宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

Serial

  • 2018.03.01
  • 成馬零一

【新連載】成馬零一 テレビドラマクロニクル(1995→2010)第1回 野島伸司とぼくたちの失敗(前編)

ドラマ評論家の成馬零一さんの新連載『テレビドラマクロニクル(1995→2010)』が始まります。第1回で取り上げるのは、90年代を代表するドラマ脚本家の野島伸司です。80年代トレンディドラマの“アンチ”ともいえる陰鬱な展開で人気を博した野島ドラマですが、その中には00年代に全面化する共同体への志向が、既に萌芽していました。

 この連載は、1995年から2010年のテレビドラマについて語るクロニクル(年代記)である。
その時期に製作されたテレビドラマや、脚本家や演出家といった作り手に言及することで、その時代のテレビドラマで何が起きていたのかを、一つ一つ紹介していこうと考えている。

なぜ、1995年から2010年という区分なのか

 1995年は、戦後日本の大きな転換期となった年だ。
 1月17日に阪神・淡路大震災が起こり、3月20日にはオウム真理教が地下鉄サリン事件を起こした。戦後、経済発展と共に治安に関しては世界一と言ってもいい平和大国だった日本に初めて不穏な影が差し込んだのだ。
そして、終身雇用と年功序列という戦後の経済成長を支えた日本型の家族経営が機能不全に陥り、新卒採用が見送られ就職氷河期が叫ばれるようになる。
後に「失われた20年」と言われる日本の低成長時代がいよいよ本格化しはじめたのだ。
 だが一方で、大衆文化だけは遅れてきたバブルを謳歌していた。週刊少年ジャンプの発行部数は600万部を超え、小室哲哉がプロデュースしたアーティストの曲が立て続けにミリオンセラーを記録し、テレビドラマも高視聴率を獲得していた。
 中でも大きな存在感を見せ始めていたのが、アニメーションである。
 95年には押井守監督の『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』と大友克洋が監修を務めた『MEMORIES』という劇場アニメが上映されたのだが、この二作の評価は世界に通用するクールなポップカルチャーという位置付けだった。
 大友克洋監督の『AKIRA』が海外でカルト的に評価されて以降「日本のアニメはクール」というジャパニメーションブームが起き、逆輸入的に国内のアニメを評価する動きが数年前から起きていたのだが、その勢いが本格化するのもこの年である。
 何より反響が大きかったのはテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の登場だろう。
 14歳の少年がエヴァと呼ばれる巨大ロボット(劇中では人造人間と呼ばれている)に乗って、使徒と呼ばれる謎の巨大生物と戦う物語は、『マジンガーZ』以降のロボットアニメや『ウルトラマン』等の特撮ドラマのテイストを盛り込んだ、戦後サブカルチャーの総決算とでも言うような内容で、謎が謎を呼ぶストーリーと登場人物のナイーブな心理描写はアニメの枠を超えて、あらゆるカルチャーに今も影響を与え続けている。
 テクノロジーとコミュニケーションの面で大きかったのはマイクロソフトのOS・Windows95が発売されたことだろう。今まで一部のマニアだけのものだったパソコンが一般層にも普及し、メール、チャット、BBSといったインターネットを介したコミュニケーションが本格的に始まったのもこの年だった。
 つまり、戦後日本が積み上げてきた経済発展が終わる一方で、文化面では漫画やアニメといったオタクカルチャーを中心とした後にクールジャパンと呼ばれるような流れが誕生し、その一方でインターネットの登場によるコミュニケーションの変容が始まったのが95年だったと言える。
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