということができるでしょう。そこで想定されているのは、男性オタクだけでなく、女性読者も強く意識した枠、すなわち、「ラノベ」と呼ばれる以前のジュニア小説的な側面をもちつつ、現在の小説レーベルでは例えば「新潮文庫nex」(新潮社)などが追求しているようなテイストと言えばよいでしょうか。『図書館戦争』(作・有川浩、単行本はアスキー・メディアワークス/文庫版は角川文庫より刊行)や『四畳半神話大系』(作・森見登美彦、角川文庫)のような人気小説がノイタミナからアニメ化されていることが、そうした連想を誘うのでしょう。
 
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▲『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(2011)
 
■「ノイタミナ的なもの」の発生源
 
 こうした印象をまとめると、ここ十年ぐらいの深夜アニメでは「ノイタミナ的なもの」を考えることが不可欠だということです。ノイタミナは2005年の『ハチミツとクローバー』から始まった深夜アニメ枠で、翌年の『ハチミツとクローバーⅡ』が長井龍雪の初監督作品ということも注目されます。『ハチクロ』の後は『Paradise Kiss』(2005)、『怪 〜ayakashi〜』(2006)、『獣王星』(2006)、『働きマン』(2006)、『のだめカンタービレ』(2007)と続いていて、はじめの2年間くらいは完全に少女マンガものばかりでした。そうした傾向が変わるのは『もやしもん』(2007)、『墓場鬼太郎』(2007)あたりからでしょうか。『もやしもん』は若干『げんしけん』マイナーチェンジ版という感じで、特に序盤は良いマンガだと思いますが、個人的には原作者のオタク的自意識の露悪的な部分がやや苦手で、このへんは人によって変わってくるところかもしれません。近作だと『僕だけがいない街』(2016)もこの枠ですね。
 

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