宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2020.06.02

坂本崇博『(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革』 第7回 これが私の働き方改革道(後編:Bパート)

 新人研修時代から、さっそく苦手なコミュニケーションをなんとかするために「My WX(私の働き方改革)」を始めていた坂本崇博さん。その底にあるのは、徹底してマンガやアニメの「虚構から学ぶ」という姿勢です。
しかし研修期間を終えてネット通販ビジネスの飛び込み営業を担当することになり、帰りが遅くなることで、何よりの生産性の源であるアニメ視聴という人生の「オン」時間の危機が降りかかります。そこで坂本青年が変えたやり方とは?

坂本崇博『(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革』
第7回 これが私の働き方改革道(後編:Bパート)

コクヨにおける私の働き方改革 営業編1

長い新入研修期間を経て、私が最初に配属された部署は、当時急速に成長していた「インターネット通販ビジネス」を担うセクションでした。その部署で文具事務用品のネット通販システムの営業として、企業の購買部門に「御社の事務用品、ネットで買いませんか?」と提案して回るというお仕事です。

扱うビジネスはインターネットビジネスという当時としては最新のものながら、営業手法は伝統的な「飛び込み営業」でした。
日々、企業に訪問し、状況を日報に入力して、通販の販売実績の集計表を作って、会議で共有するの繰り返し。やっているビジネスはこれまでコクヨが経験したことのないネット通販という革新的なビジネスモデルながら、「決まった通学路を行き来している」錯覚に陥りそうな日々でした。
そして何より困ったことは「帰りが遅くなる」という点でした。基本的に日中は外回りをしていますので、日報を書いたり会議に備えて実績表を集計し確認したりするのは夕方以降になります。そうすると、どうしても定時ダッシュとはいかず、帰宅時刻が遅くなることもしばしばありました。
これは私にとって人生の危機でした。前述の通り、私の癒やしであり学びでもある大切な時間は「アニメ」です。アニメという虚構の世界には、今の仕事をうまく進めるための様々なヒントが隠されています。新人研修時代には『美味しんぼ』からコミュニケーション改革を思いついたり、歴代の「ガンダム」シリーズからは誰もが「自分の正義」にこだわりをもつことを実感したりしたものです。
この時間が損なわれるというのは、私にとって成長の鈍化、さらには人生の生産性低下を意味します。もちろん「寝る間を惜しんで観る」という選択肢もありましたが、それでは仕事に支障をきたすので本末転倒です。私にとってアニメ鑑賞は仕事の対局にある「オフ」ではなく、仕事、そして人生にプラスを与えてくれる「オン」なのですから。
しかし、世の中はまだまだ長時間労働が「日常」であると考えている人も少なくない時代でした。また、夜残って上司や先輩とコーヒーを飲みながら会話する時間というのも1つのコミュニティとしてたしかに存在しており、それはそれで心地よくて、私自身もついついオフィスに長居してしまうこともしばしばありました。
何よりも立ち上がったばかりの事業部門で、かつ新人の私としては「こうしましょうよ!」と言えるほどの解があるわけでもありませんでした。
次第に「遅くまでがんばっている」自分を受け入れ、家に帰れば流し観程度にアニメを垂れ流し、寝落ちして朝を迎えることに「美学」のようなものを感じるようになっていったのです。

しかし、『最終兵器彼女』のアニメ版の放送が始まった2002年の後半、私の早く帰りたいという想いは最高潮に達します。ちょうどその年にふと書店で目にとまった原作コミックにハマってしまい、通勤中に読みふけりながらワイシャツを涙でビショビショに濡らして心配されるほどにテンションが落ちた状態で出社していた私としては、このアニメを観ないわけにはいきません。もはや私が選択できる道は「早く帰るためになんとかする」しかなく、業績は落とさずかつ仕事を手っ取り早く終わらせることに、情熱を傾けることにしました。

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