宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2015.07.29
  • すべての道はV系に通ず,市川哲史,藤谷千明

LUNA SEA主催フェス「LUNATIC FEST.」はV系の「反撃の狼煙(のろし)」か?(市川哲史×藤谷千明『すべての道はV系に通ず』第2回)

去る6/27-28日に幕張メッセで行われたLUNA SEA主催フェス「LUNATIC FEST.」は、その多彩なラインナップで大盛況となり、様々なメディアにも取り上げられました。今なぜ「ヴィジュアル系の祭典」が行われたのか? そして、その熱気はどうして生まれたのか?
「幾つになっても音楽評論家」市川哲史と、ヴィジュアル系ライター藤谷千明の2人が、この大規模イベントから「ヴィジュアル系の現在」を考えていきます。


 

★LUNATIC FEST.(以下ルナフェス)とは?
LUNA SEA主催で先月の6月27-28日にかけて幕張メッセで行われた音楽フェスティバル。X JAPANやDIR EN GREY、MUCC、GLAYといったいわゆる「ヴィジュアル系」バンドだけではなく、その影響源たるBUCK-TICKやDEAD END、D’ERLANGERから近年のラウドロックシーンを引っ張るcoldrainやROTTENGRAFFTY、凛として時雨や9mm Parabellum Bullet、Fear,and Loathing in Las Vegasや[Alexandros]、the telephonesなどの若手バンドまでが出演し、その幅広いラインナップで話題となった。(詳しくは公式ホームページ http://lunaticfest.com/ を参照。)

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公式ホームページ(http://lunaticfest.com/)より。

◎構成:藤谷千明

前回記事:第1回「元祖・フィジカルエンターテイナーとしてのYOSHIKI」

■ LUNATIC FEST.とはなんだったのか

藤谷 今回は、先日開催され話題になったLUNA SEA主宰の「ルナフェス」というイベントのインパクトを振り返りつつ、「そもそも、2000年代以降の国内のフェス文化からなぜかヴィジュアル系がパージされてきた」という問題についても考えてみようと思います。

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▲『MOTHER』:LUNA SEAが1994年に出した4thアルバム。収録された「ROSIER」や「TRUE BLUE」などの楽曲は後世のV系バンドに大きな影響を与えた。

fh2 改めて説明すると、ルナフェスは後続のヴィジュアル系バンドに絶大な影響を及ぼした代表格LUNA SEA主宰のロックフェスです。
LUNA SEAは00年に終幕(※LUNA SEAは「解散」ではなく「終幕」と表現する)後、各自ソロ活動や別ユニットで活動していましたが、07年末に東京ドーム「GOD BLESS YOU~One Night Dejavu~」で一夜限りの再結成を果たしたのち、08年のhide memorial summit出演を経て、10年にREBOOT(活動再開)宣言とともにドイツ、香港、台湾、アメリカを廻る世界ツアーを発表、以後セルフカバーアルバムやシングルのリリースを経て13年末にはオリジナルアルバム『AWILL』をリリースしました。昨年は結成25周年記念イヤーとして全国ツアーを行い、その記念イヤーのラストイベントがこのフェスになります。
当日ボーカルのRYUICHI(河村隆一)も「ロックの地層」と表現したように、DEAD ENDやX、BUCK-TICKといった”シーンの始祖”や後続のヴィジュアル系シーン出身のバンドだけでなく、いわゆる「ロキノン系」に括られる凛として時雨や9mm Parabellum Bulletも出演しました。

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▲凛として時雨 『Who What Who What』。男女ツインボーカルの3ピースロックバンド。メンバーがLUNA SEAファンを公言している。

彼らはバンドの佇まいや音で「LUNA SEA直系でしょ!」ということがすごくよくわかるんですよ。LUNA SEA終幕後にPSカンパニーやアンダーコード(どちらもヴィジュアル系の事務所)のバンドではなく、UKプロジェクトや残響レコード系のバンドに行った人は多かった。あのあたりのバンドの音って、当時2000年代半ばのヴィジュアル系よりも「ヴィジュアル系っぽさ」があったんです。

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▲9mm Parabellum Bullet – 生命のワルツ

市川 私は今回、そんな非V系バンドたちを「すごい爽やかだなー」と思って聴いてたなぁ。つくづくV系というのは不思議なもので、孫引きになればなるほど具体的なサウンドはもちろん変貌してるけども、「あの」ノリとコンセプトだけは妙に生きてるんだよねこれが。だから、90年代V系の尻尾が、後の世代のバンドでは「こういう形でこういう場所に生えてんのか」という驚きがあった。
一方で、21世紀突入後のもっとオーソドックスなV系後継機にあたるはずの<ネオV系>バンドがあまり出ていなかったけども、今回に限っては出さなくてよかったと思う。だって、お化粧の変遷みたいなのを見せられてもしょうがないじゃない。LUNA SEAは「メイクをしてようがしてなかろうが、見かけがV系っぽくなくても俺達の影響を受けてくれた連中はこれだけいるんスよ」ということを示したかったんだと思うし、そういう意味ではきっと達成感があったと思う。
それと今回は若い世代を中心に、XやLUNA SEAを初めて生観戦した人もかなり多かったと思うんだよ。それは観客のみならずメディアの若いスタッフたちまで、フェス全編通じて「出音がすごい!」とやたら驚いてて――とにかく新鮮で衝撃的だったみたい。V系バンドのレジェンドたち(苦笑)って、「他の誰よりも音はデカく演奏は速く濃く、どんな手を遣っても目立つ!」的な強迫観念で自らを追い立ててたわけでさ。考えてみたらその本気感って、いまの音楽シーンからいつの間にか失われてるものだったりするじゃない? そんな自意識過剰なプロフェッショナル魂が、きっと恰好よく映ったんだと思うよ。

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▲D’ERLANGER 『Spectacular Nite -狂おしい夜について-(通常盤) 』

さらに誤解を怖れず言っちゃえば、当事者であるこのフェスに出演した若いバンドたち自身が、レジェンドたちの生命力漲る音に驚かされてたフシさえある。
ほら、V系の基本はあくまでも<足し算の論理>だから、そんな「出したもん勝ち!」みたいな生命力の差だよ。「あえて退くことで自分を際立たせる」的な技はV系じゃ通用しないから。わははは。
たとえば今回のLADIES ROOM(※セクシャルな歌詞とルックスから「エクスタシーレコードのセクサー集団」、サウンドからは「和製モトリー・クルー」と称されたバンド)なんかもう、素敵じゃない。自分たちの楽曲より「Anarchy in the UK」(セックス・ピストルズのカバー)と「酒と泪と男と女」がメインというね。しかも楽曲以上に呑みまくり酔いまくり、そしてそこで唄わされているRYUICHI(嬉笑)。

藤谷 美声でしたね……。

市川 アレが原因で声枯らしたね。RYUICHIの唄が肝心のLUNA SEAで調子悪かったの絶対、LADIES ROOMのせいだよ。だははは。

藤谷 それ以外にも、DEAD ENDのステージにはRYUICHIとSUGIZOが登場。SUGIZOは他にもDIR EN GREYのステージでヴァイオリンを演奏したり、KA.F.KAにも飛び入りしたり。しかもやったのがJoy Divisionの「Transmission」!

市川 ほとんど杉原祭り。

藤谷 あははは。Jは先輩のAIONやBUCK-TICKだけでなく後輩の9mm Parabellum BulletやROTTENGRAFFTYとも競演してましたし。

市川 Jは宿願であるBUCK-TICK兄さんとの共演が、しかもあの“アイコノクラズム”で実現しちゃってもう、至福の笑みだったもんねぇ。

藤谷 INORANは崇拝するD’ERLANGERの、真矢は弟子の淳士がいるSIAM SHADEのステージに……と書ききれないくらい「サプライズ」がありましたね。LUNA SEAメンバーの、あのオーガナイザーとしてのサービス精神は凄いと思います。

市川 うん。私の想像をはるかに超えて、LUNA SEAのホストとしての献身は素晴らしく、おもてなし魂が炸裂してたよ。「炸裂」しなくてもいいんだけども(苦笑)。

■ ルナフェスは90年代の「エクスタシーサミット」「LSB」のオマージュ?

藤谷 このルナフェスの意義としては、今まで誰もきちんと評価できていなかった「LUNA SEA以前・以後」という軸を見せることができたということが大きいのかなと思います。
今回のルナフェスのラインナップって実は、市川さんがリアルサウンドの記事(『LUNATIC FEST.』が蘇らせる、90年代V系遺産 市川哲史が当時の秘話を明かす – Real Sound|リアルサウンド )で書かれていたように、1日目は《エクスタシーサミット(91・92年)》、2日目は《LSB(94年)》のオマージュなわけですよね。

市川 エクスタシーサミットってそれこそエクスタシー所属バンドの祭典だったけど、実際に売れてるバンドはまだXだけで、Zi:kill(エクスタシーレコード出身でLUNA SEAとは先輩後輩にあたる。今回のフェスでもSUGIZOから再結成を望む発言があったが実現はしなかった)やLUNA SEAがメジャーデビューしたばかり。要は、<YOSHIKIと愉快な仲間たちwith舎弟たち>の集会だったわけ。

藤谷 それが若手のフックアップの場でもあったわけですよね。ヒップホップでいうところの「さんピンCAMP」(96年に日比谷野外音楽堂で開催された日本初の大型ヒップホップフェス)に近いのかも。

市川 結果論としてはね。でも実際は何も考えてなかったと思うよ。とにかくYOSHIKIが、「エクスタシーの大きい團旗を持って裸でわーっとステージを駆け回りたい」ってだけで始まったんだから。

藤谷 無邪気か!!!

市川 一方、BUCK-TICKとLUNA SEAとSOFT BALLET(※インダストリアルテクノユニット。今回のフェスにもメンバーである森岡賢と藤井麻輝によるminus、森岡賢が参加しているKA.F.KAが出演)が一緒に全国を廻ったLSBは、いわゆるスプレッド・ツアーの日本での走りだったんだよね。しかもラルクやイエモンやマッド・カプセル(・マーケッツ)など当時の「若手注目株」も、公演地ごとに客演するというショーケース的機能も併せ持った画期的なイベントだった。
当時のファンはやはり、「自分の推しバンドこそ命♡」と一組のアーティストだけに深く狭くのめりこんでたわけ。だけども、私の『酒呑み日記』(※市川さんが『ロッキングオンジャパン』『音楽と人』誌で連載していたロックミュージシャンとの交遊録的エッセイ。当時は神秘のベール(笑)に包まれていたV系ミュージシャンの素顔や本性や生態が見られると大人気だった)や掟破りの対談やFMを通じて、「今井寿と藤井麻輝は仲がいいんだ」とか「今井とhideがTAKESHIとの座談会出席を自ら買って出るほど、マッド・カプセルを応援してるんだって」とかそういう、バンドの枠を越えた横の人間関係がV系には存在するということを、一般の女子たちも知るに至ったわけさ。我田引水だけども。
そういう意味では、日本のロックシーンにも縦の上下関係のみならず横断する<ロック村>が初めて誕生した上に、またそれが世間に知られるようになったところで、LSB。そこでファンの子たちは初めて、名前とキャラだけよぉーく知っている自分の推しバンドの仲間の生のライヴを観て、「あ、恰好いいんだーっ」とか「私にはわからないー!!!」とか、一喜一憂したらしいよ。知識が経験へと昇華したんだねぇ(←しみじみ)。

藤谷 当時はネットで試聴できるわけでもないですから、LSBでのライブが「試聴」の代わりでもあったわけですね。

市川 そう、人力YouTube状態(失笑)。だからLSBは、「名前しか知らないバンドを体験する」という機能を果たしていたんだよね。しかも、どこかの事務所やレーベルの思惑ではなく、アーティスト自身の主導で実現したことも大きかった。前宣伝も地味だったし、冠スポンサーも一切ないし、ライブビデオもリリースされなかったし、そういう意味では「ただこんなライヴをやりたかっただけ」という潔さが美しかった。

藤谷 私は当時見に行けてなくて、映像がリリースされてないことが悔しかった記憶があります。

市川 そりゃ無理(←きっぱり)。

藤谷 しかしなんでまたLUNA SEA25周年とはいえ、20年以上前のイベントを半分踏襲するようなフェスをやることになったんですかね。

市川 そもそも再結成LUNA SEAを、えらい長く引っ張っちゃったわけで。しかも新曲シングル連発して新作アルバムまで出して全国ツアーまで実現させてしまい……本気でやりすぎだろう(愉笑)。<バンド再結成に新作不要>論を唱える私には、LUNA SEAは真面目すぎる。
要するに真面目に再結成し過ぎてしまっただけに、その巨大な風呂敷をいったんたたむには大きな花火が必要だったんじゃないかな。というわけでV系の歴史を総轄しちゃうとこがまた、相変わらずLUNA SEAらしくて微笑ましい。

■ XとBUCK-TICKの「現在」

市川 今回の出演バンドで最も得したのは、BUCK-TICKじゃなかろうか。<伝説の元祖V系バンド>として昔から評価が高いわりに、実際に楽曲聴いたりライヴ観たりされてなかったと思うのよ実は。イメージと評価ばかりが一人歩きしてて。

藤谷 「最近のBUCK-TICK」を知らない上の世代は多かったかもしれませんね。どうしても世間的なイメージだと「JUST ONE MORE KISS」や「惡の華」で止まっている。そこからちょっと難解なデジロック路線を経て、05年のゴシックをコンセプトにした『十三階は月光』をきっかけにして若いファンがけっこう入ってきたんですよ。

市川 とはいえごく少数じゃない。やはり今回初めて動くBUCK-TICKを生で観たら、「うわやっぱ本当に恰好いいじゃん!」と驚いた声をすごくたくさん聞いたよ。

藤谷 ライブ終了後にTwitterのホットワードに「BUCK-TICK」が上がってましたからね(笑)。セットリストも完全に「現在」のもので。潔いくらいナツメロ的サービスがなかった。

BUCK-TICK
▲昨年行われた「TOUR2014 或いはアナーキー -FINAL-」の映像

市川 初期のあのヤンキー・デカダンス的なヴィジュアル(失笑)が災いして、ずっと差別的に過小評価され続けたけども、実はBUCK-TICKって早い時期から音楽的に成熟してたんだよね。たとえば『狂った太陽』は1991年リリースにもかかわらず、海外に先んじてクールなデジロックを実現させていた。また『darker than darkness-style 93-(93年)』『Six/Nine(95年)』と、「とにかく変てこな音を造りたい」という今井寿の少年並みの執着心が、偏執的な「おいおい」エレクトロニカを既に聴かせてくれちゃってたし。新しく購入した化け物エフェクターが内臓する440種の音色を、いちいち全部試してレコーディングしたりしてたもの――ガキに刃物渡しちゃ駄目だって。わはは。
でも本当に、BUCK-TICKが音楽的に正当に評価される場がなかったと思う。

藤谷 そんなワンマンかのようなステージをみせたBUCK-TICKと対照的だったのが、「通常営業」だったXですよね。「Rusty Nail」「紅」「Endless Rain」「X」といった代表曲を中心にしたセットリストで、さらには「(ずっと出ないことがネタになっている)ニューアルバムに収録するから」と観客を巻き込んだレコーディングまでやる、という。


 

▼対談者プロフィール
市川哲史(いちかわ・てつし)

1961年岡山生まれ。大学在学中より現在まで「ロッキング・オン」「ロッキング・オンJAPAN」「音楽と人」「オリコンスタイル」「日経エンタテインメント!」などで歯に衣着せぬ個性的な文筆活動を展開。最新刊は『誰も教えてくれなかった本当のポップ・ミュージック論』(シンコーミュージック刊)。
 

藤谷千明(ふじたに・ちあき)
1981年山口生まれ。思春期にヴィジュアル系の洗礼を浴びて現在は若手ヴィジュアル系バンドを中心にインタビューを手がけるフリーライター。執筆媒体は「サイゾー」「Real sound」「ウレぴあ総研」ほか。

◎構成:藤谷千明

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