脚本家・井上敏樹書き下ろしエッセイ『男と×××』第12回「男と男」 | PLANETS/第二次惑星開発委員会

宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

Serial

  • 2015.12.29
  • 井上敏樹

脚本家・井上敏樹書き下ろしエッセイ『男と×××』第12回「男と男」

PLANETSチャンネルに敏樹先生が帰ってきた!
新作小説『月神』も好評の、平成仮面ライダーシリーズでおなじみ脚本家・井上敏樹先生。そのエッセイ連載「男と×××」が今月よりPLANETSチャンネルで連載を再開します。
復帰後の第1回となる今回は、敏樹先生が駆け出し時代に出会い、その後の私生活をも脅かすことになる「恐るべき男」について語ります


 

井上敏樹エッセイ連載『男と×××』これまでの連載一覧はこちらから。

男 と 男
井上敏樹

昨日、電車に乗ると向かいの席の男に見覚えがあった。さて、誰だったかとしばらく考えて思い当たった。それは本人ではなかったが、私を脚本の世界に引き込んだ男に似ていたのである。額が大きく、鼻が高く、なによりも顔全体がひどくでかい。よく「でかい顔するな」という脅し文句を聞くがそんな台詞が虚しくなるほど大きい。座っていると顎の先が膝に着きそうである。それはそのまま男の自己主張の強さを物語っているようだった。

その男は出会った当時、ある大手の映画会社のプロデューサーをしていた。仮りに名前をSとするが、Sは私の父親と一緒に仕事をしていてその関係で私と知り合ったのである。酔った父が真夜中にSを家に連れてきて、その時、私はまだニキビだらけの高校生だった。当時の父は脚本家しての終焉に差しかかっており、私が大学生になると完全に駄目になってそうして私が父の跡を継いだのである。全くの素人である私に脚本のイロハを教えてくれたSはある意味で恩人なのだがこれがテレビのキャラクターとしても無理があるほど強烈な個性の持主であった。まず、肉体的にも精神的にも体力が凄い。実際、大学生の私は四十代のSに常時圧倒されっぱなしだった。仕事の打合せが終わると飯を奢ってくれ、それは大変ありがたいのだが、まず大抵は焼肉で、ハラミだのミノだのカルビクッパなどをマッカリを飲みながら腹に詰め込み、その後で必ずクラブに行く。

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