【新連載】橘宏樹『GQーーGovernment Curation』第1回「官報」から世の中を考えてみよう/EBPMについて | PLANETS/第二次惑星開発委員会

宇野常寛責任編集 PLANETS 政治からサブカルチャーまで。未来へのブループリント

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  • 2017.12.28
  • 橘宏樹

【新連載】橘宏樹『GQーーGovernment Curation』第1回「官報」から世の中を考えてみよう/EBPMについて

今回から橘宏樹さんの新連載『GQーーGovernment Curation』が始まります。知識がないとなかなか追うことができない日々の政治の動き。現役官僚の橘さんに、大事だけれど報道されない政府の活動を「官報」から読み解き解説していただきます。第1回では、統計をとって政治に生かそうとする取り組み、EBPMを扱います。

あの『滞英日記』が待望の書籍化決定!

PLANETSのメールマガジンで連載していた、橘宏樹さんの『現役官僚の滞英日記』が書籍になることになりました。

2018年2月1日(木)発売です。

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欧州最古の名門総合大学「オックスフォード」、英語圏最高峰の社 会科学研究機関「LSE」の両校に留学した若手官僚が英国社会 のエートスをリアルタイムに分析。大英帝国が没落してなお、国際的地位と持続的成長を保ち続けるイギリスに “課題先進国” 日 本再生のヒントをさぐる、刺激的な留学ドキュメンタリー。

定価3,024円のところ、BASEのPLANETS公式オンラインショップでは2,800円で予約受付中!ご予約はぜひお得なBASEから。

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現役官僚からPLANETS読者のみなさんへ

ご無沙汰しております。橘宏樹です。霞が関で公務員をしている30代男性です。以前、PLANETSで『現役官僚の滞英日記』を2年間(2014年10月~2016年9月)連載しておりました。連載終了後も、宇野編集長や編集部の皆様と、また一緒に企画をやりたいね、とお話しすることがあり、僕にお役に立てることは何かないだろうか、と考えておりました。つらつら考えていた折に、ふとあるアイディアが浮かびました。

みなさん、「官報」を読んでみませんか?

みなさんは、「官報」というものをご存知でしょうか。文字通り、政府から国民への公式な報告です。法律が改正されたとか、各省が法の運用解釈の基準を変えたとか、新しい条約が締結されたとか、様々な国家行政関係のニュースをほぼ毎日伝えています。公的なメディアの名前であり、ネットでも見ることができます。(直近30日分は無料で見れます。)

もちろん、官報のうちとても重要なニュースなどはテレビや新聞でも扱われます。しかし、あの法改正やあの動きなどは、我々や社会にとって本来かなり重要なことのはずなのに、なんだかこう、メディアでしっかり取り扱えてもらえてないなあ、と感じることが間々あります。

世の中では、日々色々なことが起きているので、インパクトのあるニュースに埋もれてしまうのは仕方がないことかもしれませんが。ただ、多くのメディアが同じことばかり報道していたり、正直言って、あまり価値があると僕には思えないトピックに長い時間を割いているような気がすることもまた、少なくありません。霞が関の中で働いている国民として、何かできることはないだろうか、と考えました。

「ほんとうに大事な(でも報道されない)こと」を「官報」から読み解く

そこで、メディアにあまり取り上げられていないようだけど、社会と国民にとって大事だと思える政府の動きに、もっと注目が集まるようにしたいなと考え、この度の連載企画を始めることになりました。ある官報の内容や意味について、中央政府の活動を詳しい人が目利きして共有するという意味を込めて、“Government Curation” (ガバメント・キュレーション)と名付けました。編集部では”GQ”(ジーキュー)と呼んでいます。

連載のポリシー

官報には多くの行政行動が書かれています。「官報を読めば行政がわかる!」と言っても、過言ではありません。しかし、正直、専門的でこむずかしいです。背景知識がないとわからないことも多いですし、読んでもおもしろいニュースばかり書いてあるわけではありません。多くの人が内容の意味と価値を理解するには、誰かの「編集」が必要です。なので、それを僕がやってみよう、と思い立ちました。

取り上げる官報の判断基準は、僕の独断に基づくことにしようと思います。PLANETS編集部も、それが良いと言ってくれました。本当は、「メディアにあまり取り上げられていない」と判断する基準については、何かしら客観的(例えば主要数紙で延べ何字以上、主要ニュースで延べ何秒以上報道とか。)な尺度を用いたいなと思ったのですが、手間のかからない良い方法が浮かびませんでした。(ありましたら教えて欲しいです。)なので、「メディアが十分に取り上げられていない」と、『僕が感じている』に過ぎない、という主観の限界にかかることは、あらかじめお断りせざるを得ないと思います。

時事ニュースに引きずられないようにしようとは思うのですが、ニーズを完全に外してしまうのも本末転倒と思いますから、たとえば某国大統領が訪日の折には、外交のトピックを扱うなど、時事的な要素も考慮したいと思っております。

また、なるべく、各省庁の各政策分野を、偏りなく取り扱っていきたいと思いますが、予算規模やシリアスさは均等ではないので、結果的には、取り上げた分野に多少偏りが出てしまうかもしれません。こうしたことをひっくるめて、僕による「キュレーション」としてどうかご理解ください。

いずれにせよ、僕は自分の所属官庁を含めて、どの省の省益もどの党派や利益団体等の意向も一切考慮せずにトピックを選定していきます。僕が誰の手先でもないことを証明することは難しいので、ここは読者のみなさんに僕の志を信じていただくしかありません。どうかよろしくお願いいたします。

一方で、この連載では、しないこと、できないこともあります。たとえば、政権や政策の批判や評価は述べません。公僕の筋(せつ)として行ってはならないと思うからです。

逆に、「メディアは取り上げてくれないけれど政府はこんなに良い取り組みをしているんだよ、もっと知ってね」というステルスな政府広報は決してしません。僕は霞が関内外の知人から情報収集をすることはしますが、連載に政府や各省庁の広報の意図を反映することはありません。「忖度」もしません。この企画はあくまで、独立メディアPLANETSに参加する公務員の人間が、個人のボランティア活動として、行政のリテラシーを社会に提供する企画です。

他方で、内輪の暴露話もしません。基本的に公開情報で原稿を組み立てたいと思います。

それから、政策の目的や経緯、メリット・デメリットの詳細な解説やより本格的な是々非々論については、専門家の方々にお委ねしていきたいと思います。

僕の能力や時間には限界がありますので、この連載では、もっぱら、公開情報を簡潔に編集しながら、独立中立の立場から「この官報は、現状よりもっと注目されるべきであろう」と言及することに集中していきたいと考えています。

僕はこれからきっと、本稿のバランスをとることにとても苦慮することになると思います。しかし、メディアや政府広報の限界を補完し、国民がより正しく政府の行動を理解できるよう、社会的な挑戦をしていきたいと思います。

EBPM(Evidence Based Policy Making)について

さて第一回では、昨今政府内で推進されようとしている、EBPM(Evidence Based Policy Making)について取り上げたいと思います。この単語をお聞きになったことがある方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。直訳すると「証拠に基づく政策立案」です。ざっくり言うと、政策をつくるときに、どの数値をいつまでにいくらにすると、いった数値目標を入れよう。そのためには、まず現状がどうなっているのか、きちんと統計を整理しよう、現状の数値がないならばきちんと把握しよう、という運動です。「統計をきちんととろう」と「統計をきちんと政策に活かそう」という2種類の話が含まれています。

 

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