宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2016.06.02
  • 橘宏樹

Brexit(英国EU離脱)国民投票2016――読めない行方の読み解き方(橘宏樹『現役官僚の滞英日記 オクスフォード編』第8回)【毎月第1木曜配信】

今朝のメルマガは橘宏樹さんの連載『現役官僚の滞英日記』をお届けします。6/23にイギリスのEU離脱の是非を問う国民投票が行われますが、与党保守党内部ですら意見の一致が見られず、大変錯綜した状況になっています。イギリス国内を揺るがす最大の政治的論点を読み解くためのポイントを、橘さんが解説します。


 
▼プロフィール
橘宏樹(たちばな・ひろき)
官庁勤務。2014年夏より2年間、政府派遣により英国留学中。官庁勤務のかたわら、NPO法人ZESDA(http://zesda.jp/)等の活動にも参加。趣味はアニメ鑑賞、ピアノ、サッカー等。
 
本メルマガで連載中の橘宏樹『現役官僚の滞英日記』これまでの配信記事一覧はこちらのリンクから。

前回:テレビから読み解くイギリスのマスカルチャー(橘宏樹『現役官僚の滞英日記 オクスフォード編』第7回)

 
※本稿の内容(過去記事も含む)に関して、皆様からのご質問や、今後取材して欲しいことを受け付けたいと思います。こちらのフォームまたはTwitter(@ZESDA_NPO)にお寄せいただければ、できるかぎりお応えしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 
こんにちは。オクスフォードの橘です。東京はもう暑い日が続いていると聞いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。熊本はじめ被災地の皆様はご苦労が続いておられるかと存じます。心よりお見舞いを申し上げます。オクスフォードもようやく春……を飛び越してもはや初夏という感じです。半袖でも汗ばむ陽射しの日も多くなり、BBQやパンティング(ボート遊び)をする人々も増えてきました。夜も9時くらいまで太陽が沈みません。と同時に、学校は徐々に試験期間に突入してきています。ほとんどの学部学科の学生は、その名も”examination school”という建物で試験を受けます。そして、試験の際には白い蝶ネクタイをして、アカデミックガウンを羽織るという正装で望まないといけません。おまけに胸にはカーネーションを刺します。僕の登録科目の試験は6月中旬くらいにあります。そして、7月末には帰国するので、それまでには修士論文(提出締切は本来9月1日なのですが)もあらかた目処をつけておかなくてはなりません。修士論文では、こちらでも何度か言及しているイノベーションにおける「カタリスト」を中心にした「プロデュース理論」のことを書くことにしました。骨子は指導教官からも、存外気に入って貰えているようなので、頑張ってみたいと思います。
 
視野は「何のために」広げるのか? ――日本に求められる 「E字型」人材とその育成について (橘宏樹『現役官僚の滞英日記』第12回) 
 
「英国型プラットフォーム」と2つのキャピタリズム――「プロデュース理論」で比較する日英のイノベーション環境(橘宏樹『現役官僚の滞英日記 オクスフォード編』第6回)
 
長く鬱々とした冬、例年より肌寒い春をようやく抜けて、これからようやくイギリスは最高に美しい季節に入るというところで、試験……なんとも憂鬱この上ないです。
 
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▲以下、春の到来を祝う伝統的な祭「メイ・デー」の様子です。少年聖歌隊の歌を皮切りに、早朝から丸一日中、民族舞踊を街中で踊り続けます。写真は朝6〜7時頃。
 
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▲喜びが弾けています。
 
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▲早朝にもかかわらず、通りが大勢の人で溢れていました。この日のために海外から来る人も多いそうです。
 
■「英国EU離脱問題」を読み解く難しさ
 
さて、この2年間のイギリス留学の間に、僕は非常に貴重な大政治イベントに立ち会う幸運に恵まれてきました。一昨年9月にはスコットランド独立の是非を問う住民投票が行われましたし、昨年5月には下院総選挙、そして来る6月23日には英国のEU離脱・残留を問う国民投票が行われます。
 
基本的にヨーロッパでは国民投票がよく行われます。スイスで今月、ベーシックインカム導入の是非を問う国民投票を行われることも、日本のみなさまのお耳に入っているのではないかと思います。
 
(参考)スイス、6月に国民投票 「最低生活保障(ベーシックインカム)」導入巡り (日本経済新聞2016年4月27日)
 
先日、オクスフォードの同級生たち(アメリカ人、イタリア人、南アフリカ人、イギリス人)と今度の英国EU離脱国民投票について議論していた際に、「日本では国民投票やったことないよ。今後あるとしても憲法改正のための国民投票しか決められてないよ」と言うと、「ホントか?」「20世紀にはあったでしょ?」といった矢継ぎ早の質問攻めがあり、その後、しばらくポカンとされました(これは「おお……日本、信じられない……」という時のお決まりのパターンです)。
 
日本のみなさまも、イギリスがEUから離脱するか(BritishがEUからexit離脱する、から“Brexit” ブレグジットなどと略称されます)を問う国民投票があるらしい、というニュースはきっとお聞き及びと思います。まとまった解説情報も、発表された時期や論者の肩書き、視点等に留意する必要はありつつも、ネットで容易に手に入る状況です。
 
(参考)英国EU離脱は、もう止められない?みずほ総合研究所の吉田健一郎氏に聞く(2016年2月29日)
 
(参考)英国がEUを離脱して「リトル・イングランド」になる確率は35~40% 米情報会社IHSが予測 木村正人氏(在英国際ジャーナリスト、2016年4月7日)
 
(参考)イギリス離脱はEU統合にメリット:大陸の統合主義者の見方 田中素香氏(東北大学名誉教授、中央大学経済研究所客員研究員、2016年5月2日)
 
本稿を執筆している5月下旬現在の英国内では「離脱か残留か」をめぐるキャンペーン合戦がどんどん苛烈になってきていると感じています。世論調査の最新結果も連日報道されています。6月23日の投票日に向けて、今後ますます関連情報が溢れていくでしょう。その一方で、それぞれの議論には立場や狙いがあったり、紙幅に制約もあったりして、逆に中立的で俯瞰的な視座は得にくい状況に、どんどんなっていくようにも思います。英国・欧州の論考は書き手の感情移入が激しく、「立場」を主張する論考が多いため、調べれば調べるほど、客観的で中立的な分析を見つけるのは困難だと感じます。
 
昨年5月の総選挙を本連載で取り上げた際は、意外と知られていないけれども重要な「ゲームの特徴」を中心に解説させていただきました。今回は、国家の命運を左右する「ゲーム」が苛烈化するキャンペーンとともにクライマックスへとなだれ込んでいくこれからの1ヶ月、日本のみなさまの耳に入っていくであろう断片的な報道を「正しく」解釈する上で、土台を提供するような解説を目指してみたいと思います。
具体的には、残留派・離脱派それぞれの主張理由、主要な登場人物や各国の利害関係、これまでの経緯について、基礎的事項を整理したり、また、ロンドンやオクスフォードにおける(イギリス人含む)有識者や同級生らとの懇談から得た肌感覚をお届けできればと思います。

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