宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

Serial

  • 2021.06.10

初めてできた彼女の話|高佐一慈

お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載「誰にでもできる簡単なエッセイ」。
今回は、高佐さんの初恋のお話。上京後の大学生時代、初めて恋人ができたときのエピソードを語っていただきました。

高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ
第18回 初めてできた彼女の話

18で高校を卒業し、大学で上京するまで僕は女子と付き合ったことがなかった。
だから中学や高校で甘酸っぱい恋愛経験をしたことがある人にとてつもない憧れを持っている。
「放課後、日直の仕事を終えて帰る準備をしてたら呼び出されて、校舎裏に行ったら告られたの」
おおぉう。
「中学生だからさ、付き合うっていってもただ学校終わりに一緒に帰るだけなんだけど、楽しかったなぁー。なに話したかは覚えてないけど」
ふわぁ〜。
「塾の帰り道に自転車で家まで送ってくれたんだよね。その時初めてキスしたの。家の門の前で。ドキドキしたー」
いいないいないいないいなーー。
人の話を聞きながら、その話に自分の中学時代の景色を無理やり当てはめ、追体験する。そうやって自分のモノクロの学生時代に他人の絵の具で色を塗っていくことしかできない。

小学校、中学校とずっと好きだった女の子がいたが、奥手な僕は告白することも、もちろん告白されることもなく、ただその子のことを目で追い、悶々としながら日々の学校生活を過ごすだけだった。それは男子校である高校に行っても変わることなく、ただその子のことを思い続けるばかりの毎日。
ちなみに今でもたまに思い出すが、思い出されるのは中3の時の彼女のまんまだ。中3以降会ってないんだからそりゃそうだ。
そんな奥手も奥手、奥手中の奥手、奥手専門学校を首席で卒業し、東京の大学に行くことになった僕は、その頃になると色々とこじらせ、奥手である自分を硬派な俺という存在に巧妙にすり替え、そんな自分はかっこいいと思い込んでいた。逆に女子と付き合ったりするようなナンパなやつのなんとかっこ悪いことか。
ただ勇気のない自分を正当化するための強がりだったわけだけど、色々とこじらせの症状が進んでいた僕は、一度も女子と付き合ったことがないという事実を、「俺はまだ誰のものでもないからな」と、デビュー当時の井森美幸のキャッチフレーズのようにねじ曲げて捉えていた。
そのまま症状は悪化の一途をたどり、女子にモテようと悪ぶってタバコを吸ってる同級生を見ては「俺は東京に行っても絶対にタバコを吸わない」だの、女子にモテようとその頃流行り出した携帯電話を持って学校に来てる奴を見ては「俺は東京に行っても絶対に携帯電話は持たない」だのと心に誓い、東京へと向かう日が近づいては、母や妹にそれは高らかに、何度も誓いを立てた。
そして4月。東京に着いた次の日に、学生寮(北海道出身者が住む県人寮)のみんなに勧められ携帯電話を契約し、その次の日に大学でテニスサークルに入り、その次の日にテニスサークルの一人に勧められタバコを吸い始めた。
ちなみにテニスサークルに入ったのはもちろん彼女を作るためだ。
僕のちっぽけな強がりはいとも簡単に東京に打ち砕かれた。

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