働き方改革とは、働く制度を変えることでもない ──(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革 第4回〈リニューアル配信〉 | PLANETS/第二次惑星開発委員会

宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2021.06.07

働き方改革とは、働く制度を変えることでもない ──(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革 第4回〈リニューアル配信〉

(ほぼ)毎週月曜日は、大手文具メーカー・コクヨに勤めながら「働き方改革アドバイザー」として活躍する坂本崇博さんの好評連載「(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革」を大幅に加筆再構成してリニューアル配信しています。
「働き場所」の改革に加えて、多くの企業の働き方改革の現場で行われたのが、在宅勤務やフレックス、はたまたMBO型の評価スキームなど、制度を作ることでした。そうした「型」から入っていくやり方が機能しない場合が多いのはなぜか、改めて検証していきます。

(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革〈リニューアル配信〉
第4回 働き方改革とは、働く制度を変えることでもない

あらすじ

前節では働く「場」の改革だけでは、本質的な働き方改革(私の働き方改革)は進まないことが多いと解説しましたが、この節では「型」を変えるだけでも同様に私の働き方改革は進みづらいということを、事例を示しながら解説したいと思います。
「型」とはすなわち、制度やルール、仕組みのことです。
多くの企業がコロナ禍前から在宅勤務制度やフレックス制度を導入していましたが、自ら進んで「やる事・やり方・やる力の見直し」に向けてそれらの制度を活用する人は少なかったと思います。
また、評価制度の欧米化についても、「型(外見)は変われど中身(運用)は変わらず」で、その成果を実感できている人は限られています。
こうした状況を整理しながら、なぜこうした状況に陥りがちなのか? についての考察につなげていきたいと思います。

働く制度の改革も、働き方を変えるには至っていない

働く場所についてと同じく、この数年新たに作られた制度たちも、「お蔵入り」状態もしくは、「特定の人だけのためのもの」となっている事例が見受けられます。フレックス制度、在宅勤務制度、副業制度などがそれに該当します。
ただし、コロナ禍によって、「在宅勤務」は当初想定していた狙いを超えて、フル活用されるようにはなりました。しかしこれは、「在宅勤務制度」を社員一人ひとりが進んで活用した結果在宅勤務が増えたわけではなく、感染拡大防止のために上からの強制によって実現したまでであり、制度改革によって働き方が変わったわけではありません。
ちなみに数年前、コロナ禍発生前のことですが、某通信会社さんから、「社員が在宅勤務制度を使ってくれない」というお悩みをいただいたことがあります。当時の私としては、「別に、在宅勤務の必要性がないなら、制度を使わなくってもいいんじゃないですか?」と疑問に思ったのですが、さすが通信会社さん、一歩先を見据えていらっしゃいました。
「もし誰もが在宅勤務を当たり前のように使える組織になっていなければ、どうしてもその制度を使わなければならないときにも、おそらく不安になり、堂々と活用できないかもしれない。これからの介護問題や震災などでの通勤困難に備えて、今のうちから家でも働けるような慣習を染みつけることが大事だ」とのことでした。今になって思えば非常に先見性のある課題提起です。コロナ禍によって多くの企業が在宅勤務を余儀なくされ、少なからず混乱が発生していましたが、もし多くの企業がこうした視点に立って、コロナ禍の前から全員で在宅勤務に慣れていることができていたら、そうした混乱は抑えることができたのかもしれません。
ではなぜコロナ禍前に、多くの社員は在宅勤務制度を活用しなかったのでしょうか。
この答えも簡単です。「現状のやり方でも仕事が回っていて、あえて働く場所を変えて在宅勤務にしなくてもただちには困らないから」です。

評価制度やコミュニケーション改革も、型の変化だけに留まっている

バブル崩壊以降、企業・組織における評価制度やそれに伴う上司と部下のコミュニケーションのあり方もある意味強制的に変化しています。
評価制度については、成果主義に始まり、評価の視点はますます「個別的」「短期的」になっています。個々人のスキルやキャリア意識に応じて、部署のミッションとすり合わせ、MBO(Management by Objectives:客観的に測定できる目標設定管理)に落とし込まれ、「今年は〇〇を何件やります」といった宣言が行われるようになりました。
合わせて、上司は毎期1~2回、「1on1」と称した個別面談を部下と二人きりで行うことが求められ、部下は評価面談実施後に、その面談が有意義だったかを人事部に報告しなければならなくなりました。
これらは決して悪いことではなく、従来の曖昧で不透明、画一的で横並びの評価制度を改革する大歓迎な変化であるはずでした。
しかし、ふたを開けてみると、ぱっと見では1on1がまじめに行われているものの、内容としては「上司からの指導タイム」だったり、上司に腹を割って話すことに抵抗のある部下は、当たり障りのない仕事の会話に終始したり、目標設定シートの体裁は変われど、なるべく従来の記載内容を踏襲しようというパワーが働いていたりと、形は変われど中身は変わらずといった状況の企業さんのお悩みが後を絶ちませんでした。
また、MBOや成果主義などの評価制度についても、結局運用するのは職場の上司と部下一人ひとりであり、彼らの意識・行動が変わらなければ「これまでの評価視点、これまでの評価方法」で運用することは十分に可能であり、従来の働き方に飲み込まれてしまうケースもよく見受けられました。
私は働き方改革アドバイザーとして長年直面してきたこれらの経験から、型を変えるだけでも、「私の働き方改革」を促すには至らないようだと考えるようになったわけです。

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