宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

Serial

  • 2021.11.24

生命と宇宙を貫く法則を体感させたい|猪子寿之

チームラボの代表・猪子寿之さんの連載「連続するものすべては美しい」。今回は、岡山の福岡醤油ギャラリーで開催中の展覧会「Teamlab: Tea Time in the Soy Sauce Storehouse」をめぐる対話です。「自分自身でありながら、世界の一部にもなれる」感覚を味わえる作品、近くと遠くで見え方が変わる新しい色。不思議な感覚の先に現れる、自分と世界の「ととのう」が重なり合う体験について語り合います。(構成:小池真幸)

※「連続するものすべては美しい」の第1回~第5回はPLANETSのWebマガジン「遅いインターネット」にて公開されています。今回からメールマガジンでの先行配信がスタートしました。

猪子寿之 連続するものすべては美しい
第6回 ​​生命と宇宙を貫く法則を体感させたい

「個vs全体」──近代人がとらわれていた二項対立を解体する

猪子 今日、宇野さんに体験してもらった企画展は、2021年4月15日から2022年3月31日まで岡山の福岡醤油ギャラリーでやっている「Teamlab: Tea Time in the Soy Sauce Storehouse」。ここはもともと、醤油製造に使われていた古い建物だったんだけど、実業家で、現代アートのコレクターでもある石川康晴さんが理事長を務めている公益財団法人石川文化振興財団が、その建物の耐震構造などを補強してギャラリーにリノベーションしたんだ。その地下の、当時、醤油蔵だった場所を作品空間にした。かつて醤油が貯蔵されていたことにちなんで、四方から黒い液体で包まれているような空間を作りたいなと思って、出入り口をトンネルにして、360度全方位が水に囲まれている場所にしたんだ。
福岡醤油ギャラリーは、芸術や地域文化の発信を行うための場所としてオープンした文化施設。石川文化振興財団は岡山市や岡山県と一緒に、岡山城・後楽園周辺ゾーンで開催される国際現代美術展「岡山芸術交流」を3年に1回開催している。そんななかで、この施設の地下ギャラリースペースで展示する最初のアーティストとしてチームラボに声をかけてもらって、とても光栄なことだと思っているよ。

画像1

画像2

▲福岡醤油ギャラリー(Photo:S.U.P.C uchida shinichiro)

画像3

画像4

画像5

画像6

画像7

▲福岡醤油ギャラリーおよび展覧会の様子(撮影:宇野常寛)

福岡醤油ギャラリーは、明治に建てられた主屋と昭和初期に建てられた離れからなる建物「旧福岡醤油建物」を改修してつくられた文化施設。展覧会の開催や一部施設の貸出とともに、瀬戸内の食文化を堪能できるスペースを運営予定。人々が集い、新たな交流が生まれる場を提供することを目指す。運営元は、公益財団法人石川文化振興財団。理事長の石川康晴さんは、ファッションブランド「earth music&ecology」などを手がけるアパレル企業・ストライプインターナショナルを創業した実業家だ。

この福岡醤油ギャラリーの源流は、2010年代の前半までさかのぼる。石川さんは2014年、「街が美術館となり、散歩がアートとの出会いになる。」をコンセプトに、「Imagineering OKAYAMA ART PROJECT」を開催した。工事現場の壁、県立美術館の壁、廃校の学校の中、街中の自然……既存の素晴らしいものと現代アートを融合させるアートイベントとして展開。世界各国から収集した現代アートの「石川コレクション」が、国内初公開の作品も含めて市内の至る場所に出現した。

「Imagineering OKAYAMA ART PROJECT」は、短期間で延べ11万人を超えるほどの来場客を集めたことを評価され、国際現代美術展「岡山芸術交流」へつながっていく。「既存のものを活かす」という中心的なコンセプトを引き継ぎながら、世界各地から多様なアーティストたちが参加。ニューヨーク在住の著名アーティストであるリアム・ギリックがアーティスティックディレクターを務めた第1回(2016年)には延べ 234,000人、フランスを代表するアーティストであるピエール・ユイグがアーティスティックディレクターを務めた第2回(2019年)には延べ312,000人が来場した。2022年秋には第3回の開催が決まっており、アーティスティックディレクターには、アルゼンチン生まれのアーティスト、リクリット・ティラヴァーニャを選任。

ただ、街中を会場とするがゆえに、会期終了後はすべて展示を撤去してしまうという。そこで、アート作品を展示する拠点を持とうと設立されたのが、この福岡醤油ギャラリーなのだ。

もともと醤油蔵だった建物を再利用することは、「潰れかけた場所に『生命(いのち)』を宿らせる」ことでもある──その考えにも照らし合わせ、こけら落としとなる展覧会の担い手に、石川さんはチームラボを選んだ。「チームラボがこんなに狭いスペースで展示を行うのは初めてではないか。それにもかかわらず、醤油蔵の文脈と生命という概念、さらにはお茶というコンセプトともつながっていく、期待以上のものをつくってくれた」と石川さん。

福岡醤油ギャラリーでは、欧米だけでなく、日本も含めたアジアのアーティストの展覧会を開催していく構想だ。「生きているアーティストの次のステップを応援するパトロンとなりたい」と石川さんは意気込みを語った。そうしてギャラリーを充実させていった先に、「既存の観光コンテンツと私たちの文化芸術のアプローチをミックスした魅力的な都市をつくりたい」とも展望している。

猪子 展示しているのは『旧醤油蔵の共鳴する浮遊ランプ』という作品で、一帯に水を張ってランプを浮かべている。

その水面と同じレベルにお客さん用のテーブルがあって、そこでEN TEAの茶が飲める。こっちはコップに入れたお茶が光をたたえてその色が変化していく『共鳴する茶 – 動的平衡色』という作品になっているというわけ。

▲Teamlab: Tea Time in the Soy Sauce Storehouseでの『旧醤油蔵の共鳴する浮遊ランプ』と『共鳴する茶』。

この記事の続きは、有料でこちらからお読みいただけます!
ニコニコで読む >>
noteで読む >>

関連記事・動画