宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2018.09.07
  • 長谷川リョー

長谷川リョー『考えるを考える』 第10回 『ティール組織』解説者・嘉村賢州が探求する新しい組織形態

編集者・ライターの僕・長谷川リョーが(ある情報を持っている)専門家ではなく深く思考をしている人々に話を伺っていくシリーズ『考えるを考える』。今回は、東京工業大学リーダーシップ教育院特任准教授、幸せな組織改革を行うファシリテーター集団「場とつながりラボ home’s vi」代表の嘉村賢州さんにお話を伺います。嘉村さんは、今年1月に発売され話題となった書籍『ティール組織』の解説者も務められました。10年間に及ぶ民間でのファシリテーター活動を経てアカデミックの世界に飛び込んだ理由、既存の統制型組織とは異なる“筋斗雲(きんとうん)型組織”構想の全貌から、現代日本において『ティール組織』が重要な理由まで、経験知を何よりも重視する嘉村さんのオリジナリティ溢れる思考に迫ります。(構成:小池真幸)
年間150回のワークショップをこなしてきた現場から、アカデミックへ軸足を移した理由
長谷川 現在は、東京工業大学リーダーシップ教育院での活動がメインだと伺っています。具体的にはどのような取り組みをされているのでしょうか?

嘉村 大学院の新設に向けて2018年4月から現職に就いたのですが、まだ授業は始まっておらず、準備をしている段階です。メインは研究ではなく、修士課程・博士課程の理系院生向けのリーダーシップ教育。彼らがもっと社会で活躍できるよう、各々の専攻分野とは別に、コミュニケーション手法などを領域横断的に学んでもらいます。「教える」というよりは、彼らが研究成果を社会に還元していくためのお手伝いをしているイメージ。まずは自分の専門分野の魅力を専門外の人に、分かりやすく伝える能力や異なる他者と理解し、協力し合えるスキル等を磨いてもらおうと思っています。

長谷川 ここでいう「リーダーシップ」とはどういった意味なのか、詳しくお伺いしたいです。

嘉村 他責思考にならずに、社会のなかで自発的に一歩踏み出していくためのマインドセットのことです。こういったリーダーシップを育てることで、社会にインパクトを与えられる人材が増えていきます。なお、カリスマ型だったり、メンバーの集合知をうまく活用するタイプだったり、リーダー像は人によってさまざまでいいと思っています。とにかく、外発的なエネルギーを起点に受け身で動くのではなく、内発的な動機に従い自分から動いていける力を身につけてほしいんです。

長谷川 授業で教えていくノウハウの源泉は、今まで嘉村さんが行ってきた活動でしょうか?

嘉村 はい。自分は学部卒でアカデミックな経歴は一切なく、ファシリーテーションや異分野コラボレーションの現場での活動実績を評価されて特任准教授に任命していただいたのだと思っています。

長谷川 この連載で以前お話を伺った東工大の伊藤亜紗さんや東京大学の安斎勇樹さんも、嘉村さんのように民間とアカデミックの両分野で活躍されていました。ただ、伊藤さんと安斎さんが研究に軸足を置きつつ民間でも活動されていたのに対し、嘉村さんはもともと民間で活動されていたなかでアカデミック領域に参入されているので、パターンが逆です。嘉村さんのなかで、アカデミック領域での活動はどのように位置付けられているのでしょうか?


嘉村 今までがむしゃらに現場で走り続けてきたなかで得た経験知を、再現性を持たせるために整理する機会だと位置付けています。現職に就くまでの10年間は、特に専門分野も決めず、来るもの拒まずで年間150回くらいのペースでワークショップに取り組んできました。デザイン思考系やNVC(共感コミュニケーション)、身体系まで、あらゆるジャンルの案件を引き受けていたんです。

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