宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2019.08.22
  • 池田明季哉

池田明季哉 マンガの国のアリスと二匹のウサギ――大英博物館マンガ展レポート

今朝のメルマガは、池田明季哉さんによる大英博物館マンガ展レポートをお届けします。伝統ある大英博物館で初めて開催されたマンガの大規模展覧会。賛否がある中で、日本のマンガ文化はどのように紹介されたのか。現地の展示の様子を報告しながら、そのキュレーションの意図を読み解きます。

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こんにちは。デザイナー/ライターの池田明季哉です。現在ゆえあってイギリスに在住しており、大英博物館で行われたマンガ展に足を運んだので、レポートをお届けしたいと思います。
この特別展「The Citi Exhibition Manga」[1]は、日本国外で開催されたものでは最大級のマンガ展であり、大英博物館という権威あるミュージアムで行われたことで大きな話題を集めました。とはいえ、この展覧会が賛否両論を呼んでいることも事実です。
たとえばイギリスの大手新聞「The Guardian」のウェブサイトには、この展覧会に対する痛烈な批判が掲載されています。この記事では印象派などにも大きな影響を与えた伝統的な日本美術を高く評価しつつ、以下のように述べています。

この展覧会は大英博物館のもっとも大きな展示室を使用している。これはエジプトの巨大彫像や、アッシリア宮殿の禍々しい栄華のために作られた場所だ。そんな場所を、コミックで埋めることなどできるだろうか? 結局できはしないのだ。泡が飛び散った絵が描かれたページが壁にぽつんとあって、ディスプレイボードがただただマンガを見せていて、爆発のシーンが垂れ幕みたいに下がっている。単調で、馬鹿げている。[2](引用者訳)

いっぽう、同じくThe Guardianにはこの展覧会を擁護する(より穏当なトーンの)記事も掲載されており、このように書かれています。

もし大英博物館が歴史に捧げられた公的施設だというのなら、マンガはこれから歴史となっていく過程にある、由緒あるメディアなのだろう。[3](引用者訳)

このふたつの発言は対立していますが、結局はひとつの質問への異なる回答です。それは「マンガというカルチャーは、果たして大英博物館という権威あるミュージアムにふさわしいのか?」という問いです。
実際、筆者も同じ問いを胸に展覧会に向かいました。もちろんひとりのマンガファンとしてマンガ文化を愛していますし、今回の展示を喜ばしく光栄なことだとも思っていましたが、どう考えても避けて通れない上記の問いにキュレーターはどう答えたのか、ということは、大変大きな疑問でした。
そこで本稿では、レポートとして展示の全体をまず紹介し、それから振り返って、キュレーションの意図について分析してみようと思います。

ムンクの『叫び』と並ぶアシㇼパ

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