宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

Serial

  • 2016.07.08
  • 井上敏樹,男と×××

脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第18回「男と男7」【毎月末配信】

今朝のメルマガは平成仮面ライダーシリーズの脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』第18回です。若かりし日の敏樹先生を振り回し続けた、大手映画会社のプロデューサーSのエピソードも今回で最終回。突然、大手映画会社を退職した彼は、なんと単身フィリピンに渡ります(今回の『男と×××』は6月末配信分となります。読者の皆様には配信が遅れましたこと、深くお詫び申し上げます)。


 

前回:脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第17回「男と男6」
  男 と 男 7   井上敏樹
 
さて、6回に渡って大手映画会社のSの話を続けて来たが、今回で終わりである。私が大学在学中に脚本家としてデビューして以来、Sとの付き合いは十数年に及んだ。その間、おかげ様で多くの仕事をし大いに遊び良くも悪くも多くを学んだ。当時は怒りや反発も覚えたが、今思えばSが恩人であることは間違いない。Sがいなければ私は脚本家にはなっていなかったろうし、酒の飲み方やその他、覚えなくてもいい遊びを覚える事もなかったかもしれない。男にとって覚えなくてもいい遊びを覚えるということは、実は大変重要な事なのだ。そんなSからプロデューサーを辞める、大手映画会社を辞める、と聞いた時は大変驚き、同時に私は責任を感じた。『お前のつまらない本を読むのも飽きたしな。おれは第二の人生を生きるのだ』新宿のバーでウイスキーを飲みながらSは私にそう言った。『いや、違うな。お前の本はつまらなくなくなって来た。それがつまらない。おれはお前のつまらない本が好きだった』そう言った。
『それで………辞めてどうするのですか』Sの突然の言葉に驚きながらも私としては当然の問いだ。すると、Sは、『フィリピンに渡る。日本はおれには狭過ぎる』などと言う。フィリピンと聞いて私には思い当たる節があった。その前年、私はSと脚本家仲間と三人でフィリピンに旅行していたのである。言い出しっぺは私であった。フィリピンのセブ島でダイビングをしたい。青い海と空が見たい、そうダダをこねたのだ。初めてのフィリピンにSは大喜びであった。海は美しく、酒はうまい、人は優しい。人々が優しいのは我々が旅行者である点が大きいと思うが、とにかくSはフィリピンが気に入ったのだ。

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