脚本家・井上敏樹書き下ろしエッセイ『男と×××』第10回「男と酒2」
本日は平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生の連載『男と×××』をお届けします。今回のテーマは前回に続き、「男と酒」。お酒を楽しむための「ぐい呑み」との付き合いについて語っています。
男 と 酒 2
井上敏樹
ワインについて前回書くと予告したが止めた。
考えてみれば私などまだまだ初心者のレベルであり書く資格がない。知ったかぶりは恥ずかしいしスノッブ臭ぷんぷんである。今にして思えば前回ワインが好きだなどと書いた事すら恥ずかしい。まさに唾棄すべき愚行である。『けっ』である。
ちなみに私の好きなワインはコード・ド・ニュイのアルマン・ルソーのクロ・ド・ラロシュとド・ヴォキュエのミュジニーグランクリュかプルミエクリュのレザムルーズのヴィエイユ・ヴィーニュである。ワインは大地の酒、眠りの酒、と言える。人間が生まれて初めて飲むべき酒で、また、人生の最後に飲むべき酒である。事実、フランスではワインを水で薄めて子供に飲ませる。酒に毒を入れて自殺するなら断然ワインが相応しい。その場合、飽くまでコート・ド・ニュイにこだわるならボンヌ・マールがお勧めである。毒に負けない味の強さがあるからだ。