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  • 2016.03.18
  • 井上敏樹,仮面ライダー,宇野常寛,白倉伸一郎

井上敏樹×白倉伸一郎 緊急対談 映画〈仮面ライダー1号〉公開記念 変身し続ける男たち・前編(宇野常寛の対話と講義録)

今朝のメルマガでは、3月26日から公開になる新作映画『仮面ライダー1号』の脚本を手掛けた井上敏樹さんと、プロデューサーの白倉伸一郎さんの対談の前編をお届けします。45年ぶりに復活を遂げた藤岡弘、さんの仮面ライダー1号、その復活にお二人がかけた想いとは。


◎構成:有田シュン

宇野 PLANETSチャンネルプレゼンツ、映画『仮面ライダー1号』公開記念特別番組「変身し続ける男たち、特別緊急対談 井上敏樹VS白倉伸一郎」のお時間がやってまいりました。

白倉 緊急なんですね。

宇野 緊急対談です。新年会の席で急に決まったっていう謎の企画です。

井上 この三人で飲んでたんだっけ?

宇野 そこで「やりましょう」と。

井上 そうだ。思い出した。

宇野 そんな事情で始まった緊急対談ですが、来たるべき3月26日に仮面ライダー45周年記念映画『仮面ライダー1号』が公開されます。それを記念して、スペシャルなお二人の対談をお届けしたいと思います。トレーラーが公開され、ネットでも話題になっている新作映画『仮面ライダー1号』について余すことなく、無礼講で喋っていただければと思います。

井上 とりあえず乾杯しよう。おつかれ~。(宇野に)お前は飲まないのか?

宇野 僕は飲まないつもりなのですが……。

井上 お前も一杯飲め。俺と同じ酒を飲め。

宇野 は、はい。分かりました。敏樹先生と同じお酒をお願い致します。(自分は)この放送のセーフティネットのつもりでいるんですけど、お酒を投入されるとは……。

白倉 この放送、のっけから何だか失敗の香りがムンムンしてるんだけど、大丈夫ですか(苦笑)。

井上 じゃあ乾杯しよう。世界平和に!

白倉 よろしくお願いします。

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■『仮面ライダー1号』始動に至るまで

宇野 まずは『仮面ライダー1号』の企画の発端からうかがいたいと思います。

白倉 最終的に藤岡弘、さんにお願いするまで、ものすごい紆余曲折がありました。かねてより頭の片隅で「藤岡さんにお願いに伺おうかな?」と思ってはいたんですが、実際に行くのにものすごい決意と覚悟が必要だったんです。一旦お話に伺いに行ったら、「やっぱやめます」とか、「やっぱ別の人にします」とか言えませんから。それに、仮面ライダー45周年というアニバーサリーイヤーに何かやるにしても、その手段は何百通りもあるわけじゃないですか。それこそ、『仮面ライダー対◯◯◯◯マン』って今年50周年のキャラクターと共演するとかね。

宇野 昔、そんなタイトルの微妙なVシネありませんでした?

白倉 あれは『◯◯◯◯マン対仮面ライダー』ってタイトルだったので、今度は逆にして、『仮面ライダー対◯◯◯◯マン』っていうやり方もあるかなと。実際に◯谷プロに「こういう企画をやりませんか?」なんて話もしてるんですよ。……公の場でこういうことを話すなって言われるんですけど。

宇野 いいですよ。中々いい感じです(笑)。

白倉 そういうことを含めた紆余曲折も含めて、何通りも企画を考えたりもするんですが、でもやっぱりどこかで藤岡さんのことが頭から離れないんです。
『仮面ライダー』って当然藤岡さんが演じる本郷猛から始まるんだけれど、藤岡さんで最後まで通せてないんです。第9話、10話収録中のバイク事故で、藤岡さんは療養のため降板せざるを得なくなり、言い方は悪いんだけど「繋ぎ」として佐々木剛さんが一文字隼人・仮面ライダー2号として投入されて、そこで「2号」という呼び名が生まれた。この交代劇がなかったら、もしかしたら『仮面ライダー』はあそこまでの人気作品にはならなかったかもしれないし、「2号もあるんだったら3号もあるだろう」「3号もあるんだったら4号もあるだろう」と言って、今の『仮面ライダーゴースト』まで連綿とつながる長大なシリーズになることはなかったかもしれない。
でも、誤解を恐れず言えば藤岡さんの事故による怪我の功名的に、そういう形になってしまったというのは決して喜ばしいことではない。なぜなら藤岡さんが最初から最後まできちんと主演を務めた仮面ライダーというのは、この世にまだ存在していないからです。45年という長い月日が経ってしまったけれど、少なくとも東映にはそれを作る義務があるんじゃないのかなというのは、何周年云々と関係なく頭の片隅にずーっとあったんです。それをこの機会に具現化できないかなという思いもありましたが、やはり「45周年だからやりません?」というような生半可な気持ちじゃできないですよね。その覚悟を決めるまでに、すごく長い時間がかかっちゃいました。
井上さんも『仮面ライダー』といえば、お父さん・伊上勝さんが脚本を書かれていましたよね?

井上 まぁ、1号には思い出はあるよね。初めて『仮面ライダー』を見たのは、小学校の頃。群馬県のおばあちゃん家に夏休みで遊びに行った時か何かに、親父が「今日から新しい番組が始まる」って、テレビを点けて『仮面ライダー』の第1話を観た。

白倉 「怪奇!蜘蛛男」だ!

井上 そうそう。ちっちゃな部屋で観たのが印象に残ってるね。親父があんな風に自分の番組を見たのは初めてだった。しかも俺も面白いと思った。ちょうど「仮面ライダーカード」とか流行った時代で、俺もよく集めてたよ。カードだけ集めて、「仮面ライダースナック」は捨てるっていうタイプだった。あれ、問題になったもんな。

白倉 道を歩くと「ライダースナック」の袋が落ちてるんですよね。「間違ってカード残ってないかな」って、袋を拾ったりしてました。

井上 それで面白かったのが、近所のお菓子屋に「ライダースナック」を買いに行ったら、おばちゃんが「うちの息子がカードを全部ガメちまった」って(笑)。「50円を半分にまけるから買ってくれ」っていうんだけど、「誰が買うか」って話よ。

白倉 ひどいな(笑)。でもそのお菓子屋のお子さんって、ある種のヒーローになれますよね。それだけカードを持ってるやついないわけですよね。元祖大人買いというか。そういえば、継続して『仮面ライダー』は見てました?

井上 『仮面ライダーV3』くらいまでは見てたのかな。俺の周りだと、多分中学生になってもみんな観てたね。

■シンクロする本郷猛と藤岡弘、

井上 昔、ちょっと1号ライダーを見返したんだけど、演出が大人向けでいいよね。

白倉 そうですね、竹本弘一監督のすごいアバンギャルドな演出がいいですよね。ファーストシーンから結構前衛的なんですよね。

井上 演出がちょっと幻想的で、アップが多くて、ライティングに凝ってた。それがすごく印象的だった。だから今回、白倉から連絡もらって、「1号で本郷猛の話をやる」と聞いたとき、まさか藤岡さんが出るなんて思わなかったからびっくりした。ちょっと嬉しかったよ。なんかな……「ケリがつけられる」というか。白倉がさっき言った気持ちが分かるのよ。傲慢な言い方だけど、なんか「責任を取りたい」みたいな気持ちはちょっとあるよね。俺が親父のケツを拭くって感じかな(笑)。

白倉 拭かなきゃいけないもんじゃないと思いますけどね。

宇野 敏樹さんが、「今回の企画は、こう打ち返そう」と真っ先に思ったことは何ですか?

井上 俺の中ではもう藤岡さんと本郷猛がイコールで、ちょっとストイックで、なんか常に「死」を背負ってるみたいな、だいたいのイメージがあるわけ。だから困惑はないんだよね。あとは白倉が藤岡さんと話して、「こういうことがやりたい」っていうメモを送ってきたんで、それを俺が返した。結局、メールのやり取りで俺がプロット書いて仕上げたから、実際に白倉には会わずに進めた。

白倉 もちろん最初のオーダーのときはお会いしてますよ。

井上 チラッとね(笑)。それで俺が「まぁ、分かりました」と。

白倉 そこから先はメールのやり取りだけですね。いつも会ってるような雰囲気はあるんですけど、そうでもない。

井上 そうそう、平気で1年くらい会わないよね。

宇野 白倉さんは、どうして井上さんにオファーしようと考えたんですか?

白倉 今回の企画の趣旨にすごく合うタイプの脚本家だということはもちろんなんですけど、先ほどご自身もおっしゃいましたが、「ケリをつける」じゃないですけど、やっぱりなんだかんだいって伊上勝という『仮面ライダー』メインライターの血筋を継ぐ方じゃないですか。それは他の誰も持っていない血筋なんですよね。そこに運命的なものがあるんじゃないのかなという気はします。

井上 それはそうだけど、ようは一番俺が向いてるっていう話だよね。

白倉 それにしても、藤岡さんは御年70におなりですけどすごいですよ。

井上 奇跡的だよね。なんか59くらいに見える。

白倉 微妙に年齢を刻みますね(笑)。本当にすごいですよ、真面目ですしね。

井上 1号って真面目だもんな。だからイコールなんだよね。

白倉 どこか藤岡さんご自身も、本郷猛という架空の人物とない交ぜになってるっていうのかな。お話していて、区別できなくなっているところがあるのかなと感じます。

井上 それでいいんじゃない? 役者にとっては悪いことじゃないと思うよ。

白倉 そうですね。「本郷家代々の武道を受け継ぐ本郷猛」って感じも受けちゃうんです。それは微妙に違っちゃったりするようなって思ったりもしますが……。

井上 う~ん……。言ってる意味がわからない。「本郷家代々の武術家」ってどういうこと?

白倉 藤岡家には代々伝わる武道があるんですよ。それを受け継いでらっしゃるから、藤岡さんは刀を振るったり、一生懸命鍛錬なさってるんです。

井上 武術家の家系なの?

白倉 はい。そういうバックボーンも「本郷猛」という人物に投影されちゃう。だから藤岡さんも、「本郷猛もそうであってほしい。自分に近しい覚悟を持った人であってほしい」っていう夢を本郷猛に託されているんです。

井上 なるほど、でもそれは変身するということじゃないの? 武術を変身と捉えれば、矛盾はしないよね。

■藤岡弘、の本郷猛像とは

白倉 その藤岡さんと話していて、実に「微妙なものだな」って思ったのは、こちらとしてやりたいのは年齢関係なくずっと戦い続けた、精神的にも肉体的にもすごく強い「カッコい本郷猛」だった。

宇野 藤岡さんにとって、本郷猛はどういうキャラクターになっていたんですか?

白倉 藤岡さんには自分と共に歩んできたキャラクター、というイメージが強いんじゃないかなと思いました。藤岡さん自身、それこそ『特捜最前線』や『日本沈没』に出たり、アメリカに行って主演作をやったり、探検隊とかもやったり、各国を巡って慈善活動とか色々なことをやっていく一方で、『仮面ライダー』シリーズでは『V3』の時に死んだと思われていた本郷猛が実は南米で戦っていたり、世界各国のショッカーの残党狩りみたいな形で戦い続けてました、みたいな設定があったじゃないですか。それが、どこかでシンクロしていると感じたんです。

井上 その感覚はもともとあったんじゃない? 俺の本郷猛のイメージって、なんかすごい藤岡さんと似てるんだよね。本郷猛って本当にもう悲惨な生まれで改造人間だけど、藤岡さんも多分幼い頃から父親とかに武術叩き込まれてさ。ある意味それも改造じゃん? 道場っていう密室で父親に殴られながら、「お前もやれ」と回し蹴りを食らうなんてもう改造だよ(笑)。多分それが嫌で父親と喧嘩して逃げ出したんだよ。だいたいそういう厳格な父親が「俳優になる」なんて許すはずない(笑)。

白倉 本当にそうなのかは分からないですけど……。

井上 多分リンクしてるんじゃないかな、だからこの本郷猛っていう役が藤岡弘、さんの核になってると嬉しいよね。本人が意識してるか分からないけど、ちょっとはそういう感覚があるんじゃないかな?

白倉 石ノ森章太郎先生がご存命の頃、まだあんまりそれを意識してなかったであろう藤岡さんが「仮面ライダーの続きを書いてください」あるいは「今、本郷猛ってどこで何をしてるんでしょうね?」っていうことを先生に聞いたらしんです。すると石ノ森先生が、「本郷猛っていうのは、今の藤岡ちゃんだよ」「『仮面ライダー』が終わった後の本郷猛っていうのは、今キミがやってることなんだよ」って答えたそうなんです。これは持ち上げもあるのかもしれないけれど、そう言われてすごく嬉しかった反面、居住まいを正すじゃないけど、「本郷猛のように生きなきゃいけない」っていう風に思ったんじゃないですかね。

井上 それは諸刃の剣だよね。すごい俳優ってそういうもんなんじゃない? 強烈な役に最初に当たるとなそうなる。それは分かるな。

白倉 本郷猛そのものも、もちろんイメージとして「こういう人物」というのはあるけれど、そんなにいわゆるキャラが立っている人でもない。

井上 普通の正義の味方だもんな。

白倉 だけど、それが年月を経るごとに藤岡さんの中で、本郷猛という人格が現実を生きている人間にシンクロしてくる。それがこの40年の年月の中で育まれちゃってるということを、今回藤岡さんと話してる中で感じてはいました。ただ我々、視聴者が思ってる本郷猛像っていうのは、45年前のテレビシリーズの本郷猛なんです。そこに我々、視聴者と藤岡さん本人との決定的な違いがあったんです。

宇野 なるほど。

井上 そこが難しいよね。制作サイドの考えもあるし、藤岡さんサイドの考えもあるし。

白倉 はい。それぞれ、いい意味で折り合いをつけていかないといけない。ただ、今回は結果的なのか計算してなのか分からないけれど、すごくうまくいったと思っています。藤岡さんの「こういう本郷猛でいたい」、あるいは「これに関してこういうメッセージ性、テーマ性を持ったものにしたい」という思いと、井上さんの書かれた脚本がまさにぴったりだったんです。それがたまたま、現行番組の『仮面ライダーゴースト』のテーマである「命」というところともシンクロしたりするので、これは計算じゃできない天の采配みたいなものがあったと思います。

宇野 ネタバレにならない程度で、藤岡さんと白倉さん、井上さんの間でどういうやりとりがあったのか教えていただきたいのですが。

井上 俺は実際にご本人には会ってないんだけど、白倉を通じて意見を聞いた感じだね。俺が脚本を書くにあたって、そんなに問題はなかった。だからスムーズに進んだ。まぁ、白倉は知らないよ? 彼には彼なりに苦労があったかもしれないけれど(笑)、俺と白倉の間では順調に進んだ。

白倉 いやいや(笑)。最後の打ち合わせ、決定稿打ち合わせっていうんですけど、あれはひどかったですよ。スケジュールの都合があって、23時に銀座の東映にテレビ朝日さん、監督を含めみんな大集合で脚本について打ち合わせをしたんです。その時間にみんなで集まって、「さぁ打ち合わせしますよ」ってスタートしたら、30分で終わる(笑)。

井上 あれは楽しかったね(笑)。

■若き才能・岡本夏美について

宇野 「この辺りを特に見て欲しい」というポイントを教えてください。

井上 俺はやっぱり本郷猛になっちゃうんだけど、まずヒロインとの関わり方。それと今回は弱い本郷猛というところ。1号は改造されてショッカーから脱走するじゃない? 今回、本郷猛は自分自身から逃げてくるのよ。そして、ヒロインとの交流を通して自分自身の弱さから逃げてきた自分を乗り越えるっていう話なの。だから最初はけっこう共通点があるんだよね。昔の1号をパターンは違うけど、ある意味、構造的に繰り返してる。非常に抽象的なんだけど、それが見どころだと自分では思っている。

白倉 そのヒロインっていうのが、おやっさんこと立花藤兵衛のお孫さんである立花麻由です。その麻由が、家族も同然ということもあり本郷猛に対して非常に強いんです。『ゴースト』のタケルとかみたいに、本郷猛を偶像視しない。

井上 それは大事だよね。

白倉 本郷猛を一個の人間として、身内として見ている麻由が出てきて、言い方は悪いけど辛くも当たる。それに対して非常に弱い本郷猛がいる。だけど陰には色々あって……という中で、二人が家族としてすごくいいシーンを作っていく。本郷猛が弱さを乗り越えていくっていうのが、本当に切ないし、胸が締め付けられるようなシーンもある。

井上 あと麻由ちゃんもいいよね。

白倉 岡本夏美さんですね。すごく大事な役どころなんで藤岡さんもすごい気にしてたんですよ。「この役はすごく大事だよ。誰が演るの?」って。麻由は17歳という設定で、実際に17歳の岡本夏美さんが演るんですけれど、17歳ってそんなにキャリアがあるわけじゃない。それに芝居も難しいので、リハーサルをやろうという話になっていたんですが、藤岡さん自身のスケジュールが合わなくなっちゃって、いきなり現場で合わせることになりました。だからやっぱり藤岡さんは不安を払拭できなくて、事前に岡本夏美さんと「こうしてああして、こういう気持ちで俺はやるし、麻由はこういう気持ちだと思うよ」って台本を読みながら打ち合わせていました。ところが本番まで「不安だ」とか「この役は中々荷が重い」とか、「できるまで何度でも自分もきついけどやらないと」なんて言ってた藤岡さんが、本番で彼女の芝居を見た途端に、(物まねしつつ)「いいね~。将来の映画界を背負っていくね~」って。

井上 随分と早いね(笑)。

白倉 藤岡さんはそれだけ麻由という役柄に関しては期待と重要性を考えていたし、同時に岡本夏美っていう若い女優さんの演技力、芝居心を一発でちゃんと見抜いたんです。

井上 藤岡さんって正直な人なんだよね。

白倉 そうですね、真面目だし正直だし、すごく素直ですよね。ポーズ的に気取ってるように見えるところもあるんだけど。

井上 役者だからな。でも根は正直なんだよな。

白倉 すごい正直ですよね。自分で迷ってることがあるとすごく素直に人に聞くし、「こうじゃないか」って言われると「そうか!」って受け止めますよね。鵜呑みにするというわけではなく、自分の中で咀嚼する。大御所なのにすごく素直です。

■なぜ今回は「桜島カラー」なのか?

宇野 絵的な見所はどの辺でしょうか?

白倉 やっぱり本郷猛絡みになっちゃいますけど、皆「太ましい」とか言ってる1号ライダーですね。今の藤岡さんが変身した、今の1号というのが絵的には一番のおすすめポイント。

宇野 あのデザインは、今の藤岡さんのマッシブな感じを再現すした形ですか?

白倉 そうです。今の藤岡さんの、マッチョでマッシブなガタイっていうんですかね。

井上 あれで細かったら変だもんな。

白倉 そうなんですよね。何年か前、『平成VS昭和』で3シーンくらい藤岡さんに出ていただいたんですが、語弊があるけどその時は昔の一号に変身しました。藤井君という将来嘱望されるアクションマンがスーツアクターをやってくれたんですが、藤岡さんも、藤井君がやってる1号も両方いいんですよ。だけど、やっぱり違いすぎる。ギャップがあるんですよね。いくら変身モノだと言っても、体型が変わり過ぎて夢を削がれるところがある。

宇野 ちなみに今回、新しい1号のスーツは桜島カラーじゃないですか? あれはどういう意図で?

白倉 帰ってきた本郷猛って感じです。

井上 桜島カラーってどういうこと?

宇野 藤岡さんが怪我から復帰して着たスーツのことです。九州ロケだったんです。

井上 だから桜島カラー?

白倉 そう。それで九州に持ってったらスーツがボロボロだったので、修理するためにその辺で手に入るスプレーで塗装したら黒くなってしまったという噂。

井上 昔ながらのいい話だね。

白倉 もちろん帰ってきた本郷猛だから桜島カラーという意図もありつつ、今回はミリタリー要素もあるかなと思ったんです。本郷猛はこれまであちこちの紛争地帯とかにも行ってきた。そのなかで実用性ってものがどうしても出てくるだろう、と言うことでデザイナーさんには軍事用品とか装具についても研究してもらいました。

井上 以前、白倉が言ってたんだけど、『ゴースト』の連中は「変身!」ってあっさり変身するじゃん。だけど藤岡さんは「へん~~~~しん!」ってすごく溜める。端的に言えばそこが絵的な見所。

白倉 金田治監督も凝って撮るから、若いのは「変身!」ってワンカットなんだけど、藤岡さんは2時間経っても変身の撮影が終わらない。「何カットあるんですか!」って(笑)。あとはバイクですね。ネオサイクロンで到着するシーンが見所です。バイクで来れば当然停車するわけですが、現場では停車シーンに2時間かけています。編集すると1秒もないのかもしれないけど、撮影には2時間かかりました。「監督、そろそろ止まりますか?」って聞いたら「まだだ。まだ止まらんぞ!」って(笑)。停車シーンは何カット撮ったのかわからない。

井上 俺が好きなのは、予告の冒頭にもある、本郷猛が最後の決戦に行く前におやっさんのガレージをガーって開けるシーン。あそこいいよね。サイクロンがあって、ちょっと悲しくて。

宇野 ネオサイクロンは商品化されるんですか? トライサイクロンは商品化されなかったじゃないですか。

白倉 トライサイクロンはベース車のマツダさんから許可出なかったんです。でも、今回は権利問題はクリアしています。

■生身のアクションで魅せる藤岡弘、

宇野 今回、どれくらい藤岡さんが生身でアクションをやってるのかも気になります。

白倉 全て生身でやってます。

井上 (藤岡弘、は)バケモンだよね。

宇野 戦闘員に絡まれて捌いてくというアクションを、そのままやってらっしゃる。すごいですね。

井上 そういう70歳になりたいよね。

白倉 失礼かなと思いつつ本人にも言ったんだけど、『仮面ライダー』だからどうしてもアクション映画になる。そのオファーを69歳の方にできること自体がすごいことですよね、と申し上げたら、「アメリカでは普通だよ。スタローンだってシュワルツネッガーだって老骨に鞭打って頑張ってる」って言われたんですよね。

井上 でも皆薬漬けじゃん。藤岡さんは薬じゃなくて富士山の水を飲んでるんだよね。

白倉 よく御存知で。それで藤岡珈琲とか飲んでらっしゃるんですよね。これは裏話なんだけど、(藤岡は)身体にダメージがあったとしても撮影中はずっと隠していて、後になって「実は……」ということがありました。ずーっと押し殺して絶対に言わない。

井上 今回の役に似てるじゃない。脚本の初稿の頃、かっこいい出だしで本郷猛が出てくる感じだったのよ。フィリピンぽい異国の安食堂で、肉体労働者みたいな感じで飯食ってるわけ。そこに蠅が飛んでると宮本武蔵っぽく箸で掴むようなシーンもあったんだけど、藤岡さんが「もっと弱い出だしがいい」と言ったんです。だからちょっと弱くしたのよ。

白倉 藤岡さんが考えたのは、武道家としてのリアリティーみたいなことだった気がします。蠅を箸で掴むのはやりすぎだと。だから冒頭の姿は、スーパーマンではなく老骨に鞭打って、必死に生きている本郷猛なんです。

井上 それがすごくよかった。男の必死さ。それがテーマだよな。最近、男って必死に生きてないじゃん。女の方が必死に生きてる。だから本郷猛の必死さっていいよな。

白倉 ちなみに冒頭のシーンは、タイという設定です。そこでメインタイトルが出てくる。その本郷猛に被ってくるメインタイトルのシーンが大事なんです。見所っていうか、スタッフ全員思い入れがあるんだなって感じられる。東映マークが出る頭から愛を感じます。

井上 やばい。超見たい。

宇野 敏樹さんは、まだ全然見てないんですか?

井上 何にも見てない。俺、あんまり泣かないんだけど、今回は泣く気がする。

宇野 ところで敏樹さん、奇しくも『月神』とテーマが似ていませんか?

井上 死がテーマだからね。そこはちょっと似てる。

宇野 どっちも高齢の男性が主人公で、自分の限界を知るという点も似ています。これはけっこうびっくりしました。

井上 年も同じくらい。こういうのをシンクロニシティって言うんだな。

白倉 本当にたまたまだし、もちろん『月神』とは話としては違うんだけど。

井上 でも根底に流れる精神性が似てるかもしんない。

白倉 そうですよね。美学があって、一生懸命生きようとしている。そのために身体も鍛えている。

井上 一生懸命にやるって、単純なことだけどすごく大事なことなんだよね。でも、最近は皆一生懸命に生きてない気がする。

(本記事の後編は来週金曜に公開予定です!)

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