宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

Serial

  • 2020.10.30

男と食 31|井上敏樹

平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。ある日、お茶漬けのCMを見た敏樹先生。母親が子供たちに朝食としてお茶漬けを出すそのCMから、幼稚園の頃の恐ろしいお弁当事件が頭をよぎります。

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脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第60回
男 と 食 31     井上敏樹

衝撃的なCMを見た。『朝はお茶漬け』というものである。極く普通の若い母親が、朝の食卓で子供たちにお茶漬けを出す。子供たちは美味しそうにお茶漬けをかき込み、『美味しかったよ、お母さん』とばかりに笑顔でランドセルをしょって学校に行く。『朝はお茶漬け』である。あんまりではないか。別に私はお茶漬けを否定しているわけではない。私だって時々食べる。寧ろ好きだ。だが、それはちょっと小腹が空いた時とか二日酔いの朝とかであって、育ち盛りの子供に与えるようなものではない。しかも朝食である。朝食というのはその日の勢いを決定づけるとても大事な食事である。この母親には愛がないのか。炊き立てのご飯と味噌汁、焼魚に納豆等を出すのが真っ当な母親というものではないのか。お茶漬けとは関係ないが、私はこのCMを見て、幼稚園の頃のお弁当事件を思い出した。私の母親が昼食として私に菓子パンを持たせたのである。焼きそばパンだがメロンパンだか忘れたが、モソモソと菓子パンを食べる私を見て当時の先生は眉をしかめた。そして私に言ったのだ。『井上君、もっとちゃんとしたお弁当を作ってくれるようお母さんに頼みなさい』と。帰宅した私は先生の言葉を母に伝えた。サッと母親の顔色が変わった。『本当に先生がそう言ったのかい?』と、私に迫った。しまったと私は後悔した。母のプライドが傷ついている。元々母は料理好きで、いつもは立派なお弁当を作っていた。おそらくたまたま体調が悪くてその日は菓子パンを持たせたのだ。

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