宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

Serial

  • 2017.04.05
  • 猪子寿之

猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第19回「アートこそが映画に代わる21世紀のグローバルコンテンツになる!」【毎月第1水曜配信】

チームラボ代表・猪子寿之さんの連載〈人類を前に進めたい〉。今回は、シンガポールの展示会場へ宇野常寛が訪問し、猪子さんと語り合いました。チームラボのアートが、シンガポールやシリコンバレーで大歓迎されている理由とは。そして、Brexitやトランプ大統領の誕生で”二重の敗北”をした21世紀で、アートに託された希望とは?(構成:稲葉ほたて)

シンガポールにとってのチームラボとは

宇野 今回は、チームラボの作品を観にシンガポールへ来ました。まずは(テレビ番組の)『アナザースカイ』で「シンガポール超大好き!」と言っていた猪子さんにとって、シンガポールとは何かについて聞くことから始めようかな。
 
猪子 そもそも、チームラボの初めての常設展(期間があるわけではなく常にある展覧会)ができたのが、このアートサイエンス・ミュージアムでの「FUTURE WORLD: WHERE ART MEETS SCIENCE」だったんだよ。ミュージアムから誘っていただいて2016年3月から展示しているんだけど、ずっと大盛況。そういえば、初めてチームラボが参加した国際的なビエンナーレも「シンガポールビエンナーレ2013」だった。今ではシンガポール国立博物館に『Story of the Forest』も恒久展示されてるし、シンガポールとは色々と縁が深いんだよね。
 
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▲チームラボは、2016年3月12日から、マリーナベイ・サンズのアートサイエンス・ミュージアム(シンガポール)にて、「FUTURE WORLD: WHERE ART MEETS SCIENCE」を常設展示している。
 
宇野 面白いね。それって、シンガポールという国が自分たちのアイデンティティを記述するアートを作ろうとしたときに、チームラボを選んだということでしょ。たとえば昔の日本は西洋のアートを自分たちの文脈に落とし込もうとして、日本の伝統芸術と西洋芸術のハイブリッドを作ろうとしたけど、シンガポールはそういう道も選んでいない。
 
猪子 シンガポールは、すでに一人当たりのGDPは日本の1.6倍で、観光客の数も東京よりも多いんだよ。つまり事実上、日本を超えちゃっている国なんだね。国としてたった50年の歴史しかないにも関わらず、観光都市として未来に賭けることで、世界中から新しい価値観で良いものを集めることを合理的に考えてきた国だと思うんだよ。
 
宇野 このマリーナベイ・サンズのあの大胆さってさ、この「人工の大地」にいかに自分たちの文化をゼロから創っていくかを考えている人たちの大胆さだと思うんだよね。歴史を一旦切断して、ゼロから自分たちの文化を創っていこうとする気概だよ。
 
そして、アートとは常にそういう場所で求められてきたものでもある。たとえば、アメリカが第二次世界大戦後にナチスから奪ってきた美術品を博物館に展示して、ニューヨークをアートの中心地にしようと振る舞ったのなんて、その典型じゃない。彼らは二度の世界大戦を通じて世界の中心になっていったわけだけどその過程で、自分たちが西欧に対して文化史がないことを、どう克服するかを考えるようになったわけ。そして、今のシンガポールも当時のアメリカと同じく、「人工の大地のアイデンティティ」を記述し得るアートを求めているんだと思う。
 
猪子 まあ、そこは単純に国際都市として、グローバル競争で勝たなきゃいけないのもあると思うよ。
 
ニューヨークやロンドンと同じことを今からやっても勝ち目はないもん。仮にジェフ・クーンズの作品を必死で集めたって、ニューヨークに勝つにはコストが高すぎる。そういう状況で、新しいアーティストにベットすることで、少しでも未来の価値を掴もうとしてるんだと思う。
 
宇野 そこはチームラボを歓迎した、シリコンバレーのIT貴族たちも同じだろうね。
 
シリコンバレーの人たちも、東海岸的なもの、ニューヨーク的なものをいかに相対化するかという問題に直面して、自らのアイデンティティを象徴するためのアートが必要になった。そのときに、美術館の額縁に飾られて、みんなでしかめ面で眺めるようなアートで自分たちを記述することを選ばなかったわけだよ。

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