宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

Serial

  • 2020.12.25

男と金|井上敏樹

平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。今回はお金にまつわるエピソードです。ある晩、神社の境内で見つけた千円札から、拾ったお金についての思い出が蘇ります。敏樹先生の考えるお金論とは……?

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脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第61回
男 と 金     井上敏樹

金を拾った。友人と酒を飲み、夜、神社の境内を歩いていると、寒風に煽られ、枯葉がさざ波のように打ち寄せて来て、その中に千円札が混じっていたのだ。まさに神様からの贈り物である。子供の頃はよく金を拾ったものだ。おそらく地面に近い位置で生きていたからだろう。私の友人に、『あ〜、金が降って来ないかな〜』と口癖のように呟き空を仰ぐ者がいるが無駄である。金は空からは降って来ない。地面を見ている方がましである。生まれて初めて金を拾ったのは今よりずっと地面に近い頃――弟とふたりで遊んでいると、道端に百円玉が落ちていた。興奮した。当時の私にとって百円と言えば大金だった。駄菓子屋に行けば麸菓子や酢イカやアンズやあんこ玉がたらふく食える。だが、私は弟の手前もあって、別の行為を選択した。つまり、交番に届けたのだ。交番への道のり、私は自分がひどく誇らしかったのを覚えている。まるで英雄にでもなったような気分だ。私はお巡りさんの前にグッと握り拳を差し出した。『お金を拾いました』そう言って指を開くと、掌に百円玉が光っている。だが、お巡りさんは言ったのだ。『君は偉い。取っておきなさい』と。幼心に私は学んだ。拾った金は自分の物になるのだ。使っていいのだ。そう言えば私の母も同じ事を学んでいた。学び、そして実践していた。

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