宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

Serial

  • 2021.08.02

やりたいこと(志事)探し術 ①ジマンマイニング ──(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革 第12回〈リニューアル配信〉

(ほぼ)毎週月曜日は、大手文具メーカー・コクヨに勤めながら「働き方改革アドバイザー」として活躍する坂本崇博さんの好評連載「(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革」を大幅に加筆再構成してリニューアル配信しています。
働き方改革を進めるうえで大切なのは、自分のやりたいこと(志事)を見つけること。志事を見つけるためにポジティブに自分を騙していくマインドセットを紹介します。

(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革〈リニューアル配信〉
第12回 やりたいこと(志事)探し術 ①ジマンマイニング

あらすじ

前回は、私の改革を進める第一歩として「やりたいこと(志事)」を持つことが重要と説明しましたが、そう簡単にやりたいことが見つかるわけではありません。
ではどうすれば、自分のやりたいことを見出すことができるのでしょうか?
私は、「ジマンマイニング」という習慣を持つことで、あえて自分を客観視しながら自分というキャラクターの設定やそのやりたいことを意識し、見出すことにつながると考えています。
今回は、その具体的なやり方についてご紹介します。

やりたいことを持てと言われて持てるなら苦労しない

先ほど、やりたいこと(志事)を持つことが私の改革の第一歩だと書きました。しかしながら、「今している仕事にも仕事以外にもやりたいことなんてはっきりとは思いつかない」という人も少なくないと思います。
たとえば私のやりたいことの一つは、「オタクでもここまでがんばれる」というロールモデルとなり、オタクの社会的プレゼンスを高めることです。
もう一つのやりたいことは「助言家」です。どのような分野であっても、自分なりの視点やその分野とは異なる分野で得られた情報や経験をもとに、何か新しい道を助言することができればと考えています。
あともう一つはやはり、「アニメを観たい」です。せっかくこの時代の日本に生まれたからには、あらゆるアニメを鑑賞し、楽しみ、仕事にも私事にも活かしたいと思うのです。
しかし、以前はこんなに明確にやりたいことを言語化することはできませんでした。過去の私は、同じように問われると「なんとなく楽しいことしたいな」とかそんな感じでした。そして「それって具体的には何か?」と聞かれると、「う~ん」となって、その場その場で浮かぶこと(寝たい、とか、遊びたい、とか)がやりたいこととなっては、すぐにまた変わっていくので、わざわざ自分の働き方を変えてでもそれをやりたいというほどには動機づけられることはありませんでした。

やりたいことを持てないのは「脳」が変に気を遣っているから?

自分のやりたいことが明確に持てない原因について、当時の自分のことを振り返りながら考えると「自分への自信が弱かった」という事実が浮かびます。
自信が弱いというのは、すなわち、自分がこれからできることについての信用(自分に対する信用=自信)が低いという状態です。
そうした状態で、何かやりたいことを定義しようとしても「それはきっと自分にはできない」と無意識的に(脳が勝手に)判断してしまい、結果としてやりたいことが思い浮かばないのではないかと考えられます。
なぜなら、もしやりたいことを浮かべてしまって、それができない(自信がない)となると、脳がストレスを感じるからです。それならストレスの元である「やりたいことが思い浮かぶ」ことを避けてしまおうというわけです。
脳に本当にそうした作用があるかどうかはわかりませんが、私はそう考えています。つまり、脳という「私でありながらも私ではない存在」が、強制的にやりたいことの思い浮かばない状態を作っているという考え方です。
こうした「脳(無意識)」と「自分(意識)」を切り離して考える視点は、数年前に働き方改革コンサルタントとして「従業員の意識行動変容を促すには?」という問いについて考える中で、脳科学や心理学をかじったことがあって、芽生えるようになりました。
たとえば私が影響を受けた本『心脳マーケティング 顧客の無意識を解き明かす』(ジェラルド・ザルトマン、ダイヤモンド社)では、「人の行動の95%は、無意識(潜在意識)によって動かされている」という脳科学分野の研究が紹介されています。空腹を感じたり、反射的に熱いコップから手を離したりといった行動だけでなく、商品(価値)を選ぶという行為も、多くは意識的に行っているわけではなく無意識の領域で判断し「習慣」として行われているらしいです。
その延長で「何かを好む」「誰かを嫌う」といった感情的な判断と言われる反応や、ある情報を頭に残す(後で思い出す)かどうか決めるといったことも、脳がそれまでの経験・習慣や本能的な思考回路によって情報を取捨選択・判断していると考えられるわけです。
よって、自分に自信がない、もしくはそう自分で思い込んでいる場合は、脳が気を利かせて(もしくは脳自身がストレスを感じたくないため)、わざわざストレスの元になるような「やりたいことを見出す」という行為を無意識に避けているのではないかと仮説を立ててみたのです。
この仮説に従うと、たとえ意識的にはやりたいことを浮かべようとしても、無意識の領域で抵抗にあってやりたいことが浮かべられないということになります。これでは、やりたいことを持てと言われても、どうしようもありません。無意識(習慣)への働きかけが不可欠です。

自信を高めるには自慢が大事

この状況を打破し、自分でやりたいことを見出す上では、「自信を持つこと」が必要です。
しかし、私も含めて大半の人は、やりたいこと以上に「自分に自信を持つ」ことは困難です。自分に自信を持てている意識高い人なら、やりたいことが浮かばないなんて悩みも持ちません。
そこで、私が考えたテクニックは「脳をだます」ことです。
つまり、やりたいことを考えようとするときに、脳が「コイツならやりたいことを思い浮かべさせてもストレスにはならない」と判断するように仕向けるわけです。
では、どうすれば、脳は「コイツならやれる」と勘違いしてくれるのでしょう。
私の答えは「自慢すること」です。過去、自分でやろうとしたことがやれた実績(自慢)を振り返ることで、脳に「ほら、できるでしょう」と認識させることが重要であると考えます。
他人に信用してもらうときにも過去の実績を示すことが重要であるように、脳、さらには自分自身にネガティブなイメージを抱く自分に対して、これからの自分への信用(自信)を高めるには、過去の実績を提示することが有効だと思うのです。
ちょっとしたことでもよいので過去に何かを思い立ちそれを実行できた自慢を並べていくことで、帰納法的に「自分はやりたいことを思い浮かべればできる人間である」と自分(の脳)に認識させることができる(自信につながる)というロジックです。

ジマンマイニングのススメ

しかしながら、人は、自分の過去については、反省とか後悔とか「ネガティブなこと」はよく覚えているわりに、成果とか成長とか「ポジティブなこと」についてはぱっと思い出せないものです。
これはおそらく、脳の記憶領域(ハードディスク)が、良いことより悪いことを重視して記憶させる作用があるのかもしれません。なぜなら人が生きていく上では、「あれをすると危ない」とか「これはやってはダメだ」といったネガティブ経験をはっきり覚えておいた方が、同じ轍を踏まなくなり、結果として生存確率が高まるからではないかと考えています。
私も基本的には、過去の経験を思い出すときはネガティブなことばかりです。「あのとき、調子に乗ってしゃべりすぎた」とか「なんであそこであんなことを言ってしまったんだろう」とか「もっとうまくやればよかった」とか、就寝前に「自分反省会」がはじまると、頭の中がネガティブな記憶でグルグルし続け、眠れなくなることも多いです。
とはいえ、過去の自分に一つも評価できる実績がなかったとは思えません。きっと何かあるはずです。
たとえば学生時代には、しっかりテスト勉強をしようとして良い点数がとれたこともあるでしょう。旅に出て楽しい体験ができたこともあるでしょう。計画通りに1日が過ごせてほっとした日もあるはずです。
これら「やりたいことができた」という事実は過去に大小かならずあるはずです。しかし前述の脳の性質のせいかもしれませんが、それらはぱっと「思い出せない」のです。まるで記憶という地層の奥深くに埋没してしまっているように、そうそう簡単に地表に出てきてくれないだけなのです。

この地中深く埋没した自慢たちをうまく掘り起こして思い出してやることができれば、そこから「これからの自分」に自信を抱けるように、自分(脳)を説得することも容易になります。
しかし前述の通り、こうした自慢を思い出す作業は、通常の思考回路からすると「不自然な行為」です。自然にして考えているとついついネガティブな過去ばかり思い出してしまうものです。
そこで、意識的に自分の思考の方向性を「自慢を探す」というベクトルに向けなければなりません。そうして地中深く埋まった自慢たちを掘り起こすというある意味不自然な作業に時間をかけるわけです。私はそれを「ジマンマイニング(掘り起こし)」と名付けています。

この記事の続きは、有料でこちらからお読みいただけます!
ニコニコで読む >>
noteで読む >>

関連記事・動画