「動画の時代」がもたらしたアニメ消費の構造転換(『石岡良治の現代アニメ史講義』10年代、深夜アニメ表現の広がり(2))【毎月第3水曜配信】 | PLANETS/第二次惑星開発委員会

宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2016.06.15
  • 石岡良治

「動画の時代」がもたらしたアニメ消費の構造転換(『石岡良治の現代アニメ史講義』10年代、深夜アニメ表現の広がり(2))【毎月第3水曜配信】

今朝のメルマガは『石岡良治の現代アニメ史講義』をお届けします。今回は、アニメ制作のデジタル化や、YouTubeやニコニコ動画など動画サイトの登場によって起こったアニメ消費構造の変化について論じます。


 
▼プロフィール
石岡良治(いしおか・よしはる)
1972年東京生まれ。批評家・表象文化論(芸術理論・視覚文化)・ポピュラー文化研究。東京大学大学院総合文化研究科(表象文化論)博士後期課程単位取得満期退学。青山学院大学ほかで非常勤講師。PLANETSチャンネルにて「石岡良治の最強☆自宅警備塾」を放送中。著書に『視覚文化「超」講義』(フィルムアート社)、『「超」批評 視覚文化×マンガ』(青土社)など。
『石岡良治の現代アニメ史講義』これまでの連載はこちらのリンクから。

前回:「ノイタミナ的なもの」の発生源(『石岡良治の現代アニメ史講義』10年代、深夜アニメ表現の広がり(1))

 
■オタクのライト化と「動画の時代」の到来
 
 以上おおまかに語ってきた深夜アニメの流れは、90年代からゼロ年代前半ぐらいまでのアニメについて、現在の視点から遡って見たものになります。なので、リアルタイムの記憶を持つ人からは異論も出るでしょうし、どうしても厳密に語りにくいところが残るので、ある程度の便宜的な指標と考えてください。とりあえず80年代と90年代に大きな力を持ったOVAと、90年代以降に広まった深夜バラエティ番組という、二つの傾向について触れたわけですが、ゼロ年代後半から現在に至るまでの深夜アニメでは、両方が合流した市場を形成しています。
 もう一点、年ごとに見ていくと緩やかな変化に思えますが、今の視点から過去のアニメをざっくりと振り返ると、ゼロ年代の前半と後半ではスタイルが大きく変化していることに気付きます。これはもちろん、アニメ制作のデジタル化による色彩の多様化と、背景の精密化が表現として定着したことが大きな理由となっています。
 それと関連して、YouTubeやニコニコ動画の普及によって顕著になった、オタクのライト化を伴う消費環境の大きな変化も挙げられるでしょう。ゼロ年代前半は、まだまだポストエヴァ&攻殻機動隊を狙った、ロボットアニメやいわゆる「ジャパニメーション」風のアニメが多かったことも、その頃のスタイルの特徴と言えると思います。詳しくは次回「今世紀のロボットアニメ」として扱う予定ですが、オタクのライト化に伴い、ガジェットとしてのロボットの求心力が大きく低下していることは間違いないと思います。一例としては、ゼロ年代のオリジナルロボットアニメとしてのヒット作『コードギアス 反逆のルルーシュ』(2006-2008)が、ロボットすなわち「ナイトメアフレーム」に興味が薄くても楽しめる作りだったことが挙げられるでしょう。

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