ジョシュア・ウォン×周庭「香港返還20周年・民主のゆくえ」後編(御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記)【毎月第3水曜配信】 | PLANETS/第二次惑星開発委員会

宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2017.09.20
  • 周庭

ジョシュア・ウォン×周庭「香港返還20周年・民主のゆくえ」後編(御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記)【毎月第3水曜配信】

香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。今回は2017年6月14日に東京大学駒場キャンパスで行われた講演「香港返還20周年・民主のゆくえ」の内容をお届けします。香港で民主活動をしているジョシュア・ウォンさんと周庭さんが、雨傘運動後の活動について語りました。(構成・翻訳:伯川星矢)
※文中の役職は、講演当時のものです。
※この記事の前編はこちら
雨傘運動を終えての失望と、民主活動の危険性

ジョシュア ここからは雨傘運動が終わった後のお話をしたいと思います。雨傘が終わったあと、香港人の間には失望感がありました。民主を実現するのは非常に難しいことなのではないか、という疑問も出始めていました。
ご存知の方も多いかとは思いますが、中国政府を批判する本を販売したとして銅鑼湾書店の店主さんや関係者の方たちが、昨年相次いで中国中央政府に拉致・拘束されるという事件が起きました。そして今年の1月末頃に、親中派であるビジネスマンが中央政府の内部闘争に巻き込まれ、香港のホテルで拉致されるという事件も起きました。
かつての香港は最低限の安全が保たれていると思われていましたが、これらの一連の出来事によって、香港は安全ではないのだと思い知らされました。去年までだったら、香港にいればとりあえずは安全だと僕自身も思っていましたし、中国側に立っている人物だったらなおさら問題ないと言えたはずなのですが、親中派のビジネスマンまでもが拉致されたことにより、その考えは誤りなのだと痛感しました。移民をしたり、もしくは外国籍を持って香港に住んでいるのならば、大丈夫だと思っている香港人も多くいたことでしょう。しかし、実際に拉致されたのは、イギリスやスウェーデンなどの外国籍を持っている人たちでした。香港は安全だという考えは間違いかもしれない、そう思いながら活動をしなければならない。これは、活動を行う上で、かつてと今との大きな違いです。
皆さん、想像してみて下さい。香港の繁華街にある、とても豪華なホテル。そこで突然人がいなくなり、拉致される。そして香港政府の目から逃れて、国境線を潜り抜け、中国大陸へと連れていかれる。そういったことが今、香港で起きているのです。一連の事件では、一国二制度がありながら、中国の中央政府関係者が香港で中国の法律を執行したということになります。このような大事件がありながらも、果たして一国二制度は機能していると言えるのでしょうか? 香港ではもはや、最低限の安全すら守られていないというのが現状です。
さらに民主制度に基づく選挙で選出された議員が資格を剥奪されるという事態も起こっています。香港では、立法会(日本の国会にあたる)の議員が就任する際には「香港は中国の一部」と定めた香港の基本法(日本の憲法にあたる)を遵守するという定型の宣誓文を読むことになっています。しかし、 基本法の解釈権を持つ中国の全人代は、故意に法定通りでない宣言をしたとして、反中派の議員たちの宣誓無効を言い渡しました。
中国と香港の政治制度は異なり、香港は三権分立がある法治社会です。それにもかかわらず、中央政府が「気に入らないから」というだけで、香港の法律を「解釈」してその議員を追放してしまいました。こんなにもあっさりと議員資格が剥奪になるのかと驚くほどです。選挙で3万から5万得票を得て、民選議員になった人であっても、行政長官と中央政府に気に入られなければ議員資格剥奪となるということになります。今の行政長官が当選したときの票数はわずか689票です(編注:香港の行政長官選挙では約1200人の選挙委員のみが選挙権を持つ/参考:「香港返還20周年・民主のゆくえ」前編)。そんな行政長官が、民衆から数万票を獲得した民選議員よりもはるかに大きい権力を持っているのです。
今のところ、香港独立を主張する2人の民選議員が立法会から追放されました。そして今、民主派で公民的不服従を主張する議員4人が議員資格をめぐる裁判にかけられています。その中のひとりが、香港衆志の主席でもある、ネイサン・ローです。今はまだ議員ですが、突然来週裁判の結果が出て、議員ではなくなるということもあり得ますし、ここにいる私たちふたりも議員のアシスタントとしての職を失うことにもなります。その上、政府との裁判なので、もしここで負けたら約200万香港ドル、日本円で言うと約2500~3000万円もの裁判費用を支払いしなければならなくなります。(編注:講演後の7月14日、ネイサン・ロー氏ら4人の議員資格を剥奪するという決定が下された。その後、ネイサン・ロー氏、ジョシュア・ウォン氏ら雨傘運動のリーダーは、違法な集会への参加や扇動をしたとして実刑判決を受けた)

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