『リコリス・ピザ』──ありふれたボーイミーツガールを一変させるラストシーン|加藤るみ
今朝のメルマガは、加藤るみさんの「映画館(シアター)の女神 3rd Stage」、第31回をお届けします。
巨匠、ポール・トーマス・アンダーソンの5年ぶりの新作長編『リコリス・ピザ』。鑑賞後、思わず叫びたくなったというるみさんが、同作の「焦れったいボーイミーツガール」を解説します。
加藤るみの映画館(シアター)の女神 3rd Stage
第31回 『リコリス・ピザ』──ありふれたボーイミーツガールを一変させるラストシーン|加藤るみ
おはようございます、加藤るみです。
最近映画館に行くと、冷房が効きすぎていて腕がもげそうになります。
いつもいつも羽織を持っていかなければと思いつつも、ゴリゴリの半袖で行ってしまい、真夏の極寒に震えるわたしです。
あれ、どうにかなりませんかね。(羽織を持ってきゃどうにかなる)
さて、今回は待ちに待ったポール・トーマス・アンダーソン(PTA)の新作『リコリス・ピザ』を紹介します。
ですが、今回は先に謝らせてください。
すいません。
何故なら、すでに映画の上映自体が終了しているかもしれないのです。
7月1日から公開なので、もしかしたらまだギリ上映しているところあるかな……? という感じ。
だけど、どうしてもどうしても……、この作品について書きたくて。
このタイミングになったことをお許しください……。
PTAといえば、世界三大映画祭(カンヌ、ベネチア、ベルリン)のすべてで監督賞を獲得し、"映画を愛し、映画に愛された男"と名付けたいほど、世界中の映画ファンが熱狂する監督の一人です。
長編の新作としては約5年ぶりということで、わたしも本作を心待ちにしていました。
あー!! もう! 大好きでした!!
観終わった後すぐ、誰かとこの気持ちを分かち合いたいって思った。
エンドロールの時、立ち上がって「フゥーッ!!!」って叫びたかった。
あまりにも幸せな映画体験をさせてもらいました。
けれど、「観ている間はそうでもなかった」のがこの映画を観た者なら共感してもらえるポイントではないかと思います。
いや、むしろせっかちなわたしは頭をポリポリ掻きながら少々貧乏ゆすりをしていたかもしれない(笑)。
そのくらい焦れったくて焦れったくて、134分がものすごーく長く感じる瞬間さえあったわけです。
な・の・に、終わった後「最高!!!」と、走り出したくなるなんて……。
最終的に「これが映画の面白さだよなぁ」と、改めて映画の素晴らしさを痛感し、とってもハピネスな気持ちにさせてくれました。
舞台は1970年代のロサンゼルス。
高校生のゲイリー・ヴァレンタイン(クーパー・ホフマン)は子役として活躍していた。一方、アラナ・ケイン(アラナ・ハイム)は、カメラマンアシスタントとして社会に出て働くも、将来が見えぬまま過ごしていた。
ゲイリーは高校の写真撮影のためにやってきたアラナに一目惚れするも、アラナは自分が10歳も歳上であることに気後れし、なかなか本気になれない。
15歳の少年と25歳の女性の付かず離れずで、不安定な恋愛模様を描く……。
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